吉本佳生さんの『クルマは家電量販店で買え!』を読んでみた
吉本さんの『クルマは家電量販店で買え! 価格と生活の経済学』を読んでみた
(5つが最高)
『スタバではグランデを買え!』に比べて少し物足りなかった。
例えば経済学の前提とする「同じ商品なら同じ価格」という
一物一価の原則は取引コストが価格差を生むため
現実には阻まれているというような説明も、
そもそも前提が間違っているとしか思えない。
逆に言えば一物一価の原則どおりになっている
現実の商品を思い浮かべることが出来ない。
経済学は本当にこの現実を分析するに足る武器であるか
そのことに疑問を持ちつつ読み進めてみた。
今回の主要なテーマは累積の生産量が増えるにつれて
「平均コスト」が低下する「経験の経済性」、
前作に引き続き「価格差別」、「追加コスト」など。
疑問な点は、いくつかあったが代表的なものを一つ。
雨のときなど必要とされるときにタクシー料金を上げ、
閑散時には料金を下げると稼働率が上がって
タクシーの収入が増えるという話だが、
時間に余裕がある人は一般にお金にも余裕がある
人が多いのではないだろうか、そうであるなら
雨のときにも晴れるまで待つことはないし、
時間に余裕がある人の例として年金生活者を
想定しているようだが、年金生活者にも
いろいろいるはずで、どうしても必要な人は
高くても利用するし、お金に余裕がない高齢者は
我慢して他の交通手段などを選択するだろう。
結局のところ、必要性の高い需要の多いときに
値上げをするというのは、利用者に心理的な
嫌悪感を生じさせるだけで、タクシーの収入増には
つながらないような気がするのは私だけだろうか。
また、吉本さん自身も地域によっては、このような
所もあるのではないかといっているとおり、
急な雨のときに割高なタクシーを利用する地域
というのを特定することはかなり難しいだろう。
1000円札のオークションなど、本当に面白い話も
いっぱいあっただけに、もっと納得しやすい例を挙げて
説明してもらえれば満足度は更にあがったはずなのに
全体としては少し残念な感じがした。
【目次】(「BOOK」データベースより)
第1章 クルマとプリンターとPB商品、価格の決まり方はどうちがうのか?―新しい題材で『スタバではグランデを買え!』の要点をおさらい
第2章 高級レストランの格安ランチが、十分に美味しいのはなぜか?―エコノミストは追加コストと弾力性に注目する
第3章 パチンコや金取引で必ず儲ける方法は、ときに本当に存在する?―裁定が商品や人を移動させる
第4章 ライバル企業が、互いに不幸になる競争を止められないのはなぜか?―オークションや価格設定での駆け引きを読む
第5章 大学の授業料は、これからも上昇を続けるのだろうか?―難関大学を授業料値下げ競争に巻き込んで、学歴社会のムダをなくそう
第6章 地球温暖化対策に、高すぎる価格がつけられようとしている?―不要なものに価格をつけると、二兎を追う経済政策が可能になる
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