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2007年6月 5日 (火)

伝統的な日本美を備えた耽美的作家・谷崎潤一郎

谷崎潤一郎は早い時期から永井荷風によって賞賛され、

その地位を確立するとともに、自然主義文学全盛時代にあって

物語の筋を重視した反自然主義的な作品を数多く残した。

その作品は耽美的と称され、映画化もされた『痴人の愛』では、

ナオミという日本的な規範には合わないが、美しい肉体を持つ

女性に翻弄されるという男の生き方を克明に描写した。

続いて『卍』、『蓼喰ふ虫』、『春琴抄』などの作品を発表し、

大正期以来のモダニズムと日本の伝統美を追求し続けた。

戦争中の谷崎潤一郎は松子夫人とその妹たちとの生活に

材を取った『細雪』に心血を注ぎ、軍部による発行差し止めを

受けつつも執筆活動を続け、戦後にその全てを発表した。

更にその後も、老いていく自分の内面と向き合いながら

『鍵』、『瘋癲老人日記』といった作品を発表したり、

『源氏物語』の現代語訳に取り組むなど、

その文学活動の幅は広がる一方であった。

また、物語性に偏っていて思想がないと言われることもある

谷崎潤一郎ではあるが、どのような思いで作品を書いたかは

『文章読本』や『陰翳禮讚』などの作品に詳しく書かれている。

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