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2011年1月31日 (月)

勝間和代さんの『不幸になる生き方』を読んでみた

勝間さんの『不幸になる生き方』を読んでみた

 (5つが最高)

この本は、不幸になる生き方のパターンを知り、それを

徹底的に避ける技術を読者に磨いてもらうことを

1つのゴールとした幸福の技術指南書になっている。

実際に幸福を呼ぶ行動習慣を身につけて、不幸な日々

から脱出したという勝間さんが、「自分の軸」を持って

人生を生きるための技術が書かれていて参考になった。

特に個別理論編の7つの法則の解説は具体的。

①有責の法則
 人生に責任を持つこと。
 人生の幸福度はリスクを上手く管理できたかによる。
 ・リスク管理の3つのステップ
 1.リスクを洗い出す。
   しかしリスクはゼロにはできないと知る。
 2.リスクを取って得られるリターンが、十分かどうか
   考え、さらに今の自分でとれるリスクかどうかを
   質と量の両方の観点から考える。
 3.リスクの制御方法を考え、実行中は今、
   起きている状況のモニターを怠らない。
 ・「有責の法則」を味方につけるアクション・プラン
 入門編 小さな約束を徹底的に守る
 初級編 迷ったときには、リスクの高いほうを選ぶ
 中級編 日常のリスクを点検し、リターンと比較
 上級編 顧客接点のある仕事、数字で結果が出る
      仕事に積極的に参加
 おまけ 信頼に足る人間であるというシグナルを出す

②双曲の法則
 目の前の利益にとらわれないこと。
 双曲割引とは、目先の満足度に比べて、将来の
 満足度は極端に軽く見えてしまうということ。
 10分、10ヵ月、10年スパンで考える。
 ・「双曲の法則」を味方につけるアクション・プラン
  コツコツ型のスポーツを生活に取り入れる
  依存性のある行動を避ける

③分散の法則
 不確実なリスクを分散してコントロールすること。
 理想のワーク・ライフ・バランスをイメージする。
 ・「分散の法則」を味方につけるアクション・プラン
  月に5人は、仕事以外の人と食事をする
  妻に、夫に、家族に手紙を書く
  金融の分散投資を始めてみる
  手帳を活用して、多様な要素に時間配分して
  いるかチェックする
  NOT-TO-DOリストを作る
  時間節約に役立つ家電に詳しくなる

④応報の法則
 他人を非難することは、めぐりめぐって
 自分自身を孤立させてしまうということ。
 羨ましさを「学習」に転化する
 ・「応報の法則」を味方につけるアクション・プラン
  三毒追放(妬まない、怒らない、愚痴らない)
  三薬実行(褒めよう、笑おう、感謝しよう)
  不満は相手に直接話す
  非難体質の人に近寄らない

⑤稼動の法則
 まず行動すること。
 「行動」はPDCAサイクルの要
 失敗に慣れると学習や行動が加速する
 習慣化は行動コストをゼロに近づける
 「数打てば当たる」という割り切りが習慣化のヒケツ
 ・「稼動の法則」を味方につけるアクション・プラン
  自分のできないスポーツに挑戦してみる
  コミュニティ・ラーニングに取り組む

⑥内発の法則
 不得意なものに時間をかけすぎず、
 自分の強みを生かすことに集中すること。
 強みの発見が自分比の幸福へとつながる。
 ・「内発の法則」を味方につけるアクション・プラン
 ミッション・ステートメントを作る
 自分の弔辞を書いてみる

⑦利他の法則
 他者に貢献すること。
 小さな利他行動から始めてみよう。
 ・「利他の法則」を味方につけるアクション・プラン
 互いに褒め合う
 PTAや地域の活動に参加する
 寄付をする

とにかく自己責任で行動を起こせということ。

そこからしか、幸福になる生き方は始まらない。

【参考文献】
ピーター・バーンスタイン 『リスク』
ジョージ・エインズリー 『誘惑される意思』
リチャード・ワイズマン 『その科学が成功を決める』
スージー・ウェルチ 『10-10-10』
山口一男 『ワークライフバランス――実証と政策提言』
野口嘉則 『鏡の法則』
畑村洋太郎 『失敗学のすすめ』

【目次】(「BOOK」データベースより)
全体理論編(不幸のループから抜けられない「他責の人」/自責(自己責任)とはリスクの川を渡ること/他責の人はなぜ失敗を嫌うのか)/個別理論編(有責の法則/双曲の法則/分散の法則/応報の法則/稼動の法則/内発の法則/利他の法則)

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2011年1月30日 (日)

高橋尚子さんの『夢はかなう』を読んでみた

高橋さんの『夢はかなう』を読んでみた

 (5つが最高)

この本は、ビジネス系の自己啓発本にはない本当の

意味での夢のかなえ方が書かれていて参考になった。

ただ、この本は、2001年に出版された『風になった日』

を文庫化によって改題したもので、シドニーオリンピック

の女子マラソンで金メダルをとってすぐのエッセイらしい。

「明日も、風のように走り続けたい」という、高橋さんが

家族のこと、初恋、苦しいトレーニングなど、彼女自身

の感じてきたことをつづっていて興味深い。

もちろんその後のオリンピックへの再挑戦や引退など

高橋さんに語ってもらいたいことは山ほどあるが、

今回この本をあらためて手にしたのには訳がある。

それは先週の日曜日に千葉のマリンマラソンに出場し

ハーフを何とか走りきったのであるが、その際に

高橋さんに2度もハイタッチをしてもらって、とても感動

したので、とにかく高橋さんの言葉が読みたくなったのだ。

本当に超一流のアスリートというのは、周囲に与える

影響が半端ではないということが身にしみた。

マラソン参加者の多くが、高橋さんの応援が励みに

なったと感動していたし、私も何とか去年の記録を

上回ってフィニッシュできて嬉しかった。

自分が素晴らしい記録を残せるだけでなく、周囲の人を

幸せな気持ちにさせられる高橋さんはやっぱり凄い。

走ることが楽しいという高橋さんは、 マラソンの楽しさを

①四季折々の景色を見ることができ、風を感じられる。
②練習の後、芝生の上に思いきり、大の字になれる。
③試合や遠征でいろいろなところに行ける。
④自分を応援してくれる人がたくさんいる。
⑤走っているときは、自分と向き合って心と対話できる。
⑥走ることそのものがストレス解消になる。

というように語っているが、私も自分なりのマラソンの

楽しさを語れるように、早くなりたいものだと思う。

【目次】(「BOOK」データベースより)
陸上の神様/作戦会議/サングラス/シドニーの朝/背水の陣/素直な心/小出マジック/代表のキップ/標高三千五百メートル/料理の鉄人/男の子になる/初恋/見知らぬ道/おばあちゃんへの金メダル/仲間たち/プロとアマ/女性の時代

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2011年1月29日 (土)

鳥居万友美さんの『“FX”で月100万円儲ける私の方法』を読んでみた

鳥居さんの『“FX”で月100万円儲ける私の方法
普通の主婦の私でもできた!』を読んでみた

 (5つが最高)

この本は、典型的な素人でもFXで儲かっちゃいました

というタイプの本であるが、それゆえに初心者からの

支持を多く集めているようで、特に子育てママには

かなり訴えるものがあるようである。

そこで今回は鳥居さんの投資手法というよりは考え方を

単独で取上げるのではなく、プロのFXディーラーだった

松田さんの考え方と比較することで特徴を見てみよう。

まず、鳥居さんの「月に100万円稼ぐ」必勝ステップ
①取引手法に応じて口座は別々に
②主力のデイトレはテクニカルに集中
③デイトレは高レバレッジにするが、資金管理は意識する
④ロスカットの徹底が負けないコツ
⑤スワップ口座はあくまで心のお守り
⑥「投資ノート」で自分を見つめる
⑦相場が読みやすい通貨を見つけ通貨ペアを限定しない

次に、松田さんの「1勝9敗でも勝てる松田式FX」
①トレンドには素直に従う
②デイトレードは避ける
③売りと買いの両方で勝とうとしない
④ストップロスは必ず入れる
⑤FXは為替差益だけに的を絞って臨む
⑥ローソク足チャートに基づくテクニカル分析重視
⑦チャートの「だまし」が少ないドル・円を推奨

両者の違いは、とても興味深いのでまとめてみる。
①テクニカル分析により相場の先を読もうとする(鳥居)
 ファンダメンタル分析も取り入れトレンドに従う(松田)
②デイトレが主力(鳥居)
 デイトレは避ける(松田)
③売りと買いの両方で勝負している(鳥居)
 売りと買いの両方で勝とうとしない(松田)
④ストップロスは必ず入れる(両者に共通)
⑤デイトレとは別にスワップ狙いもする(鳥居)
 為替差益だけに的を絞って臨む(松田)
⑥ローソク足チャート重視(両者に共通)
⑦通貨ペアをひとつに限定しない(鳥居)
 キャリアの浅い個人投資家にドル・円を推奨(松田)

ふたりとも本当に儲けているとすると、FXのやり方は

これほどまでに違っていても儲かることがあるようだ。

けれど共通している点が最も大事なことかもしれない。

鳥居さんも次のように書いている。

『FXで勝つために最も必要なことは、「大きく負けない」
ことだと思っています。それには、「ストップ」を毎回、
必ず入れることです』

『極力、ストップにかからない自信のあるタイミングを
見極める習慣をつけるためにも、ストップは常に入れる
ほうがいいと思います。
10回エントリーした場合、ストップにかかるのを4回まで
に抑えることを目標にしてみましょう』

