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2010年9月 5日 (日)

森永卓郎さんの『新版 年収300万円時代を生き抜く経済学』を読んでみた

森永さんの『新版 年収300万円時代を生き抜く経済学』を読んでみた

 (5つが最高)

この本は、2003年に発行されて話題となった

『年収300万円時代を生き抜く経済学』と

その後の『続年収300万円時代を生き抜く経済学』を

再編集して文庫化したものとなっている。

私は、『年収300万円時代を生き抜く経済学』を

かなり以前に読んでいたのだが、

今回改めて、この新版を読み直してみた。

2005年発行のこの本にも書かれていることだが、

状況はその後さらに悪化しており、

年収300万円に達しない人も多くなってきていることが

各種メディアなどで取上げられるようになってきている。

私が初版で感じたことは、後半の収入アップの作戦に対し

自分には出来そうもないことばかりだという感想であった。

特にネットオークションやバナー広告など、

ネットに関することはことごとく他人事であった。

それが2007年に自分でブログをやることになり

アフィリエイトやバナー広告などでは1円の収入も

得られないことを体験してみると、この本が

とても先進的な取り組みを紹介していたように感じた。

逆に言えば、自分には年収300万円時代を

生き抜く能力が身に付いていないのだと感じた。

また、ネットの知識もなく、マニアックな趣味もない者は

300万円の年収も難しくなっていくように感じた。

けれど今回、新版を読んでみて感想はまったく変わった。

下流社会を取上げた本の多くが、このままではダメだと

勝ち組を目指すようなアドバイスをしているのに対し

森永さんは年収300万円でも良いじゃないかと

言っているように思えた以前と比べ、

今回はこの本が「森永流前向き生き方」読本であると

言葉の端々から伝わってくるような気がした。

これには私の置かれている状況の変化もあるが、

導入部の経済学的考察に対する私なりの理解が

多少なりとも深化したことによるものだと思う。

森永さんは、下流に甘んじて趣味を大切にしろとは

言っていないのだということ、悪い時代にした奴が

必ずいるはずなので、そいつらに負けずに生き抜こう

と言っているのだということに今頃気づいたのだ。

私の置かれている状況といえば、相変わらず

低賃金で貧乏暮らしだし、ネットの知識は

ご覧の有様だが、以前のようなブログの使い方

ではなく、勝間さんの言うような自分の記憶に

フックをかける道具にすることが出来ているし、

何より明らかなことは、年をとったということだ。

森永さんの提案するような対策が取れなくても

それ以外にも頑張って生き抜く方法はあるし、

それでこの本の価値が下がるというわけでもない。

特に前半部分の考察については参考になる。

例えば、実際にそのようなことが意図して

行われているかは別にして、「カネの亡者」が

日本を階級社会に作り変えるシナリオとして、

①ITバブルを引き起こして「頭金」を作る。
②金融引き締めによるデフレを仕掛けて
 資産価格を急落させ、不動産を借金で
 購入した企業を追い込む。
③不良債権処理を強行して、放出された
 不動産を二束三文で買い占める。
④デフレを終わらせて買い占めた
 不動産価格でキャピタルゲインを得る。
⑤一度たたき落とした旧来型の企業や
 労働者が、這い上がってこないように
 弱肉強食社会へと転換する。

といったものは、とても興味深い。

また、デフレの初期は多数が「勝ち組」になる。
デフレの初期段階では、雇用の守られた
サラリーマンや年金生活者はデフレの
メリットだけを受ける。

といった指摘は、最近のデフレを考える際の

最初に片付けておかなければいけない点である。

そして現在、弱肉強食社会への転換は

確実に進行しているように思えるが、

さらに格差を拡大するための不動産などの

資産価格の上昇は起きていない。

今後、私たち「カネの亡者」でない者がとり得る

生き残り策は何か、真剣に考える必要がある。

【目次】(「BOOK」データベースより)
第1章 日本に新たな階級社会が作られる(「カネの亡者」が日本を階級社会に作り変えるシナリオ/「逆バブル」で誰が儲かるのか ほか)
第2章 年収300万円時代がやってきた(所得格差が100倍の時代/賃金の低下はさらに厳しくなる ほか)
第3章 年収300万円時代の本当に「豊かな」生き方(世界に冠たる「高所得」日本人の「貧しさ」/年収300万円は貧乏か ほか)
第4章 年収300万円時代を幸福に暮らす「知恵と工夫」(限られた収入を効率的に使って、いかに幸福な生活をつかむか/交渉力次第で住宅ローンの金利は下げられる ほか)
第5章 本当の幸せとは?私自身の「年収300万円時代」(日本の政策は、金持ちのサロンで決められている/デフレ不況は、弱い人たちを、私の仲間たちを傷つけている ほか)

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