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2010年8月27日 (金)

吉本佳生さんの『投資リスクとのつきあい方(上)』を読んでみた

吉本さんの『投資リスクとのつきあい方(上)
サイコロで学ぶリスク計算』を読んでみた

 (5つが最高)

この本は上巻と下巻で扱っている内容が異なる。

まずこの上巻ではリスク管理について、

その手法と難しさについて詳しく述べられている。

そして、冒頭には、「株式投資は社会に貢献するギャンブル」

と明確に定義されており、株式投資=投機(博打)ともある。

だからこそリスク管理が重要であり、金融機関も使っている

というその手法の紹介が、この上巻のメインである。

しかし、残念ながらここで紹介されている手法は

個人が使うべきものではないと思う。

もっと言えば金融機関などもこんなにずさんな

管理手法で良いのかと疑問を持たずにはいられない。

『金融工学 マネーゲームの魔術』のときにも書いたことだが

「確率分布」や「標準偏差」という統計学を金融の世界に

持ち込んだことの意味は分かるが、近似値での計算は

どこまで行っても実際の株価のデータとは違うものを

便宜的に用いて計算しているだけのことだ。

そして、そこには根本的にリスク管理手法としての誤りがある。

それは認識論学者でヘッジファンド運用者としての経験も持つ

ナシーム・ニコラス・タレブさんが著書「ブラックスワン」で

述べているように、全ての白鳥が白色と信じられていても

オーストラリアで黒い白鳥が発見されてしまえば、

従来からの知見は役に立たないどころか間違いなのであり、

黒い白鳥の発見により、鳥類学者の常識は崩れてしまう。

タレブさんは、この出来事を元に、確率論や従来からの

知識・経験からでは予測できない極端な現象が発生し、

その現象が人々に多大な影響を与えることがありうるとした。

そして、株式市場などのマーケットは人間が取引を行う

のであるから、確率論では語れないとしている。

これは私の感覚とも一致しており、受け入れやすい。

アメリカのLTCMを引き合いに出すまでもなく、

計算によりリスクを回避しようとすることには限界があり、

逆に計算に頼りすぎれば1度の異常値によって

すべてが吹き飛んでしまうことはあまりにも明らかだ。

では、この本のどこに有用性があるかというと

それでも確率論を信じている人がマーケットには

たくさんいる事実を教えてくれる点だ。

金融機関が確率論によりリスク回避を図れば

その分だけ歪んだマーケットから利益を得やすくなる。

では、われわれはどのようなリスク回避策があるのか。

それもこの本では示されており、1つが「こまめな

マーケット・リスク管理」、もう一つが「損切り」である。

吉本さんは長期投資もリスクは大きいとし、

たとえ長期投資をしている個人投資家であっても

「こまめなマーケット・リスク管理」をすすめている。

また、「損切り」は心理的にとても難しいが

有力なリスク管理手法の一つであるとしている。

ちなみに私は「損切り」が出来ないので

株式投資はやめてしまったクチなので、

その重要性も難しさも嫌というほど知っている。

この本をもっと早く読んでいればと思わないでもない。

【目次】(「BOOK」データベースより)
第1章 株式投資を学んで儲ける?(ハンディキャップつきの賭け/株式投資という名のギャンブル/勉強すれば株で儲けられるか? ほか)
第2章 サイコロで実感する株価変動のリスク(日本人のリスク管理能力は貧弱/リスク管理の第一歩は?/確率を考えて予測する ほか)
第3章 いろいろなリスクに注意しよう(いくつもある株式投資のリスク/個人のリスク管理能力のポイント/こまめなマーケット・リスク管理 ほか)

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