投資法で参考になるのは次のポイント。

『1日足、4時間足、1時間足、15分足と時間を長いほう
から短くしながら、それぞれのトレンドを確認してみる。
上昇基調では、「買い」、下降基調では「売り」で
エントリーしてみる。
大きいトレンドと小さなトレンドが違う場合、早めの決済
を試みる』

月100万円儲けるには、大きいトレンドと小さなトレンド

が違う場合にも、上手く取引をしないといけないようだ。

最後に、FXで損する人・失敗する人の共通点を抜粋。

①損切りができない。
②「過去にうまくいったから今回もうまくいく」と
 思い込んでいる。』
③「ポジポジ病」(ポジション持ちたい病)に
 かかっている。
④「勝率」と「仕掛け」にこだわりすぎる。
⑤自分以外のものに頼りすぎる。
⑥自分なりのルールがない。
⑦感情に負けてしまう。
⑧簡単に勝てる、特別な方法があると思っている。
⑨都合が悪くなるとすぐ「塩漬け」「ナンピン」に走る。
⑩こつこつ勝って、大きく負ける。

私も負けているときに、思い当たる点がある。

しかも酷いときには、少し勝って、何度も大きく負ける。

こつこつ勝つことさえないんだから、情けない。

このての本を参考にならないと切り捨てることは簡単だが、

何が学べるかを考えて読むことこそ、このブログの主題で

あり、私にとっての楽しみなのである。

そういう意味では、充分楽しませてもらった、感謝。

【目次】(「BOOK」データベースより)
序章 「子育てママ」がFXを始めた理由/第1章 FXは決して怖くない。むしろ女性向きの投資です/第2章 難しそうな「取引き」も、こうして始めれば大丈夫!第3章 元手100万円で月100万円稼ぐ、5つの必勝ステップ/第4章 損する人、失敗する人には共通点がある/第5章 会社選び、気の合う仲間との交流も勝ち続けるための鍵/第6章 何より大事なのは、自分に合った投資手法を見つけること!/おわりに FXでハッピーになるための万友美流10カ条

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2011年1月28日 (金)

松田哲(マツダサトシ)さんの『1勝9敗でも勝てる松田式FX!』を読んでみた

松田さんの『1勝9敗でも勝てる松田式FX!
大きく動くこれからが儲けドキ!』を読んでみた

 (5つが最高)

最初に1つ言わせてもらうと、この本は「てにをは」の

間違いが多く、脱字もかなりあるのが残念なところ。

ただ、著者の松田さんはプロのFXディーラーだっただけ

あって、とにかくその考え方はシンプルで分かりやすい。

やっぱり実際に稼いでいる人は、その世界の大切なことが

何かをきっちりと理解していて無駄がない。

『FXで稼ぐ人はなぜ「1勝9敗」でも勝つのか? 利回り

100%の外貨投資戦略』など松田さんの本は何冊か

読んだことがあり、その考え方に影響を受けてきたので

今回もとても面白く最後まで読ませてもらった。

けれど、最近は「1勝9敗」でも勝つということばかりが

強調されすぎて、松田さんの本来意図していたところから

離れてしまったのではないかという懸念もある。

もともとは「損小利大」で続けていけば、勝率は悪くとも

トータルで儲けることができるので、損をするのを嫌って

下手に粘ることなく、損切りを適切に行うべき、という

発想法を伝えたかったのではないかと思う。

このことは、結局、FXでは損をすることは必ずあり、

大切なのは勝率ではなく、儲けられるときに大きく

利を伸ばすことが重要であるという教えだったはず。

ところが最近の松田さんに対するレビューなどを見ると

「1勝9敗」では勝つことは難しいというものが目立ち

実際には松田さんは「1勝9敗」ではないはずなのに

「1勝9敗」ということばかり注目されてしまっている。

この本に興味をもった方は、ぜひ本来の松田さんが

意味していたところをよく理解して、読み進めて

いっていただきたい。

少しだけ、「松田式FX」について私なりにまとめさせて

もらうと次のとおり。

『大負けしないための鉄則
①トレンドには素直に従う
②デイトレードは避ける
③売りと買いの両方で勝とうとしない
④ストップロスは必ず入れる』

これらは「損小利大」のための第一歩だと思うが、

私は、どちらかというと逆張りが好きで、デイトレード

ばかりやって、売りと買いの両方で勝とうとしている。

ストップロスについては、まさにそのとおりだと思うが

成り行きで注文を出したいため、ほとんど入れない。

結局、全部逆にやっているので儲からないのだ。

「損小利大」だけは、常に意識しているつもりだけれど

逆になってしまうことが多いのも、また相場なのだ。

『人民元自由化に伴う円高局面においてFXで勝つ』
『1ドル=65円の極端な円高が進む』

今後のドル円相場の予測は、いつもどおり大胆。

『FXは為替差益だけに的を絞って臨むべき』

『相場に勝つのは天才ではなく「しぶとい奴」』

『利益と損失の比重は2対1が基本中の基本』

利益と損失の比重というのは、利益目標を立てるという

より、ストップロスにより損失をコントロールすること。

『日足のローソク足チャートに基づいたテクニカル分析が
最も分かりやすくて有効』
『世界中の人たちが同じチャートを見て節目となっている
水準が強く意識されることによって、結果的にサポートラ
インやレジスタンスラインなどが機能しやすくなっている』

『頻繁にオーバーシュートするユーロ・ドルと比べて、
ドル・円は比較的チャートポイントに対して律儀に反応
する傾向が強い通貨ペアです』
『チャート上の「だまし」が少ないという意味では、ドル・
円はキャリアの浅い個人投資家でも比較的トレード
しやすい通貨ペアだと言える』

どの通貨ペアがいいと感じるかは、動きが大きいほど

儲けるチャンスが大きいと考える人もいるので

人それぞれの見解があると思うが、私もドル・円が

比較的素直な動きをするように感じる。

FX初心者の方は、ぜひ一度、松田さんの本を手にして

みて、その方法論の是非を検証してみるといいと思う。

やり方が合う合わないはあると思うが、きっと得られる

ものがあるはず。

【目次】(「BOOK」データベースより)
第1章 人民元の自由化とともに超円高時代が到来する!(瓦解し始めたユーロ/今、目の前にある危機の本質 ほか)/第2章 激動の時代を勝ち抜く「松田式FX!」の基本戦略(外貨売りに抵抗のある日本人/めざすべきは“損小利大” ほか)/第3章 具体的にどう勝つか?「松田式FX!」投資戦術(めざすリターンによって手法は異なってくる/買いと売りの両方で勝とうと思うのは強欲 ほか)/第4章 ドル・円、ドル・ユーロ、豪ドル・円 3大人気通貨ペアはこう攻める!(ドル・円の今日までと明日 一貫して大きな流れはドル安・円高/ドル・ユーロの今日までと明日 下落トレンドはまだまだ続く! ほか)/エピローグ FXトレーダーの存在意義は「相場の均衡点」を探ること

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2011年1月27日 (木)

小宮一慶さんの『ビジネスマンのための「発見力」養成講座』を読んでみた

小宮さんの『ビジネスマンのための「発見力」養成講座』を読んでみた

 (5つが最高)

さすがの小宮さんでも、14冊も読んでくると以前読んだ

著作との重複が見られるようだが、この本そのものは

とても読みごたえがあって、いい本だと思う。

特に「発見力」とは何かということを強く印象付ける

「はじめに」のセブンイレブンとローソンの話は必読。

普段どれだけものをきちんと見ていないかを思い知ら

される、とても面白い話で、つかみとしては最高。

ちなみに、どの本の内容とかぶっていると感じたかも

記しておくと『新幹線から経済が見える』、『「1秒!」で

財務諸表を読む方法』や『日経新聞の数字がわかる本』

などである。

1,000円という価格からすると、かぶっている部分以外で

充分もとが取れる気もするが、この本と「経済がわかる

本」 シリーズの3点セットで良いかもしれない。

ただ、『「1秒!」で財務諸表を読む方法』【実践編】は、

財務諸表に関心がある人は読むべきだと思う。

いつものとおり、この本の私にとって特に必要なところ

のみをまとめると次のようになる。

『関心を持てば、ものは見えます。
仮説を立てれば、ものは完全に見えます。』

『見える力の大原則
1 気にしていると、ものは見える
2 思い込みがあると、ものは見えない
3 人は、自分に必要なことだけを選んで見ている
4 人は、本当に必要なことを見ていないことも多い』

『こうすればものが見えてくる!
1 分解してポイントを絞って見る
2 消えていったものにも注目する
3 疑問・不思議に思ったことの理由を考える
4 全体を推測しうる1点を見つける
5 先入観を疑う』

『ものが見える10の小さなヒント
1 先に要点を知る
2 ヒントを先に得る
3 分解する
4 情報を減らす
5 気づいたことをすぐメモする
6 比較する
7 一部を取り替える
8 視点を変える
9 複数で話す
10 素直になる』

数字の見方については、やはり小宮山さんの

観察力はとても参考になる。

「あたりまえのことをバカになってちゃんとやる」ため

にも、きちんとものを見て「発見力」を養う必要がある

と実感させられる充実の1冊。

【目次】(「BOOK」データベースより)
はじめに 発見力=ものが見える力/第1章 見えているようで、何も見えていない/第2章 関心と仮説でものが見える/第3章 たとえば、こんなふうに見えてくる!/第4章 見える力を養う方法/第5章 ものが見える10の小さなヒント

