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2010年8月29日 (日)

マルコム・グラッドウェルさんの『ケチャップの謎』を読んでみた

グラッドウェルさんの『マルコム・グラッドウェル
THE NEW YORKER傑作選(1)ケチャップの謎
』を読んでみた

 (5つが最高)

直接的に明日からの仕事に役立つというような

ノウハウが書いてあるたぐいの本ではないが、

各章の話の内容の興味深さと作者の探究心は

さすがマルコム・グラッドウェルだと感心させられる。

中でも今回は、第3章の「ブローイング・アップ(吹っ飛び)の

経済学」におけるナシーム・タレブの投資戦略について

いかに簡単ながら感想を記しておく。

ナシーム・タレブは、全米屈指のファンドマネジャーの

ニーダーホッファーや億万長者の投機家である

ジョージ・ソロスについて、株の投機の専門的な

スキルを持っているのではなく、ただ単に

まったくの幸運によるものではないのかという思いを抱く。

なぜなら、世間に1万人の投資マネジャーがいるとして

毎年その半数がまったくの偶然により成功し、

後の半数がまったくの偶然により金を失うとすると

10年後には9人が、まったくの偶然によって

勝ち続けたものとして生き残る計算になる。

そうであるなら、有名なファンドマネジャーであっても

偶然によって作り出されたものではないかというのが

ナシーム・タレブの主張するところである。

このことはニーダーホッファーが巨額の損失を出したり

ジョージ・ソロスが自身の理論を放棄したりすることにより

極めて正当な主張であり、確からしく思える。

では、ナシーム・タレブの戦略はどのようなものなのか。

それはオプションの買い専門という単純な戦略である。

しかしこの戦略を他の投資家はほとんどとらない。

なぜかといえば、この戦略はオプションの売りが

儲けが大きく利益も出しやすいことと比較し、

ほとんど毎日じりじりと損失を出し続けるためだ。

けれど、この投資戦略では市場が予期せぬ

大きな変動があった際には、それまでの損失を

取り戻して余りある利益を生み出してくれる。

そして、そのような大きな変動の際にオプションの

売り手に回っているものは破滅の危機に至る。

経済学者のユージン・ファーマが株価を研究した際

平均値から標準偏差5個分(ファイブ・シグマ)も

かけ離れたジャンプは7000年に1度のはずなのに

実際には3~4年に1度の割合で起こっていた。

理由は、投資家はいかなる種類の統計的な

秩序にも基づいて行動したりなどしないためだ。

ユージン・ファーマの結論は、株価の変動を

グラフにすると「ファット・テール(太い尾)」になる、

というものであり、統計学者が想定するより

はるかに多く正規分布の両端が実現する

可能性が高いという結論になった。

私が個人でオプションの買いを続け

日々の損失に耐え続けることは投資規模からして

まずもって不可能であるが、もしファンドなどの

ある程度の資金量を有するものが

オプションの買いを続けてくれるのであれば

そのファンドを購入することは可能である。

ナシーム・タレブの戦略がその著書とともに

もっと広まれば、そのようなファンドが

選択肢の1つに加わると思うのだが、どうだろうか。

【目次】(「BOOK」データベースより)
第1章 TVショッピングの王様─アメリカのキッチンを征服した男
第2章 ケチャップの謎─マスタードは数十種類以上、なのにケチャップは、なぜ同じ味?
第3章 ブローイング・アップ(吹っ飛び)の経済学─ナシーム・タレブが壊滅的損失の不可避性を投資戦略に転換させるまで
第4章 本当の髪の色─ヘアカラーと戦後アメリカの隠れた歴史
第5章 ジョン・ロックの誤解─避妊薬の開発者が女性の健康について知らなかったこと
第6章 犬は何を見たのか?─カリスマ調教師シーザー・ミランの“神業”

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