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2010年10月 5日 (火)

桂木明夫さんの『リーマン・ブラザーズと世界経済を殺したのは誰か』を読んでみた

桂木さんの『リーマン・ブラザーズと世界経済を殺したのは誰か』を読んでみた

 (5つが最高)

この本のタイトルを目にしたときから

内容を読まなくても何となくここに書くことが

予想できていたのだが、やはり予想通りであった。

それは作者である桂木さんの経歴を見たとき

予想というよりも確信であったと思う。

ただ、以前株式投資に夢中になっていたときには

外資の金融機関に関する本を何冊か読んで

面白かった記憶があるので、最近の内幕物として

あえて読んでみたのだが、やはりパッとしなかった。

作者は1977年に東京大学法学部を卒業後、

今はなき日本興業銀行に入社し、約10年間、

銀行業務に携わった後、ニューヨークの

バンカーズ・トラスト本社に入社。その後も

ゴールドマン・サックスやモルガン・スタンレーを

経て、2001年にリーマン・ブラザーズに入社し

2006年にはリーマン・ブラザーズ証券株式会社の

社長に就任して、リーマン・ショックを迎えている。

あまりにも典型的な外資の日本人社長という感じで

きっとリーマンが破綻したのは、アメリカの政府が

救済しなかったのが悪いと言い出すのではないかと

嫌な予想をして読み始めたのだが

まったく良い方に予想が裏切られることはなく、

次のようなことが簡潔に記載されている。

『低金利を長いこと維持する傍ら、証券会社の
過大なレバレッジ体質を放置し、リスクの高い
金融商品の発生を野放図に許した挙げ句、
危機が発生してもその封じ込めに果敢に
動かなかった米政府、金融当局の責任は、
重大であると思わざるを得ない』

はっきり言って、ここまで酷いと呆れてしまう。

自分たちで利益を得るためにリスクの高い

金融商品に手を出しておいて、会社が潰れたら

政府が救済してくれなかったのが悪いと

その無策ぶりを批判するなんて、

金融機関の人間にしか思いつかない発想だ。

しかも、自分たちがやっていた不動産投資の

危険性を認識していなかっただけでなく

サブプライム・ローンの証券化商品の保有割合が

あまり多くなかったことを挙げて、まるで

とばっちりをくったかのような発言もあり、

何だか笑ってしまいたくなるような内容だった。

他社がその後救済されたことに対しても

リーマンだけが救済されなかったと恨み言を

並べ立てるだけで、どうして救済されなかったのかの

反省というようなものはまったくない。

私はそもそも金融機関を税金で救済すべきでは

ないと考えているが、それでも百歩譲って

どうしても救済が必要だというなら、

それまで高給を貰っていた人たちの

責任を問うくらいのことはしてもらいたい。

会社の金で博打をして、儲けた時は何億と貰い

失敗したら公的資金の注入というのでは

博打を打たないほうが馬鹿ということになる。

モラルハザードなどということを言う人がいるが

利益第一の金融機関には元々モラルなど

ないのではないかと思わせられる。

この本の良いところといえば、内部の人間によって

当時の状況が分かりやすく書かれているところと

金融機関の人間とはどういう人なのかが

誰にでも分かるということくらいだろうか。

【目次】(「BOOK」データベースより)
第1章 破綻へのカウントダウン
第2章 身売り
第3章 カリスマvs.財務長官
第4章 リーマンを潰した真犯人
第5章 「百年に一度」の正体
第6章 強欲の連鎖
第7章 ウォール街は死んだか
第8章 二〇〇八年九月の教訓
終章 歴史は繰り返される

リーマン・ブラザーズと世界経済...

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