東浩紀さんの『存在論的、郵便的 ジャック・デリダについて』を読んでみた
東さんの『存在論的、郵便的 ジャック・デリダについて』を読んでみた
(5つが最高)
この本は、1998年に出版された本であるが、
その輝きはいまなお衰えることなく強烈である。
作者の東浩紀さんは、1971年生まれで
私より少し若いだけだが、その登場は新鮮であった。
東さんは東京大学大学院総合研究科を修了し、
この本は、そのときの博士論文でもある。
現在では少しユニークな「現代思想好きのオタク」と
本人も自認しているようであるが、批評家や小説家
としても活躍し、早稲田大学教授も務めているようだ。
この本は、一般にポスト構造主義に属するとされる
フランスのユダヤ系哲学者であるジャック・デリダの
2種類の脱構築である、論理的-存在論的脱構築と
精神分析的-郵便的脱構築についての解説と、
なぜ前者から後者の脱構築へデリダは変遷する必要が
あったのかという謎や、その間に書かれた1970年代の
奇妙なテクスト群の読解を目的としたものである。
東は論理的-存在論的脱構築は、ゲーデルの不完全性
定理と形式的には等しいとする柄谷行人の指摘に
基づき、その数学的成果を援用し、デリダを論じている。
しかし、東はその論理的-存在論的脱構築を完全に退け、
複数的な超越論性へと至るフロイトの精神分析を援用する。
そして、東は否定神学への抵抗としての精神分析的-
郵便的脱構築を評価し、デリダの思想の可能性を探る。
この本の魅力は、作者の瑞々しい感性がフランスの
現代思想の第一人者と格闘するところにあるのであって
その詳細な分析に対し、正誤の判断をしようと思って
読むと、あまり面白いと感じられないかもしれない。
しかし、この本が出版された当時は、私も柄谷ファンであり
現代思想についていきたい気持ちがまだあった頃なので
とても楽しく読めたし、今読み返してみても一級品である。
その後の東さんの活動には、必ずしも全てに賛成しないが
最近になってまた気になる存在になりつつある。
【目次】(「BOOK」データベースより)
第1章 幽霊に憑かれた哲学/第2章 二つの手紙、二つの脱構築/第3章 郵便、リズム、亡霊化/第4章 存在論的、郵便的(論理的/存在論的/精神分析的/郵便的)
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