« 本田健さんの『スイス人銀行家の教え』を読んでみた | トップページ | 東浩紀さんの『存在論的、郵便的 ジャック・デリダについて』を読んでみた »

2010年12月25日 (土)

小宮一慶さんの『「会社を経営する」ということ』を読んでみた

小宮さんの『「会社を経営する」ということ
チョッとだけ立ち止まって考える!』を読んでみた

 (5つが最高)

この本は、古くなって使えなくなってしまった部分と、

今でも充分有用な部分が混在している本です。

私の勝手な判断では、序章の「経営について」、

第1章の「ビジョン・理念を確立する」、第2章の

「戦略を立案する」は、ぜひ読んでおくべき有用な箇所。

第3章の「財務会計を知る」と第4章の「ファイナンスを

学ぶ」については、商法時代のもので古すぎる。

第5章の「マーケティングを実践する」と第6章の

「ヒューマンリソース・マネジメントを考える」、及び

終章の「経営の本質」は、新しい考え方ではないが、

ここもぜひ読んでおくべき有用な箇所である。

「経営」という独立した仕事を理解するために必要な

ことをいつもどおり分かりやすく解説してくれている。

特に重要な点は、第2章中の「ビジネス成功のための

9つのキーワード」であると思う。

簡単に要約してみると以下のようになる。

①スピード経営
 自社が他社に対して優位に立てるプロセスの段階
 において、スピードが他社より早い。(例:インテル)
②ボーダレスマインド
 日本国内の急激な国際化に勝てるだけの世界で
 実践できる経営能力、商品、サービスを持つ。
③事業ドメイン
 得意な事業領域で勝負する。
④イノベーション
 小さなリスクは恐れずに新しいことへの挑戦(革新)
 をする一方で、大きなリスクは取らない。 
⑤ネットワーク
 人的ネットワークの確立。
 アンテナは高く、腰は低くして多くの人から情報得る。
⑥環境
 「コンプライアンス」の重要性を認識。
⑦キャッシュフロー経営
 現金をいかに「稼ぐ」か、いかに有効に「使う」か。
⑧ビジョン・理念
 理念はビジョン追求における行動規範。
⑨リレーションシップマーケティング
 コツは、「一番は偉い」と「あなたは特別」。
 お客を6段階に分け、「潜在客」・「顧客」・「得意客」
 ・「支持者」・「代弁者」・「パートナー」へと関係を
 「深化」させていくことが重要。

これらのことは、経営者だけが知っていればいい

ということでは、もちろんない。

ヒューマンリソース・マネジメントなどでも

成果主義人事制度運用で重要なのは
①各人の目標設定を能力や性格に合わせて適切
かつ具体的に行えるか、
②その成果を客観的に評価できるか、
という2点だと指摘した後で、適切に行われないと
混乱を引き起こすことになると書かれている。

また、成果主義を導入すると視点が短期的になり、
長期的な視点が忘れられがちだと指摘した後、
成果についても利益やキャッシュフローといった
数値的なものだけでなく、信頼向上、チームワーク
などの質的な成果も対象にする必要があると
私のいる会社の経営陣に聞かせてあげたいような
適切な指摘まできちんとされている。

私のいる会社の利益が、ほとんど毎期マイナスなのにも

かかわらず、事業以外で特別利益を手にする幸運に

恵まれて、短期的な視点に立った失敗を繰り返し、

信頼向上やチームワークなどの質的な成果は数値化

することができないとの理由から、全て切り捨ててきたため

チームのまとめ役をリストラし、営業成績の良い者から順に

転職する状況を見ると、本当にこの本を読んでもらいたい。

なお、経営者でなくともマネジメントに関わるビジネスマン

であれば知っておいて損はない事柄が多いので、

安く手に入れられるのであれば、今でもお奨めである。

【目次】
序章  経営について
第1章 ビジョン・理念を確立する
第2章 戦略を立案する
第3章 財務会計を知る
第4章 ファイナンスを学ぶ
第5章 マーケティングを実践する
第6章 ヒューマンリソース・マネジメントを考える
終章  経営の本質

|

« 本田健さんの『スイス人銀行家の教え』を読んでみた | トップページ | 東浩紀さんの『存在論的、郵便的 ジャック・デリダについて』を読んでみた »

小宮一慶」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 小宮一慶さんの『「会社を経営する」ということ』を読んでみた:

« 本田健さんの『スイス人銀行家の教え』を読んでみた | トップページ | 東浩紀さんの『存在論的、郵便的 ジャック・デリダについて』を読んでみた »