分かりやすい解説者・竹田青嗣
文学の世界に足を踏み入れると、どうしても文芸批評や
作家論・作品論に目がいくようになるものである。
そうすると必ず誰かしら信頼できる批評家に出会えるはずであるが、
そのような人は多くが哲学的な著作も出しているというのが
日本の文芸批評の現状ではないだろうか。
また、哲学的な思索の裏づけがある人の言うことだからこそ
その作品解説に納得がいくという事情もあるかもしれない。
それは小林秀雄に遡るまでもなく、このブログで取り上げている
批評家の多くに当てはまるのではないだろうか。
そんな中でもひときわ分かりやすい哲学の解説者が、
文芸批評家でもある竹田青嗣ではないだろうか。
竹田青嗣の哲学解説を読んでからなら、
原典の翻訳をしている日本の哲学者の言うことも
ある程度は理解できるようになると思う。
(日本で独自の哲学を打ちたてようという哲学者は
ほとんどその作品の出版の機会を与えられないようで、
本当はそのような人がいないだけなのかもしれないが、
大体が西洋の哲学者の翻訳者として解説も行い、
そこに自分の哲学も織り込むという哲学者が
一般的なのも非常に嘆かわしい現状ではある)
そしてある程度理解できたなら、西洋の哲学者の作品自体を
次々に読んでいけば、どこかで自分なりの理解とともに
世界が開ける感覚を手にするはずである。
ただ、竹田青嗣の作品の中で多くの部分は解説として
とても理解しやすいのだが、竹田自身が最も力を入れている
のであろうエロス論については、理解はするが
全てについては納得できないところに、この作家が
もう一段上の世界へ行けない弱さがあるようで
そのことだけが残念でならないといったところだろうか。
ここでは入門書も含めて、竹田青嗣の代表的解説書を
少し紹介させてもらいたい。
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