東野圭吾『パラレルワールド・ラブストーリー』
直木賞を取って以後の東野圭吾の躍進ぶりは
目を見張るものがあると言っていいだろう。
それまでも多彩な活動をしてはいたものの
逆にその多彩さゆえに軽く見られていた感は否めない。
ジャンルも本格推理から社会派や科学物までと
幅広くこなし、なおかつエッセイや業界暴露小説も
楽しく読ませてしまうという才能は他の作家を寄せ付けない
レベルの高さだと思われる。
しかしながら、賞に恵まれなかったのは、1つ1つの
作品のレベルが低いというよりは巡り合わせが
悪かったとしか言いようがない。
特に直木賞はコンスタントに良い作品を描く
作家よりは、次は駄作しか描けないかもしれないが
この作品は素晴らしいという作品を描く作家が
割と早く取ってしまう賞であるらしい。
このことは宮部みゆきが直木賞を取るまでに
他の文学賞をほとんど取ってしまい
作家としての地位をしっかりと確立していたことからも
うかがい知ることが出来る。
そんな東野圭吾の作品の中でも特にお薦めなのは
本格推理ではないこの『パラレルワールド・
ラブストーリー』である。
東野は理系作家として科学物を得意としていることは
最近のガリレオシリーズのTVドラマ化を待つまでもないが、
そんな東野が興味を持ち続けている分野に
脳科学という分野があり、この分野ではいくつもの
傑作を生み出しているが、中でもこの作品の出来は
ラブストーリーとしても秀逸である。
出だしの作品の構図を理解するまでは
少し読みづらいかもしれないが、そこさえ越えてしまえば
後は一気に楽しめること間違いなしである。
ぜひとも夏の夜のお供に一読いただきたい作品である。
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