文芸批評家としての蓮実重彦
映画評論家としてやプロ野球に物申す人として知られる
蓮実重彦であるが、世間で一番通りがいいのはやはり
東大学長の経歴かもしれない。
しかし、以前はフランス文学者として文学や思想の翻訳を行い、
自らも文芸批評を展開していたのである。
本人に言わせれば今でもやっていると言うのであろうが、
最近の蓮実重彦の活動はどう考えても文芸批評家のそれではない。
東大学長にもなり、文化人として興味のあることに対して発言をしていれば
それで済むといったような、安易さに満ち溢れている。
けれども昔の作品の中には文芸批評の新しいアプローチの仕方を
模索する意欲的な作品があったことも事実であり、
それらの作品を今現在読んでみるのも決して無駄ではないと思う。
ただ、その独特な文体に感染するとなかなか抜け出せず、
普通に言えばなんでもないことまで文学的に感じられるので、
それを才能ととるか、単なるレトリックととるかは、
読む人の判断にゆだねたいと思う。
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