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2010年11月20日 (土)

鈴木亘さんの『社会保障の「不都合な真実」』を読んでみた

鈴木亘さんの『社会保障の「不都合な真実」
子育て・医療・年金を経済学で考える』を読んでみた

 (5つが最高)

この本は、深刻な問題であり続ける社会保障に対して

経済学によるアプローチの仕方を紹介している。

そして、年金、医療、介護、保育と多岐にわたる

社会保障の問題に経済学的な費用対効果を導入し

問題の本質を丁寧に解説してくれている。

このままでは日本が駄目になってしまうことを

多くの人が感じていながら政権交代してもなお

問題が一向に改善する兆しさえ見せない理由が

この本を読むと悲しいほどに明確になってくる。

鈴木さんの政策提言には実際に実行する中では

問題が起きるものも当然に含まれていると思うが

それはどのような政策においても必ず不正に

受給しようとする者は現れるので、そのつど

対処することで構わないと思う。

とにかく現状を少しでも良い方向に変えなければ

若者だけでなく全ての日本人に希望が見えない。

この本は、なんと言っても普段あまり考えずに過ごして

しまっている重要な問題が本当は山のようにあり、

その中でも社会保障について問題の所在を適確な

分析で提示してくれている点が素晴らしい。

鈴木さんは、医療、介護、保育などのすべての分野に

共通する問題として、参入規制と価格規制があることを

指摘し、行政による過度な介入があるがために、

供給不足や違法行為が発生しているとしている。

そしてこれらの問題を解決することを困難にしている

根底にはやはり政治、官僚、企業の既得権益に

国民の多くもおこぼれを貰うことによって

寄りかかってしまっている悪しき構造がある。

この既得権益を捨てられるかどうかということが、

財政破綻を免れる上での最大のハードルであるように

思われるが、かなり困難な道であるだろう。

ところでこの本も小泉構造改革を問題が多く

あったものの、よく既得権益に踏み込んで善戦を

したと評価している点が目を引く。

そして後知恵であるとして反省点が3つ上げられている。

①改革が急速すぎた
②政治の説明不足
③既得権益を持つ団体にモデルチェンジを促す
 時間的猶予や補償措置を用意すべきであった

逆に言えば、これ以外の点では正しかったことになる。

小泉構造改革は本当に世間で言われているような

格差を拡大させ貧困を生んだ犯人なのだろうか。

もう少しいろいろな本を読んでみる必要があるようだ。

【参考文献】(鈴木亘以外抜粋)
『生活保護の経済分析』 鈴木亘ほか 東京大学出版会
『「社会的入院」の研究―――高齢者医療最大の病理に
いかに対処すべきか』 印南一路 東洋経済新報社
『日本の不平等―――格差社会の幻想と未来』 大竹文雄
日本経済新聞社
『人口減少社会の社会保障制度改革の研究』
貝塚啓明ほか 中央経済社
『医療改革―――痛みを感じない制度設計を』 川渕孝一
東洋経済新報社
『社会保障と日本経済』 京極高宣

【目次】(「BOOK」データベースより)
1章 社会保障の「不都合な真実」
2章 子育て 子ども手当は子どものためか
3章 貧困 社会保障は貧困を減らせるか
4章 年金 年金は本当に大丈夫なのか
5章 介護 「介護難民」はなくせるか
6章 医療 医療を誰が支えるか
7章 社会保障財政 財政破綻は避けられるか

社会保障の「不都...

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価格:1,785円(税込、送料別)

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