山田真哉さんの『「食い逃げされてもバイトは雇うな」なんて大間違い 禁じられた数字』(下)を読んでみた
山田さんの『「食い逃げされてもバイトは雇うな」なんて大間違い
禁じられた数字』(下)を読んでみた
(5つが最高)
正直言って、この本のタイトルのつけ方は反則だ。
私も今まで上下巻でタイトルが違うものまでは
読んだことがあるが、上巻のタイトルを下巻で
否定してしまうなんて、こんな「販促」はない。
ただ、内容を読んでみると、このタイトルをつけた
意味に納得がいくのが山田さんの良いところだ。
ただ単に目立てばよいというだけではなく
中身があるところが、いつもながらさすがである。
上巻では読者に数字を意識することの重要性を
繰り返し理解させ、下巻では逆に数字や会計にも
限界があるということを理解させてくれる。
拝金主義から、行き過ぎた数字至上主義に対し、
ものごとの本質を見誤ることのないように、
数字の負の側面について語っている。
本当のお金教育から貨幣論までとにかく面白い。
しかし、会計は世界の1/2しか語れないとして
会計は科学であるが、ビジネスは非科学であるから
会計的な分析は常に必要だが経営に際しては
「妙手」を打つことを考えようというのは
一面では賛成だが、全てに納得できるものではない。
そもそも会計は科学なのか、科学でなければならないのか。
私はそうは思わない。なぜなら山田さんが言うようには
誰がやっても結果が同じにならないからだ。
それは会計基準が違えば、各国の計算方法により
企業の利益の額が異なるだけでなく、
国内に限ってみても税理士によって決算の数字は
必ず違ってくるのが実際のところだ。
税金を払いたくないから利益を減らしたり、
金融機関に借入れをお願いするので利益を出したり。
私は会計が科学的だと強弁する必要はないと思う。
その上でビジネスは非科学であり、人間の営みなの
だから、会計に縛られない妙手を経営者は
常に考えなければならないのだと言いたい。
会計上の利益欲しさにリストラをし、その後の
会社を完全に機能不全にしてしまう「会計人」の
誤った会社再建策に泣く人は少なくないはずだ。
この本の最後に「食い逃げされてもバイトは雇うな」
というのは、単一の視点であることこそが、
大間違いなのですとあるが、経営者には
よくよく複数の視点で物事を考えてもらいたい。
この本はそういった複数の視点を提供してくれる
という意味でもビジネスマンにとっての良書である。
【目次】(「BOOK」データベースより)
第1章 数字の達人は、特になにもしない―数字のウソ(「禁じられた数字」4つのパターン/禁じられた数字とはその1「作られた数字」 ほか)/第2章 天才CFOよりグラビアアイドルに学べ―計画信仰(ケーススタディ(1)1億円を1週間で使い切れ!?/私たちは計画のなかで生きている ほか)/第3章 「食い逃げされてもバイトは雇うな」なんて大間違い―効率化の失敗(ケーススタディ(2)合理的に儲けようとする大学生/ケチケチ会計士はなぜ結婚したのか? ほか)/第4章 ビジネスは二者択一ではない―妙手を打て(妙手を打て/ライバル店から客を奪う ほか)/終章 会計は世界の1/2しか語れない―会計は科学(会計は科学、ビジネスは非科学/内部統制とビジネスのソリが合わない理由 ほか)
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