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2011年1月26日 (水)

パンカジ・ゲマワットさんの『コークの味は国ごとに違うべきか』を読んでみた

ゲマワットさんの『コークの味は国ごとに違うべきか
ゲマワット教授の経営教室』を読んでみた

 (5つが最高)

この本は、世界がグローバル化し、フラットで国境に

意味なんてなくなったのだという昨今の主張に対して、

そんな「常識」を信じると痛い目にあうということを

「セミ・グローバリゼーション」という概念を用いて

詳しく説明してくれている。

この本を読むと、いまでも世界の国々のあちこちに

厳然と「違い」は生き残っているということを思い知る。

タイトルにもなっているコカ・コーラ社の世界戦略など

日本企業を含む世界の一流企業の成功と失敗から

ほんとうに役に立つ経営学を学ぶことができる。

ただ、少し難点を挙げれば、私の企業に関する

知識不足から、セメント業界の分析は飽きてしまった。

それ以外は、とても面白く、バフェットもお気に入りの

コカ・コーラ社のCEOだったゴイズエタが海外戦略と

いうことでは、規模の経済を過信し、あまり成功して

いなかった事実など、新たな発見も多かった。

まず第1部では、「フラット化しない世界」として、

日本コカ・コーラの多種多様な缶コーヒーの数々は、

本社の反対を押し切って日本で開発した商品で、

非協力的なアメリカ本社へのあてつけのため

本社のあるジョージア州から「ジョージア」と命名された

とか、ウォルマートは外国ではあまり儲けられず

本社からの距離が離れるほど苦戦しているとか、

ローカルな戦略が意外に成功している例を紹介する。

そして、グローバル化しない要因を、文化的(Cultural)、

制度的/政治的(Administrative/political)、地理的

(Geographical)、経済的(Economic)という4つの要因

に分類して、CAGEというモデル化により分析している。

さらに、ある戦略的行動が合理的かどうかの判断の

基礎を提供するものとしてADDING価値スコアカード

を用い、企業ごとの問題を明らかにしている。

ADDINGとは、販売数量向上(Adding volume)、

コスト削減(Decreasing cost)、差別化(Differentiating)、

業界の魅力向上(Improving industry attractiveness)、

リスク平準化(Normalizing risk)、知識の創造と応用

(Gererating knowledge)という6つの構成要素のこと

であり、その分解・数量化・比較・評価が重要である。

また、第2部では「国ごとの違いを成功につなぐ」として、

インドのマクドナルドに羊バーガーがあるとか、

トヨタの生産ネットワークがいかに優れていたかとか、

レゴがデンマークとスイスで生産を続け、カナダを

本拠地とするメガブランズの中国製メガブロックと

厳しい競争にさらされているなどの例を紹介する。

そして、国ごとに存在する差異の中で付加価値を生み

出す戦略として、適応(Adaptation)、集約(Aggregation)、

裁定(Arbitrage)から成るAAA戦略を紹介している。

全体として、とても読み応えのある分析である。

序文で、ゲマワットさんは最年少でハーバード・ビジネス

スクール教授になった男と紹介されているが、やはり

アメリカは様々な主張を展開するタレントが豊富で

うらやましい限りである。

日本の学者も、もっと一般向けの分かりやすい本を

書いてもらいたいものである。

【目次】(「BOOK」データベースより)
第1部 フラット化しない世界(コークの味は国ごとに違うべきか/ウォルマートは外国であまり儲けていない/ハーゲンダッツはヨーロッパの会社ではない)/第2部 国ごとの違いを成功につなぐ(インドのマクドナルドには羊バーガーがある/トヨタの生産ネットワークはここがすごい/だからレゴは後発メーカーの追随を許した/IBMはなぜ新興国の社員を3倍にしたか/世界で成功するための5つのステップ)

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2011年1月25日 (火)

中野明さんの『ドラッカー流 最強の勉強法』を読んでみた

中野さんの『ドラッカー流 最強の勉強法』を読んでみた

 (5つが最高)

この本は、「ドラッカーが本領を発揮したのは、実は

マネジメント系ではなく非マネジメント系の著作に

おいてである」という考えのもとに、ドラッカーが実際に

行っていた勉強法を主に非マネジメント系の著作から

紹介してくれていて、とても参考になる。

中野さんはドラッカーやポーターの解説書を書いている

だけあって、幅広く著作に当たっているだけでなく

解説の仕方も丁寧で分かりやすい。

「マネジメントの父」と称されるドラッカーだが、私自身は

その著作を何度も読もうとして挫折している。

分かりにくい哲学書でも、一応最後まで読む私が

途中で読むのをやめるというのは、あまり経験がない。

けれど、その挫折の理由もこの本を読むと何となく思い

当たることが書かれているので、次は非マネジメント系の

著作に挑戦してみようと思う。

さて、主題の勉強法についてだが、いつものとおり、

私にとって必要なところのみまとめると次のようになる。

①現在の知識社会では、知識こそが最も重要な生産手段
②知識は陳腐化するので、継続学習が不可欠
③継続学習には、3ヵ月テーマと3ヵ年テーマを設ける
④自己啓発の責任は本人にある
⑤勉強テーマ→勉強計画→インプット→アウトプット
⑥勉強テーマは、「価値観」「強み」「機会」を考慮
⑦「価値観」を最優先
⑧「行動経済学」などの大きな話題ほど3ヵ月テーマ
⑨目標には、期限と具体的成果を明確にする
⑩成果を挙げるためには、時にインセンティブを必要
⑪自分自身がスケジュールを決める主体
⑫優先順位と劣後順位を明確に意識
⑬選択と集中とは、計画と実行に他ならない
⑭「フィードバック分析」を実行し、質を継続的に改善
⑮勉強内容の文章化は、全体像を考える
⑯平易な文章で書く
⑰発見の手帳を身近に置く
⑱一生涯の勉強テーマを持つ

「フィードバック分析」のチェックリストは次のとおり。

①半年間でやった優れた仕事は何か
②一生懸命やった仕事は何か
③お粗末な仕事や失敗した仕事は何か
④集中すべきことは何か
⑤改善すべきことは何か
⑥勉強すべきことは何か

未来を予見するような優れた著作を遺したドラッカーが

どのようにして知識を身につけていったのかが、

非常にコンパクトにまとめられていて分かりやすい。

これから勉強のテーマを見つけて、何かを学んでみよう

とする人には、最適の1冊だと思います。

【次に読むお奨めの3冊】
『経営者の条件』 ダイヤモンド社
『ドラッカー20世紀を生きて』 日本経済新聞社
『プロフェッショナルの条件』 ダイヤモンド社
【さらに勉強するための7冊】
『経営者に贈る5つの質問』 ダイヤモンド社
『イノベーションと起業家精神』 ダイヤモンド社
『現代の経営』 ダイヤモンド社
『明日を支配するもの』 ダイヤモンド社
『ポスト資本主義社会』 ダイヤモンド社
『傍観者の時代』 ダイヤモンド社
『断絶の時代』 ダイヤモンド社

【目次】(「BOOK」データベースより)
第1章 長距離型勉強のすすめ─「3カ月と3カ年勉強法」とは/第2章 勉強テーマはこうして決める─「価値観」「強み」「機会」の3要素/第3章 目標をマネジメントせよ─成果を上げる目標設定と自己管理/第4章 時間をマネジメントせよ─勉強時間を確保するための3つのステップ/第5章 「何をしないか」を決めよ─「選択と集中」と「フィードバック」で実行力を上げる/第6章 徹底的にインプットせよ─入手情報の「量」と「質」を上げる技術/第7章 勉強の成果はアウトプットで決まる─書きながら考える技術

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2011年1月24日 (月)

小宮一慶さんの『日経新聞の「本当の読み方」がわかる本』を読んでみた

小宮さんの『日経新聞の「本当の読み方」がわかる本
ニュースを関連づければ知識に変わる』を読んでみた

 (5つが最高)

この本は、以前読んだ『日経新聞の数字がわかる本

「景気指標」から経済が見える』で小宮さんが紹介して

いた指標の見方を実際の記事に即して他の記事とも

「関連づけて」読む方法がまず紹介されている。

そして小宮さん流の日曜日から始まる日経新聞の

1週間の読み方指導。

実践テクニックとして、注目記事から経済の動きを読み

解く方法など、今回もとても参考になる。

しかも出版が2010年2月と、わりと新しいことから、

取上げられている記事も新鮮で、すぐに思い出せる

事柄が多く、とても興味深く読めた。

ただ、時の流れとは恐ろしいもので、2007年の夏の

サブプライム危機と2008年秋のリーマン・ショックが

同じ時期だと勘違いしている人が多いとの指摘に

私も見事に当てはまっており、情けなかった。

この時期は私にとっては転職活動に忙しかった時期で

世界経済よりも、自分の明日のお金の方が大切だった

ことは間違いないが、つい最近のことでさえこれでは、

少し昔のことであれば、もう記憶に頼ることは難しい。

けれど、この本には、そんな私のために資料編として、

現在を読み解くために過去の数字を押さえると称して

主要景気指標の時系列データが丁寧にも掲載されて

いるのである。

本当に手元において、日経新聞のお供にすると

知識が深まるつくりになっている良書である。

【目次】(「BOOK」データベースより)
1 基本テクニック編─日経新聞は「関連づけて」読む(記事を鵜呑みにしてはいけない/疑問を感じたらすぐに「数字」を確認する ほか)/2 小宮一慶が読む!日経新聞の1週間(日経新聞は日曜日から始まる/月曜日は「勝負の日」 ほか)/3 実践テクニック編─注目記事から経済の動きを読み解く(携帯電話を輸出するのは「国内で売れなくなった」から?/日本の財政を把握している人は、誰もいない ほか)/4 資料編─主要景気指標の時系列データ(現在を読み解くために過去の数字を押さえる/国内編 ほか)

