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2010年9月12日 (日)

吉本佳生さんの『禁欲と強欲 デフレ不況の考え方』を読んでみた

吉本佳生/阪本俊生さんの『禁欲と強欲 デフレ不況の考え方』を読んでみた

 (5つが最高)

経済学者の吉本さんが社会学者の阪本さんと組んで

「消費」と「金融」について分析して見せてくれる。

今回はどちらかというと社会学系のバタイユや

ボードリヤールについての知識が私に事前にあったので

阪本さんのパートの部分の方が面白く読めた。

ただ、両者の今回の経済停滞に対する見方は

共通していて、「金融」の暴走よりも「消費」の変容が

根本原因だという話には暗い気持ちになってしまった。

なぜかといえば、「金融」の暴走が原因であるなら

対策は比較的簡単であるが、「消費」の変容が

原因であるなら対策は極めて困難だと思えるからだ。

例えば、坂本さんは今後の「消費」の傾向について

「自己への不安に駆り立てられた消費から、さまざまな組織、
あるいは個人とその家族の生命や財産、健康や生活など
へのリスク(の不安)から逃れるための消費へと向かいつつ
あるというところではないでしょうか」

と語るが、これはなんとも暗い「消費」というイメージだ。

人は「消費」について、どこか気の晴れる思いがするだろう。

それがリスク回避のために必要性に駆られて仕方なく

「消費」させられていくというのでは消耗してしまう気がする。

また、吉本さんも有益なものは低価値にとどまり

無益なものこそ高価値であるという分析をして見せた後

「無益なものをマジメに高く売れ!」と対策を提示

しているが、この対策は極めて実現が難しい。

実際にハイブリッド・カーの売り方を間違っている

のではないかと吉本さん自身が言うように

この対策は言うのは簡単だが、実際のところ

企業が行う段階になると間違ってしまうのではないか。

人は意外にリスクに平気で身をさらしてしまう動物だ。

必要だと分かっていても、お金を払わない可能性が高い。

若くして死ぬという滅多にないリスクに対して

生命保険に喜んで入る日本人ではあるが、

環境破壊のリスクに対してお金を払う人は

まだ少数であるように私には思える。

確かに理不尽ではあるが実際の現実として、

その価値が曖昧だという意味で無益なものを売る

ビジネスは消費者の満足度が高いかもしれないが、

それでも機能が明確だという意味で有益なものを売る

ビジネスをもっと売れるようにする対策はないのか。

金融機関のような無益なものを売りつける人間より

有益なものを作る工場の労働者に多くの賃金が

払われるようにする方法はないものだろうか。

この本の現状分析には納得するものの

やっぱり社会の仕組みが間違っているときには

その中でどのようにうまくやるかではなく

その社会の仕組みそのものを変える方法を

考えたいというのは、やっぱり古い考え方なのだろうか。

【参考図書】
オー・ヘンリー 『賢者の贈り物』
阪本俊生 『ポスト・プライバシー』
ミヒャエル・エンデ 『モモ』
森裕司・奥野卓司 『ペットと社会』
スチュアート&エリザベス・イーウェン 『欲望と消費』
ガルブレイス 『ゆたかな社会』
マーシャル・D・サリーンズ 『石器時代の経済学』
メアリー・ダグラス、バロン・イシャウッド 『儀礼としての消費』
ヨハン・ホイジンガ 『ホモ・ルーデンス』
見田宗介 『現代社会の理論』
ロベール・ボワイエ 『レギュラシオン理論』
イマニュエル・ウォーラーステイン 『史的システムとしての資本主義』
グラント・マクラッケン 『文化と消費とシンボルと』
ルネ・ジラール 『欲望の現象学』
マックス・ウェーバー 『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』
フィッツジェラルド 『偉大なるギャッツビー』
ダン・ガードナー 『リスクにあなたは騙される』
ウルリッヒ・ベック 『危険社会』
柳井正 『一勝九敗』、『成功は一日で捨て去れ』

【目次】(「BOOK」データベースより)
第1章 賢者の消費、愚者の金融(『賢者の贈り物』からの問題提起/『賢者の贈り物』と「消尽」/経済学の視点からの補足説明)
第2章 有益は低価値、無益だからこそ高価値(「子供と父親の会話」からの問題提起/有用物を生産する人の収入はなぜ低いのか?/経済学の視点からの補足説明)
第3章 禁欲が生み、金融が増幅させる、消費への欲望(禁欲が生み出す欲望の活用─近代社会の欲望と消費/現代の金融に求められる役割は「貯蓄から消費へ」)
第4章 消費と金融は、現代人をどこに向かわせるか?(自己不安の消費からリスク不安の消費へ/無益なものをマジメに高く売る)
あとがきに代えての対談 「社会学者・阪本俊生×経済学者・吉本佳生」

禁欲と...

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価格:1,575円(税込、送料別)

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