吉本佳生さんの『スタバではグランデを買え!』を読んでみた
吉本さんの『スタバではグランデを買え! 価格と生活の経済学』を読んでみた
(5つが最高)
この本は吉本さんを有名にした本であると思うが、
やっぱり内容はとても面白かった。
これまで吉本さんの本といえば金融が中心であったが
この本や続編とも言える『クルマは家電量販店で買え!』
などは商品やサービスの価格を中心にしている。
主要なテーマは「取引コスト」、生産コストの低下という
「規模の経済性」、共通のコストで節約が図れる
「範囲の経済性」、「価格差別」、「追加コスト」など。
他には、所得格差より資産格差のほうが問題で、
解決が容易ではないといった話や、「機会コスト」、
「比較優位」についての解説となっている。
ただ、私にとって印象的だったのは、
本題とはまったく異なるところだが、
容姿や資格だけを売り物にして得られる仕事では、
さほど稼げないというくだりで、例外的に稼げる
資格として弁護士、医師、公認会計士が
挙げられていたことであった。
たぶん橘さんの本にも、稼げる資格は
弁護士と医師くらいだと書いてあったが、
これはもう昔のことになってしまっている。
かつて資格取得に熱心だった者としては
自分の選択が間違っていたことを
証明されるような時代の移り変わりだが、
逆に言えば、たいした資格も取れなかったことが
企業に勤めることにつながり、給料を
手にすることが出来ているのだから
結果からすれば、これで良かったのかもしれない。
忙しいだけの個人事務所で、資格の勉強など
出来るはずもないのに、意地になっていた
若きあの時代が懐かしい。
最後に、私の認識が間違っていた点を一つ。
子供の医療費の無料化は歓迎すべき政策と
考えていたが、無料化による利用者の増加で
かえって不公平が助長されるという指摘。
言われてみれば、まさにそのとおりだが、
きちんと考えもせず目先のメリットだけで
判断してしまっていた自分が情けない。
更に追い討ちをかけるように次の記述。
「何でもかんでも政府に期待して安易に要求する
市民は、程度の差こそあれ、政治家と癒着して
不当な利益を得る企業とさほど変わらない問題を
引き起こしている、と自覚すべきでしょう」
子供手当てが欲しくて民主党に投票してしまった
多くの人に耳の痛い記述ではなかろうか。
【目次】(「BOOK」データベースより)
第1章 ペットボトルのお茶はコンビニとスーパーのどちらで買うべきか?―裁定と取引コストが価格差を縮めたり広げたりする
第2章 テレビやデジカメの価格がだんだん安くなるのはなぜか?―規模の経済性が家電製品の価格を下げる
第3章 大ヒット映画のDVD価格がどんどん下がるのはなぜか?―企業は、高くても買う消費者にはできるだけ高く売ろうとする
第4章 携帯電話の料金はなぜ、やたらに複雑なのか?―携帯電話会社はいろいろな方法で消費者を選別する
第5章 スターバックスではどのサイズのコーヒーを買うべきか?―取引コストの節約は、店と消費者の両方に利益をもたらす
第6章 100円ショップの安さの秘密は何か?―ときには、追加コストが価格を決める
第7章 経済格差が、現実にはなかなか是正できないのはなぜか?―所得よりも資産の格差のほうが大きな問題である
第8章 子供の医療費の無料化は、本当に子育て支援になるか?―安易に政府に頼る国民は、結局は大きなツケを負わされる
最終章 身近な話題のケース・スタディ―付加価値に分解して考える
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