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2011年1月23日 (日)

小宮一慶さんの『明日から「仕事ができる」と言われる新・目標達成法』を読んでみた

小宮さんの『明日から「仕事ができる」と言われる
新・目標達成法』を読んでみた

 (5つが最高)

この本は、小宮さん流の目標達成法が詰まった本だ。

とても実践的ですぐに使える方法がいくつも出てくる。

簡単に私が取り入れたいと思ったものを抜書きして

みると次のようなものになる。

①年間目標は毎月はじめに月間目標に落とし込む
②体重を毎日記録する
③毎月末には預金残高を確認する
④人を心から誉める
⑤休日にスキルアップのための勉強をする
⑥何かアウトプットを出すことを心がける
⑦ウィークデーにも「つなぎ」の勉強を入れる
⑧時間を自分でコントロールしている意識を持つ
⑨ノートを買い、人の話や気付いたことをメモする
⑩スクラップに書き込みや線を引いておく
⑪英語は基本例文を暗記し、繰り返し練習する
⑫時には難しい本を読んで思考力を鍛える
⑬話には間をとる練習をする
⑭松下幸之助さんの『道をひらく』を読む
⑮子供が「自尊心」と「自負心」を持つように接する
⑯自分でコントロールできないことに悩まない
⑰言い訳をしない
⑱ときには自分を甘やかす

読む人によって参考になる点は違うと思う。

上に記したことは、あくまでも私が出来ていないので

取り入れてみたい点のみを記したもので

もちろんこれ以外の目標達成法も、たくさん紹介

されているので、ぜひご自身で読んでください。

【参考文献】
『論語の活学』 安岡正篤
『新釈老子』 守屋洋
『菜根譚』 洪自誠

【目次】(「BOOK」データベースより)
第1章 目標具体化力がつく小さな行動習慣(月間目標を立てる/高層マンションを見たら階数を数える/月末には預金残高を確認する/小さな行動習慣・スペシャル―人を誉める。もし誉められなかったら、1年間左手首に輪ゴムをはめる)/第2章 時間管理力がつく小さな行動習慣(3年連用日記をつける/休日は1時間だけ将来のために使う/一次会には行くが、二次会には行かない)/第3章 仕事力がアップする小さな行動習慣(必要なメールはその場で返信をする/ノートをいつも持っておく/混んだ電車には極力乗らない/仕事に関係ない雑誌をつねに鞄に入れておく/飛行機に乗ったら落語を聴く/若いうちは雑用を進んで引き受ける)/第4章 人を動かす力がつく小さな行動習慣(タクシーのお釣りの小銭は受け取らない/ニコニコする/座右の書を持ち、寝る前に必ず読む/言い訳をしない)

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2011年1月22日 (土)

小宮一慶さんの『新幹線から経済が見える新版』を読んでみた

小宮さんの『新幹線から経済が見える新版』を読んでみた

 (5つが最高)

この本は、新幹線という身近な乗り物を題材にして

経営コンサルタントの小宮さんが、経済を分析する

手法を読者に分かりやすく解説してくれている。

たとえば、車窓から見える「野立て看板」から企業の

ブランド戦略を考えてみたり、駅近くのビル工事の

クレーンの数から地価の状況や合成の誤謬を

分析してみせたり、グリーン車で隣に座る客が

いるかどうかによって景気を考えてみたりするなど、

「定点観察」を自分なりの基準で行うことで

新しい発見があることを紹介してくれている。

私は現在は内勤なので新幹線を利用することは

めったにないが、小宮さんのユニークな視点からの

経済動向を読む手法はとても参考になる。

また、飛行機との比較やタクシーの話題なども

織り交ぜ、様々な交通手段の経済性や

所要時間の比較などもとても面白い。

顧客第一主義というところから、様々な業態の顧客

サービスについても触れ、それとの比較でJRに

対するヘビーユーザーとして提言をしているところは

何となく生真面目な小宮さんらしい性格の現われ

のような気がして、別の意味で面白い。

この細か過ぎるようにさえ見える指摘を上手く

相手に納得させるあたりが、経営コンサルタント

として、長年その地位を築いてきた秘訣なのかも

しれないと、そんなことを思ったりもした。

通勤の電車などでも少し回りに目を向けて

この本で紹介されている「定点観察」を自分なりの

基準で行うことを取り入れてみると、いろいろと

気付きが得られて面白いのではないかと思う。

【目次】(「BOOK」データベースより)
第1章 「新幹線」から見える日本経済/第2章 「野立て看板」からみる企業経営/第3章 ビルのクレーンが地価を教える/第4章 新幹線の空席と景気の関係/第5章 フルムーン夫婦の旅行増加からわかる経済状況/第6章 進む鉄道のハイテク化/第7章 新幹線のサービスから見えること

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2011年1月21日 (金)

ケンジ・ステファン・スズキさんの『消費税25%で世界一幸せな国デンマークの暮らし』を読んでみた

ケンジ・ステファン・スズキさんの
『消費税25%で世界一幸せな国デンマークの暮らし』を読んでみた

 (5つが最高)

この本は、とにかくとても分かりやすいということが

特徴の本です。

いまの日本が良好な状態でないということは誰もが

感じていることだと思うが、ではいったいこの国の形を

どのようにすれば良いのかというと、なかなか答えを

持ち合わせている人がいないのが現状である。

そういった閉塞間の中で、ひとつの方向性として

考えられたのが、構造改革による小さな政府である。

しかし、この考え方は竹中平蔵さんの言うとおり

構造改革を徹底して行わなければ、一部の人に

既得権益が残り、格差社会を助長している政策と

受けとられかねない懸念があるとともに、

小さな政府ではセイフティーネットが不十分になって

しまうという社会的不安をぬぐいきれない。

そこで次に考えられるのが、北欧諸国が実施している

「高福祉・高負担」という国家モデルの選択である。

これは高負担に対する批判と平等な福祉の実現に

不安があることから、日本ではあまり人気がない。

けれど、そこに住んでいる人々は本当はどう感じて

いるのだろうか、という疑問に答えてくれるのが

今回のこの本である。

作者は、1944年に日本で生まれ、1967年に

青山学院大学を中退してデンマークに渡り、

79年デンマーク国籍取得している。

デンマーク人女性と結婚して3女を育て、68年には

コペンハーゲン大学入学している。

その後は、在デンマーク日本大使館勤務等を経て、

デンマークが世界的にリードする風力発電などを

日本に普及させる事業を手がけている。

今でも日本につながりを持った人の目線で

実際のデンマークの様子を具体的に伝えてくれている。

一般的には、高福祉国家というと医療費や教育費が

無料だが、そのかわり税金が高い国というイメージ

しか持ち合わせていないのではないかと思う。

けれども、それを実現するには国民が納得できる

考え方をしっかりと共有していることが大切で、

たとえば「受験がないこと」だけをとっても、

ただそれだけのことではなく、この本を読んで私も

初めて知ったのだが、デンマークでは普通のサラリーマン

になるにも資格が要るらしく、その仕事を極めて

さらに上を目指すときや、転職の際などに大学で再度

学んで資格を取ることが普通に行われているようだ。

そういったことも含めて、受験がなく、教育費も無料

という社会が形作られているのである。

また、「国民一人一人に主治医がいること」や

「女性の就業率がEUで最も高いこと」なども、

その裏には歯科治療は個人負担であったり

ちょっとした風邪では薬も出してくれないなどの

病気の「仕分け」が行き届いていることや、

女性を活用しなければ国家が成り立たないといった

事情が当然あってのことなのである。

こうした様々な実態を知った上で初めて、

数々の調査で「世界一幸せ」とされる「デンマークモデル」

と呼ばれる社会制度の良し悪しを議論できる。

この本は、そのことを可能にしてくれる

具体的な判断材料が豊富な良書となっている。

【目次】(「BOOK」データベースより)
第1章 デンマークの高福祉社会─なぜ、国民が「幸せ」を感じるのか(医療制度/出産・育児制度/教育制度と就職システム/年金制度/高齢者福祉制度/生活支援制度)/第2章 デンマークの高負担の実情─国民総背番号制と財源(個人登録番号制度/個人登録番号制度と納税制度 ほか)/第3章 デンマークの問題点と共生社会─離婚・自殺・小家族・給与格差…(社会福祉と離婚の増加/高福祉でもなくならない自殺 ほか)/第4章 デンマーク史概略─高福祉国が生まれた歴史的背景(平坦な国土/14‐15世紀の隆盛 ほか)

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2011年1月20日 (木)

平田周(ヒラタシュウ)さんの『速く論理的に書く技術』を読んでみた

平田さんの『速く論理的に書く技術』を読んでみた

 (5つが最高)

