吉本佳生さんの『金融工学 マネーゲームの魔術』を読んでみた
吉本さんの『金融工学 マネーゲームの魔術』を読んでみた
(5つが最高)
金融工学と言えば吉本さんから学ぶのが一番と思い
この本を手にしてみたのだが、今回は少しこちらの
期待していたものとは異なっていたので
評価を下げざるを得なかった。
私は単純に金融工学のエッセンスを学び
それを自分の投資に生かせないかとの目的だったが、
この本はそのような目的に答えてくれるものではなかった。
では、何について書かれていて、何が学べるかということだが、
端的に言ってしまえば、金融工学は万能ではないということ。
肝腎なことは「確率分布」や「標準偏差」という統計学を
金融の世界に持ち込んだことの意味は分かるが、
それは良く言っても近似値でしかなく、
もっと分かりやすく言えば、まったく株価のデータとは違う
確率分布を用いて便宜的に計算しているだけだということ。
ノーベル賞を受賞したことで有名なオプション・プレミアムの
計算公式であるブラック=ショールズ式について、
吉本さんは「計算が手軽なのは、株価の予想の
一番難しいところを隠してしまっている」と解説しています。
結局、当然のことではあるが私たちが株式投資をする際に
金融工学を用いて必ず儲けるということは不可能なのです。
順番は逆になったが、金融工学とは何かについて、
この本はとても明快な定義をして見せてくれているので
それも学べることのひとつとして紹介させてもらう。
まず、資産運用の戦略には次の3つがある。
①正統派=ファンタメンタルズ分析
②実践派=チャート分析・テクニカル分析
③策略派=株価が上昇しても下落しても儲けられるよう工夫する
そのうちの③が金融工学と呼ばれるものであり、
金融派生商品(デリバティブ)を組み合わせることにより
市場のスキ(歪み)を突こうというサヤ取り戦略である。
サヤ取りということは、他の誰も気づかないうちに
その歪みを利用して儲けようということだから、
できるだけ早くポジションを取ったものが勝ちという世界である。
今であれば外資系の金融機関がコンピュータを駆使し
ものすごい速さで大量の注文を発注することでのみ
可能な世界となってしまっているようだ。
まあ、私たちはその大量発注から生じる歪みによって
儲けるチャンスを得られるのかもしれないが
実際には夢のまた夢というところであろうか。
(ニューヨークの株式の誤発注から為替が大きく動いた
と言われたときもコンピュータ売買による弊害と騒がれた)
【目次】(「BOOK」データベースより)
第1章 金融のリスクを考える
第2章 ポートフォリオ理論の本質
第3章 デリバティブとは何か?
第4章 ブラック=ショールズ式を検証する
第5章 金融工学でカネ儲けはできるのか?
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