この本は、速く論理的に書くことによる利点について

ビジネスマンの視点から書かれた本です。

通常は論理的に書く方法論が主流で、速く書くこと

については、次の段階とされているところを

この本は、速く書くことによって思考が論理的になり

頭の回転自体が速くなると説いている。

確かに速く書こうとすれば、頭はそれに対応するために

速く考えるようになり、そのためには論理的に考えざるを

得ないという側面はあるかもしれない。

また、速く書くことができれば 、時間を効率的に使える。

ビジネスシーンでも電話より、メールでのやりとりが増え、

書くこと自体、インターネットの拡大とともに重要性を

増してきている。

私のいる職場では、となりにいる人にまでメールを

書いて、報告や相談をするほどになってしまった。

この本では、時には常識ハズレな解説もあるが

このブログを書くのにかなりの時間を費やしている

私には、試みてみるべき「技術」なのかもしれない。

気になった点を挙げると次のとおり。

『パソコン上で文章を訂正するのに要する時間はムダです。
直すのにかかる時間よりも、考えるのが中断されることの
方が、書くのを遅くします。そのためには、直さないことを
原則に文章を書く覚悟が必要です。』

『直さなければ、下手な文章になるだろうと心配されるかも
しれませんが、話している時のことを考えれば、できない
わけではありません。』

『「考えること」と、その表現である「書くこと」を区別する点が
本書の考え方の特長です。いつも考えており、それを臆せず
文章にする。それが人をつくります。』

『速く書けば、考えるほうも早くならざるをえないのです。
脳の方が速く考えるのではなく、書き手である指のほうから
せきたてられるので、速く考えなければならなくなるという
のが正解でしょう。』

『速く書くことが考える速度を早め、頭の回転をよくします。』

『速く考えることは、ビジネスの世界ではたいへん有利な
ことです。』

そして、速く書いても悪文にしない20のポイントも。

1.読み手に対し何を伝えたいかがはっきりしている
2.長いものはもちろん、1ページ程度の短いものでも、
 項目や段落に分ける
3.起承転結を明確にする
4.問題提起の次にすぐ結論を持ってくるのも1つの方法
5.読む人が誰で、どういう状況であるかを考える
6.読む人に話しているつもりで書く
7.書くべき内容、とくに出だしをあらかじめ考えておく
8.書きながら考える習慣を捨てる
9.書いたものは書き終わってからも直さない覚悟で書く
10.手が途中で止まらないようにする
11.書くのに、全体として何字程度かを決めておく
12.1600字程度(A4で1枚)を一気に書く
13.400字程度を1つの段落にして読みやすくする
14.限られたスペースの中で、何を書くかを意識する
15.話の内容が、いつの間にか変わる、「文脈のねじれ」
 を避ける
16.短い文章で書く
17.接続助詞「が」をできるだけ使わない
18.連用形中止法をできるだけ使わない
19.同じ言葉を繰り返して使わない
20.書き終えたものを、同僚の誰かに読んでもらい、
 校正を頼む

私のように、若い頃に文学にかぶれて、あえて長々とした

読みにくい文章を書くような人は、ビジネスの世界では

好まれないということは分かっている。

だから、私は法務の仕事をするときには、決められた型

の中で文章を書くだけなので、あまりぼろが出ないで

すんでいるのだと思う。

このブログの読者には、読みにくい文章で申し訳ないと

思っているが、「文脈のねじれ」が起きないように気を

つけて書いているので、ご勘弁いただきたい。

ビジネスシーンにおいては、有用な情報が多く、

とても参考になる1冊であった。

【目次】(「BOOK」データベースより)
はじめに 速く書ければ、こんなに得をする!
1章 営業日報を書くのになぜそんなに苦労するの?
2章 書くのが苦手な人へ
3章 速く書くにはどうすればよいか
4章 速く書けばひどい文章になるのでは
5章 ロジカル・ライティングのコツ
6章 すべては、論理的に話す習慣にあった
7章 速く書くことが脳を鍛える
終章 書く文化が戻ってきた

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2011年1月19日 (水)

伊藤真さんの『夢をかなえる勉強法』を読んでみた

伊藤さんの『夢をかなえる勉強法』を読んでみた

 (5つが最高)

この本は、司法試験短期合格者の輩出数全国トップクラス

の実績を有する伊藤塾の塾長である伊藤真さんの勉強法

に関するとても実践的な本です。

私も今年の目標に法律系資格の取得を掲げているので

そのためにも気合を入れて勉強に取り組むべく

何かこの手の本を読んで参考にできるところを

探したかったのだが、自分の方法論に間違いがないという

ことが分かったので、あとはやるだけという感じだ。

伊藤さんの経験などからも学ぶことが多いので、

勉強法に悩んでいる人は、法律系とか資格とかに関係なく

実際に本を手にして一度内容を確認していただきたい。

ここでは、私にとって参考になった勉強のコツを

簡単にまとめて書いておく。

①「全体像」を把握するために、まず目次をコピーする
②ゴールを明確にして、さかのぼって今を考える
③繰り返し反復して基礎を積み重ねる
④五感を総動員して知識を記憶させる
 (自分に講義する「セルフレクチャー」が効果的)
⑤普段から喜怒哀楽をはっきりさせて記憶力を高める
⑥過去問に始まり、過去問に終わる
 (過去問を見ずして、どうして自分に求められている
  ものを知ることができよう)
⑦レベルが高すぎない、具体的事柄がイメージしやすい
 本を選ぶ(名著や古典も必ず1冊買う)
⑧理解を助けるためマーキングは重要
⑨講義を聴くなら、具体例こそメモをする
⑩優先順位を決め、集中できる時間の中で勉強する
⑪「もう終わり」と思ってから、5分粘る

私は勉強することをそれほど苦にしないタイプであるが、

時間がないことを言い訳にしてしまうので、なかなか

成果が上がらないことが悩みである。

ただ、社会人であれば、やはり時間のやりくりをつけて

勉強を続けていかないことには、先がない。

伊藤さんのように1日に20時間も勉強できないが、

細切れ時間を有効に活用して何とか勉強をしたい。

真似はできないが、伊藤さんは睡眠を1日3時間半として、

電気をつけたまま本を何冊か体に乗せて横になり

寝返りをうつと本が落ちた衝撃で目が覚めてまた勉強した

という生活を、なんと1年間も続けたということだ。

夢をかなえるというのは、本気の努力が必要ということだ。

気力を充実させる意味でも、読んで損のない1冊。

【目次】(「BOOK」データベースより)
第1章 いちばん大切なこと(「大量の問題をこなす」のは最悪の勉強法/「全体像」を把握するために、まず目次をコピーする ほか)/第2章 勉強のコツをマスターする(イチローが素振りにこだわるのはなぜか?/自分で自分に講義する「セルフレクチャー」の効用 ほか)/第3章 挫折しそうになったときの対処法(スランプになったら、おめでとう/不安要因はすべて紙に書き出してみる ほか)/第4章 勉強すればするほど人は磨かれる(「小さな成功体験」があったから今がある/中学三年の独り暮らしで見えてきたこと ほか)/第5章 夢をかなえる思考術(人生最大の悩みをどう乗り越えたか/夢をかなえるには「大きな力」の助けが必要 ほか)

夢をかなえる...

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2011年1月18日 (火)

東野圭吾さんの『パラドックス13』を読んでみた

東野さんの『パラドックス13』を読んでみた

 (5つが最高)

東野さんの作品には、大きく分けて2種類の作品がある。

1つは当然のことながら、推理小説に分類される作品で

あり、もう1つが科学に題材をとった作品である。

もちろんこれ以外の作品もあるし、両方の要素を上手く

取り入れた作品もあるが、私の中ではこの2つの分類が

とても重宝している。

では、今回読んだこの本は、どちらに分類できるかというと

科学に題材をとった作品のほうである。

作者の東野さん自身が、「世界が変われば善悪も変わる。

人殺しが善になることもある。これはそういうお話です」

と言っているとおり、そうしたパラドックスに満ちている。

ラストがどのようになるのかは読んでいただくとして

話としては、13時13分に突然、想像を絶する過酷な

世界が目の前に出現する。

陥没する道路や炎を上げる車、崩れ落ちるビルディング

など、破壊されていく東京に残されたのはわずかに13人

という、奇妙なサバイバルであり冒険譚のような展開。

しかし、なぜ彼らだけが地球上に残されたのだろうか。

彼らを襲った“P-13 現象”とはいったい何なのか。

生き延びていくために、必死になる中で、安楽死や

高齢化社会、都心の災害対策、性の問題など

人間が普段生きていくうえで文明に寄りかかって

考えていることが、実はあまりにも希薄な根拠しか

持っていないのではないかということを問いかけてくる。

リーダー格の男がメンバーのレイプ事件をきっかけに

「人類」の存続のために個人の想いを捨てさせようと

働きかけるが、女性たちは「人間」の尊厳を主張する。

この展開は、ある意味で東野さんらしい部分ではある。

けれど、このリーダー格の男に「答え」を求めて

読んできた読者には、違和感のある展開だと思う。

ましてや、最後の部分の生きる人間と死ぬ人間の

分け方は、説得的ではない。

後半部分で示されるリーダー格の行動指針が

「天は自ら助くる者を助く」というのも、SF的ではない。

そうなのだ、この本は、突然起きた“P-13 現象”という

世界の数学的矛盾(パラドックス)を読み解くSF物語

では、まったくないのである。

張りめぐらされた壮大なトリックなどもなく、

冒頭で私が示した「科学」的事象も実は存在しない。

この本は、どこまで行っても、人間ドラマなのだ。

ただ、推理小説ではないので、科学に題材をとった

作品のほうに分類するだけで、結局のところ

東野さんの作品の全てがそうであるように

この作品も人間が描かれている上質の作品なのだ。

SFや謎解きでないというだけで評価を下げるのは

この本の評価の仕方としては適切ではないだろう。

とにかく読み始めたら止められなくなる作品である

ということだけは、私の経験として書いておきたい。

推理小説は受け付けないという人にもお奨めです。

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2011年1月17日 (月)

マルコム・グラッドウェルさんの『採用は2秒で決まる!』を読んでみた

グラッドウェルさんの『マルコム・グラッドウェル
THE NEW YORKER傑作選(3)採用は2秒で決まる!』を読んでみた

 (5つが最高)

さすがマルコム・グラッドウェルだと感心させられること

が次々に出て来るのは傑作選(1)(2)と同様だが

訳者の勝間和代さんがあえて第17章の「 “才能”を

めぐる神話─優秀な人間が過大評価されるワケ」を

この選集に採用したことが、何より興味深かった。

この第17章では、アメリカの破綻したエンロン社の

コンサルタント会社がマッキンゼーであり、監査法人が

アーサー・アンダーセンであることが紹介されている。

そしてこのマッキンゼーとアーサー・アンダーセンこそ

勝間さんのキャリアを形成した企業なのである。

この第17章は、その後に解散の道をたどった

アーサー・アンダーセンについては触れられていないが

エンロン社がマッキンゼーのアドバイスに従い、

ずば抜けて優秀で高学歴の精鋭を高額の報酬で雇い、

「能力至上主義」というアメリカの経営管理における

新たな正統派的信念に基いていたにもかかわらず、

「能力至上主義」に偏りすぎたため組織を維持できず

あまりにもあっけなく破綻したことを紹介している。

また、この第17章の中には名前こそ取上げられて

いないが、捜査当局が関心を寄せていると書かれて

いる投資銀行の1つが、やはり勝間さんのいたことがある

JPモルガンのことなのである。

別に勝間さんがエンロン事件に関与していたのではないし

何か社内で不正をしていたわけではもちろんない。

しかし、このような外資系企業を渡り歩いてきたことを

自身の経歴として自慢するように、いくつもの著書に

名前を出してきた勝間さんが、あえて選集にこの章を

採用するあたり、さすがとしか言いようがない。

この本の中に記載がないので、少し付け加えておくなら

米国で過去最大級の企業倒産が相次いだ時期に

エネルギーのエンロン、小売りのKマート、通信の

グローバル・クロッシングといった破綻企業の主要な

債権者リストにことごとくJPモルガンは含まれている。

例えば、エンロン関連だけで11億3000万ドルの

不良債権を発生させてしまっている。

これら勝間さんがそのスキルを身につけてきた

外資系企業には「優秀な人間が過大評価される」

という共通点があるように思える。

そしてそのことを勝間さんは自覚している。

そして、なかでもエンロン事件のときでさえ傷を負わな

かったマッキンゼーに対する信頼は大きいように思う。

けれども、この第17章に出てくるマッキンゼーは

最悪のコンサルタント会社である。

エンロンでは優秀な人材をスター人材とし、その人が

プロジェクトを立ち上げようとするとき、社内は公開市場

システムにより引き抜きが奨励されていて、マネジャー

ですら、それを阻むことができない仕組みになっている。

この点に関して、作者の次の言葉はとても重たい。

『全社的なビジネスの安定性が重要ではないのか、
スター人材の自己実現がひょっとしたら、会社全体の
最善の利益と矛盾するのではないのか、と懸念した
者は誰ひとりいなかったようなのだ。
それこそが、本来、経営コンサルタントが懸念すべき
問題ではないだろうか。だがエンロン社のコンサル
タントはマッキンゼー社であり、マッキンゼー社は
多くのクライアント企業と同じくらい“才能という名の
神話”に取り憑かれていた』

これ以外の章も、いつものことながら面白かった。

第14章の「大器晩成」は、早熟の天才だった

パブロ・ピカソと、人生の後半期に才能が開花した

セザンヌの両者の違いと、「大器晩成」であるための

とても興味深い条件について。

また、第16章の「危険なプロファイリング」は、

ドラマなどですっかりお馴染みになった捜査手法の

「プロファイリング」が、実は占星術師や霊能者と同じ

コールド・リーディングという“トリック”を使っている

だけだったのではないかという驚くべき指摘。

さらに第18章の「採用は2秒で決まる!」は、

就職面接に圧倒的に強い学生の事例から、

その秘訣を探るものだが、実際に真似られるもの

なのかどうなのかは別として、最後に語られる

テクニックは、「はっきり話して、にっこりと笑う」。

いずれの章も充分に楽しめる。

【目次】(「BOOK」データベースより)
第14章 大器晩成─天才=早咲きの花か?/第15章 成功しそうな人─「誰がこの仕事に向いているのか」わからないときの雇い方/第16章 危険なプロファイリング─犯罪者分析は容易につくられる/第17章 “才能”をめぐる神話─優秀な人間が過大評価されるワケ/第18章 採用は2秒で決まる!─面接で本当にわかること/第19章 トラブルメーカー─アメリカン・ピットブル・テリアが犯罪について教えてくれたこと

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2011年1月16日 (日)

小宮一慶さんの『あたりまえのことをバカになってちゃんとやる』を読んでみた

小宮さんの『あたりまえのことをバカになってちゃんとやる』を読んでみた

 (5つが最高)

この本は、経営コンサルタントの小宮さんが読者に

「自分の人生をより豊かなものしていただければ」

という想いで書かれたものである。

これまでの小宮さんの本とは少し違って、

人間の生き方や人生そのものに関する

アドバイスがちりばめられたものになっている。

内容は、あたりまえのことが「A」、バカになることが

「B」、ちゃんとやることが「C」というようにそれぞれの

頭文字をならべて、このABCを実践すれば、誰でも

成功できるという人生の指南書のような感じだ。

13年間ずっと自分の会社のトイレ掃除を日課と

してきた経営コンサルタントの小宮さんが、

一番書きたかったことがこの本には詰まっている。

けっして説教くさくならず、すっと読ませて

行動を促す文章の数々は、さすがコンサルタント。

成功する人の「必要条件」は「物事を前向きに

とらえること」、でも「十分条件」は「まわりにいる人も

幸せにしよう」という考え方だ、とか。

「成功や幸せとは、人を幸せにしたご褒美」など。

最も印象的だったところは、小宮さんが自分を

前向きな性格に変えるために実践した方法。

もともとは心配性でネガティブな人間であったという

小宮さんは、左手の手首に輪ゴムをつけておいて

ネガティブな感情を持ったら、その輪ゴムを

引っ張ってパチンとやって、できるだけ早く

ネガティブな感情を断ち切るようにしていたということ。

教えられることの多い本であるが、

今後の私の目標にすべきことも書いてあった。

『得意な分野で人よりもちょっとがんばる。
本質まで踏み込む。そのわずかな差を
大事にする人が、プロになっていくのです』

私が独立するかは別として、プロを目指して

日々努力していきたいと思わせてくれる

身が引き締まる良書でした。

【目次】(「BOOK」データベースより)
第1章 人生は「一本のチューブ」である(チューブの上限につくか、下限につくかで人生は決まる/目の前の課題を天命と思いなさい ほか)/第2章 仕事はABCが大事である(三時間の努力を惜しむ人は一生損をする/目の前の仕事を深いところまで掘り下げなさい ほか)/第3章 全力をつくすということ(散歩のついでに富士山に登った人はいない/水中に住んでいる人は水面上の景色を知らない ほか)/第4章 運命のあみだくじの引き方(偶然は運命が仕組んだものである/人生の節目には「運命の人」があらわれる ほか)

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2011年1月15日 (土)

小宮一慶さんの『お金を知る技術殖やす技術』を読んでみた

小宮さんの『お金を知る技術殖やす技術
「貯蓄から投資」にだまされるな』を読んでみた

 (5つが最高)

この本は、とても真っ当な「お金」に関する本です。

そのため「低リスク・高リターン」の商品はないとして、

ファイナンスの大原則である「高いリターンを望むなら、

それに応じた高いリスクを取らなければならない」と

いうことが主張されている。

しかし、個人が投資を考える場合、低リスクで

いかに高リターンを得られるかを考えるものだ。

バフェット関連の本を読んだせいもあるが

投資の基本は、いかにリスクを回避するかである。

高いリターンを望む時に高いリスクを取らなければ

ならないという基本的な解説が、詐欺商法への

警告という意味では効果があるとしても、逆に

私からすると日本人の多くを危険な投資に向かわせ

てしまっているような気がしてならない。

私は小宮さんに楽して儲けられる方法を紹介して

欲しいなどとは思っていない。

けれど、高いリターンが欲しいなら、高いリスクを

取るべきだというようにして、リスクが低くなる方法を

探さなくなってしまうようなことは避けてもらいたい。

金融には、必ず市場の歪みから来る「行き過ぎ」が

生じることがあるので、そのときを狙うべきである。

確かに低リスク・高リターンの「商品」はほとんどない。

しかし、低リスク・高リターンが得られる「状況」は

私が投資をしてきた、20年の間にも何度かあった。

それで私が大儲けしたわけではないが、安易に

「低リスク・高リターン」の商品がないことだけを

声高に主張することには違和感がある。

また、小宮さんらしくないと感じたのは、商品に関する

説明で、「守るお金」の増やし方の中にデリバティブを

使った「仕組み預金」など新しい商品を内容を理解した

上で購入することを「テクニック」としている点だ。

「仕組み預金」こそ、「高リスク・低リターン」であり

内容を理解することは難しく、「守るお金」向きではない。

なお、投資信託に関する解説は明確で適切だ。

特に投資信託は上手く使わないと販売している証券会社や

銀行が儲けるだけの商品になってしまうという点や、

店頭に行って「何を買えばよいですか」などと絶対に相談

してはいけないというアドバイスは、そのとおりだ。

また、投資信託の活用方法は、自分では買えない金融商品

を買うときに使うというのも、大いに賛成できる。

最後に、小宮さんの株式で長期に資産を殖やそうと思って

いる方へのアドバイスは、次のとおり。

①余裕のある資金(「攻めるお金」)で、
②長期保有を前提として、
③自分が気に入った優良企業の株を
④市場全体の地合いが押した(下げた)ときに買うのが鉄則

この本は、全体としては、とても真っ当な「お金」の本です。

金融リテラシーの入門書としては、良いと思います。

【目次】(「BOOK」データベースより)
金融が分かれば幸せになれる/第1部 お金を知る技術(経済の大きな流れをつかむ/「攻めるお金」と「守るお金」/「日本人は株嫌い」のウソ/損得は「時間軸」で見る/必要なお金をざっくり計算してみよう)/第2部 お金を殖やす技術(「投資の達人」への3ステップ/まず「金利」を理解して味方につけよう/「守るお金」はこうして殖やす―預金・国債…/良い投資信託、悪い投資信託の見分け方/株式は「気に入った銘柄」を「長期保有」で)/「低金利」が日本をダメにする

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2011年1月14日 (金)

林總(ハヤシアツム)さんの『美容院と1000円カットでは、どちらが儲かるか?』を読んでみた

林さんの『美容院と1000円カットでは、どちらが儲かるか?
できるビジネスパーソンになるための管理会計入門!』を読んでみた

 (5つが最高)

この本は、前作の『餃子屋と高級フレンチでは、どちらが

儲かるか?』の5年後という設定のシリーズ作品。

内容は、アパレル会社の「ハンナ」で、業務の効率化の

ためにコンピュータシステムを導入するが、トラブルの

連続で現場が大混乱してしまい、「このままでは会社が

潰れてしまう」ということで、社長の由紀がふたたび

コンサルタントの安曇に助けを求めるというところから

管理会計の話が始まっている。

小説仕立ての形式なので、特に知識のない人でも

ストーリーに沿って読み進めるうちに大体のところは

分かってくる仕掛けになっているのは前作同様。

ただ、話の面白みということでは前作の方が上か。

今回は管理会計を説明するためにコンピュータ

システムのトラブルという状況設定になっているが、

このコンピュータのERPシステムがどんなものか

分からない人には、少し厳しい展開かもしれない。

前作同様、タイトルの「美容院と1000円カットでは、

どちらが儲かるか?」ということには1章しか当て

られていないので、なぜこのようなタイトルなのか

疑問だが、まあシリーズものなのでよしとする。

第3弾の『コハダは大トロより、なぜ儲かるのか?』も

出ているようなので、いずれ読んでみたい。

林さんはこのシリーズ以外にも会計の本を出している

ので、そちらも挑戦してみたくなる1冊だった。

【目次】(「BOOK」データベースより)
プロローグ 動かないコンピュータの責任は誰に?/第1章 コンピュータは、なぜゴミ製造機になってしまったのか?―経営者には情報責任がある/第2章 経営者は鳥に、虫に、魚になれ―経営者が持つべき視点と情報/第3章 パリの町はなぜ美しいのか?―実現したい目的を最初に明らかにする/第4章 すべては20対80の法則に支配される―大事なことに集中する/第5章 美容院と1,000円カットでは、どちらが儲かるか?―限界利益と固定費の関係を知る/第6章 カーナビゲータは、手放せない―リアルタイム情報を実現する経営ダッシュボード/第7章 匂いは、元から断て―仕事のやり方を改善し、ムダを省く/第8章 足がしびれたままでは、立ち上がれない―2つの予算責任/第9章 シンプルなほど美しい―必要なものだけを残し、不要なものは捨てる/終章 祝杯

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2011年1月13日 (木)

池田信夫さんの『なぜ世界は不況に陥ったのか』を読んでみた

池田信夫/池尾和人さんの『なぜ世界は不況に陥ったのか
集中講義・金融危機と経済学』を読んでみた

 (5つが最高)

この本は、慶応義塾大学経済学部教授の池尾さんと

上武大学大学院経営管理研究科教授の池田さんが

アメリカのサブプライムローン問題に端を発した金融

危機についての分析と、マクロ経済学の新しい主張の

エージェンシー問題、コーディネーションの失敗や

政策の時間整合性などの経済学的問題を論じている。

また、今回の経済危機の分析だけにとどまらず、

日本の「失われた10年」の原因分析にも言及している。

内容に関しては、その正誤も含めて実際に読んで

それぞれに判断してもらう以外にないが、

ある程度の金融知識があると対談形式の集中講義の

面白さが直に伝わってくると思う。

まあ、私のようにアメリカの中央銀行である連邦準備

制度理事会(Federal Reserve Board of Governors)を

FRBと呼ぶと思っていたくらいの人間でも話には

ついていけるので、日経を読んでいる程度でも

問題はないと思う。

ちなみにアメリカなどの英語圏では、 Federalを

略してFED(フェッド)と呼ぶそうですが、私は

連邦準備制度 (Federal reserve system)の略語が

FRSなのを、一般的にはFed(フェッド)、あるいは

The Fed(ザ・フェッド)と呼ぶのだと思っていました。

なお、参考までに全7講の各講義のポイントを

池尾さんのエグゼクティブ・サマリーから

非常に短くだが、引用させていただくと次のとおり。

第1講では、サブプライムローン問題から全般的な
信用危機へと今回の金融危機が深化し、拡大して
いったプロセスをたどります。
第2講では、1970年代末から2007年までの30
年間のアメリカを中心としたマクロ経済の動きを
10年ずつ3つのフェーズに分けて振り返ります。
第3講では、この30年あまりの間の金融ビジネス、
金融技術の展開に関して振り返るとともに、リスク
を取引するということの意義について解説します。
第4講では、理論的に金融危機の発現メカニズム
を考察します。
第5講では、金融危機と経済政策の関連をテーマ
としますが、まずは「政府の失敗」が金融危機に
つながった面があることを指摘します。
第6講では、中長期的な視点から、危機後の金融
と経済の行く末について考察します。
第7講では、日本の1990年代の経験を改めて
振り返ります。

この本を読むと池田さんと池尾さんのそれぞれの

著作をもっと読んでみたいという気持ちになる。

ただ、私には今回のこの本の対談形式が知識

レベルということでは、合っていたと思う。

経済学に興味をもつには、お奨めの1冊。

【目次】(「BOOK」データベースより)
第1講 アメリカ金融危機の深化と拡大─サブプライム問題から全般的な信用危機へ/第2講 世界的不均衡の拡大:危機の来し方1─一九八七年、一九九七年、二〇〇七年までの節目を振り返る/第3講 金融技術革新の展開:危機の来し方2─デリバティブ、証券化、M&A/第4講 金融危機の発想メカニズム─非対称情報とコーディネーションの失敗/第5講 金融危機と経済政策─「市場の暴走」と「政府の失敗」/第6講 危機後の金融と経済の行く末─中長期的な展望と課題/第7講 日本の経験とその教訓─われわれは何を知っているのか

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2011年1月12日 (水)

勝間和代さんの『ビジネス頭を創る7つのフレームワーク力』を読んでみた

勝間さんの『勝間和代のビジネス頭を創る7つのフレームワーク力
ビジネス思考法の基本と実践』を読んでみた

 (5つが最高)

この本は、期待以上の情報が得られとても参考になった。

私の知識の偏りということもあるけれど、勝間さんの本の

中で最も面白く、知的な刺激にあふれた1冊である。

この本の良い所はいくつもあるが、まず勝間さんのものの

考え方が明確にされ、それが直接的に受け手の私の頭の

整理になるという仕組みになっていること。

まず、「現実を観察する方法を構成する仮定、概念、価値、

慣行の集まり」を「フレームワーク」とし、その基礎的なもの

の考え方をまとめて、更に7つに分類している。

① 論理思考力 ② 水平思考力 ③ 視覚化力 ④ 数字力

⑤ 言語力 ⑥ 知的体力 ⑦ 偶然力のそれぞれを身に

つけるために、7つそれぞれに3つの基本テクニックと、

4つの実践方法について、勝間さんの経験をおりまぜて、

分かりやすく解説されている。

また、ブルーム博士の思考の6段階モデルが示され

知識→理解→応用→分析→統合→評価の6つが階層構造

になっているので、いかにこのプロセスを回し続けていける

かどうかが重要であると指摘されている。

これは知識を単に知っているというレベルで思考を止めない

ように、更に応用から評価まで上昇させられるクセをつけろ

ということである。

ただ、最低限の知識は必要なわけで、私のような者には

いきなり「フレームワーク」を持てと言われても、なかなか

どのように積み上げていけばよいのか、難しいところ。

そこで、今回この本では、基本的なフレームワーク21選を

カラーの図表を交えて紹介してくれている。

簡単にそれぞれの概略を示すと次のとおり。

1.空・雨・傘
 【事実→解釈→行動に分解】
2.戦略の3C
 【自社、競合、顧客を考えリソースを傾ける】
3.マーケティングの4P
 【価格、製品、チャネル、広告宣伝の施策を立てる】
4.5W+1H
 【なぜ、何を目的に、誰と、どの分野で、いつ、
 どのように行うのかをまとめる】
5.PDCAサイクル
 【計画→実行→検証→是正→再び計画】
6.採用者分布曲線
 【新製品は、イノーベーター、オピニオンリーダー、
 アーリーマジョリティ、レイトマジョリティ、ラガード
 の順に普及するので、そのときごとに戦略の重点
 を変える】
7.製品進化のトライアングル
 【製品の機能→チャネル→ブランド力】
8.CTQ(シックスシグマ)
 【品質評価上、もっとも重視される点を見極め、
 その品質を数値で測定、評価できるようにした
 うえで、どうすればより品質を高められるのか
 分析し、改善する】
9.戦略キャンバス
 【ブルー・オーシャン戦略で有名】
10.事業の優先順位づけマトリクス
 【縦軸に自社の強み、横軸に市場の魅力度】
11.バリューチェーン
 【研究→開発→調達→生産→流通→販売→
 アフターサービスを横軸、自社と競合を縦軸】
12.所得金額階級別世帯数の相対度数分布
 【縦軸に世帯所得、横軸に所得ごとの世帯数(%)】
13.人口分布曲線
 【年齢ごとの人口数からマーケットの大きさを推定】
14.Will-Skillマトリクス
 【やる気と能力の高低で4つに分類】
15.SWOTマトリクス
 【自社の強み、弱み、機会、脅威を分析】
16.影響要因
 【外部の、サプライチェーンの変化、デマンド
 チェーンの変化、技術ショック、新規参入、
 代替物の可能性をまとめる】
17.組織の7S
 【戦略、共通するミッション、構造、制度、社員、
 技術、組織風土のバランス】
18.緊急度と重要度のマトリクス
 【縦軸に重要度、横軸に緊急度】
19.PPM分析
 【縦軸に市場の成長率、横軸にマーケットシェア】
20.VRIO分析
 【経済的価値、希少性、模倣困難性、組織能力の
 観点から企業の内在価値を探る】
21.水平思考の6つの帽子
 【会議などで立場を変えて(帽子を変えて)判断
 白:事実受け入れ、赤:直感的判断、黒:批判、
 黄:楽観的意見、緑:創造的思考、青:全体を俯瞰】

とにかくこの1冊を持っておけば、いろいろなことを

自分の頭で考えられるようになる。

「ビジネス思考法の基本と実践」という副題が

とても納得のいくお得な1冊。お奨めです。

【目次】(「BOOK」データベースより)
第1章 「ビジネス思考力」を定義する!/第2章 ビジネス思考の基礎となる7+1の力/第3章 一つめの力 論理思考力/第4章 二つめの力 水平思考力/第5章 三つめの力 視覚化力/第6章 四つめの力 数字力/第7章 五つめの力 言語力/第8章 六つめの力 知的体力/第9章 七つめの力 偶然力

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2011年1月11日 (火)

勝間和代さんの『効率が10倍アップする新・知的生産術』を読んでみた

勝間さんの『効率が10倍アップする新・知的生産術
自分をグーグル化する方法』を読んでみた

 (5つが最高)

この本は、勝間さんのマーケティングのために作られた

本であることは、『読書進化論』に書かれていたので

ある程度覚悟していたとはいえ、ちょっと酷すぎる。

確かに「自分をグーグル化する方法」というキャッチーな

タイトルの付け方は魅力的だが、あまりにも他の本と

重複が多く、これを新しい商品として売るのは酷い。

特に「年収10倍アップ」シリーズの2冊とは重なる部分が

多すぎて、その2冊を読んだ人ならこの本は必要ない。

これをただ大手出版社でマーケティングを思いっきり

やったらどれだけ売れるかを知るためにのみ作った

と言ってのけるのは正直ファンへの裏切りである。

まあ、この本で初めて勝間さんを知るようになった人

にとっては、意味がある本だと思うが、私のように

何冊も勝間さんの本を読んできた者には不要である。

あえてこの本の興味をもったところを書くとするなら、

ピラミッド・ストラクチャーとMECE(ミッシー)だろうか。

ピラミッド・ストラクチャーとは情報などをピラミッド状に

分解していく手法のことであり、MECEとは「漏れなく・

重なりなく」物事を分けていく手法のことです。

あとは、色々なものが紹介されているので、

その中で気に入ったものがあれば使ってみると

効率がアップするものもあると思うので、

お金のある人は取り入れてみるのもいいだろう。

私は、本文の中で紹介されていた本のうち、気になった

本を参考文献として、今後読むリストに加えたいと思う。

【参考文献】
大野耐一 『トヨタ生産方式』 ダイヤモンド社
本田直之 『レバレッジ・リーディング』 東洋経済新報社
照屋華子ほか 『ロジカル・シンキング』 東洋経済新報社
バーバラ・ミント 『【新版】考える技術・書く技術』 ダイヤモンド社
日置弘一郎 『「出世」のメカニズム』 講談社
大橋悦夫ほか 『スピードハックス』 日本実業出版社

【目次】(「BOOK」データベースより)
はじめに 数々の資格・賞を取得した新・知的生産術を公開!/第1章 自分をグーグル化する方法/第2章 情報洪水から1%の本質を見極める技術/第3章 効率が10倍アップするインプットの技術―アナログ手法とIT機器を融合させる方法/第4章 成果が10倍になるアウトプットの技術―マッキンゼー直伝!ピラミッド・ストラクチャー&MECEの力/第5章 知的生産を根底から支える生活習慣の技術―すき間時間、体力、睡眠に投資する発想転換のススメ/第6章 自分の力が10倍アップする人脈作りの技術―情報のGive5乗の法則/最終章 今日の5つの新しい行動から明日を変える!

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2011年1月10日 (月)

ジャネット・ロウさんの『バフェットの投資原則[新版]』を読んでみた

ジャネット・ロウさんの『バフェットの投資原則 [新版]
世界no.1投資家は何を考え、いかに行動してきたか』を読んでみた

 (5つが最高)

この本は、1999年にダイヤモンド社からスピークス

シリーズの1冊として『ウォーレン・バフェット 自分を

信じるものが勝つ!』として刊行されたものの新版である。

私は旧版ですでに読んだことがあったが、

今回再び新版を見つけたので読んでみた。

内容はバフェットの言行録のような形で

投資手法から考え方、バフェットの偏食ぶりまで

様々なことが分かり、何度読んでも楽しめる。

逆に言うと、こういう投資で成功した人の本を

何度読んでも楽しいと思えるからこそ

いくら損をしても株式投資に魅力を感じてしまうのだ。

最も印象的な箇所を抜書きしてみると次のとおり。

『大学では最近、効率的市場仮説に代表される投資理論や
ベータなどの概念を教えるようになっているが、バフェットは
これらを快く思っていない。大学は抽象的な理論を重視し
すぎており、常識を軽んじているというわけだ。「もし市場が
常に効率的だったら、私は今ごろ街角で物乞いをしている
はずです」』

貯蓄から投資へというときに、ちょっと専門的な本を

手に取ると必ず出てくる概念について

真っ向から完全否定して涼しい顔をしている。

高い投資利回りを何年にもわたって出してきた

バフェットに言われてしまうと、納得せずにはいられない。

また、第3章の仕事の原則はバフェットが得意とする

株式投資にとどまらず、とても参考になる。

目次だけだが次に書き出してみる。

『楽しんでやれる仕事に就く
 スタートは早めに切る
 働きたいところで働く
 尊敬できる人と働く
 人をほめる
 パートナーに忠誠を尽くす
 自分の時間を守る
 引き際を知る』

まだ衰えを知らないバフェットの引き際を見てみたい

気持ちと、ずっと元気で勝ち続けてもらいたい気持ちと

どちらが強いかと言われれば、当然後者である。

後継者は決まっていると言われているが、

バフェットにはいつまでも、インデックスに勝ち続けて

もらって、投資手法しだいでは株式は投資対象として

悪くないということを証明してもらいたい。 

そして、願わくばバフェットの投資手法には再現性が

あるということを私自身がこの手で証明できれば、

それに勝る喜びはない。

バフェットを知るということでは最高の1冊。

【目次】(「BOOK」データベースより)
第1章 投資の原則/第2章 貢献の原則/第3章 仕事の原則/第4章 経営の原則/第5章 人生の原則/第6章 交友の原則/第7章 家庭の原則

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2011年1月 9日 (日)

マーク・ティアーさんの『バフェットとソロス勝利の投資学』を読んでみた

マーク・ティアーさんの『バフェットとソロス勝利の投資学
最強の投資家に共通する23の習慣』を読んでみた

 (5つが最高)

この本は、バフェットとソロスの投資の共通点を探し出し

最強の投資家に共通する23の習慣を明らかにしている。
(以下の23の習慣には、一部修正加筆あり)

1.元本の確保こそが常に最重要事項
2.能動的にリスクを回避する(徹底したリスク回避)
3.独自の投資哲学を持つ(市場は予測不可能なため)
4.投資を選び、自分独自の売買手法を開発する
5.分散投資なんて愚者のやることだ
6.税引き後利益で考える(配当はしない)
7.自分に理解できるものにだけ投資する
8.自分の基準に合わない投資は拒絶する
9.自分の手で調べる(アニュアルレポートなど)
10.無限の忍耐力を持つ(とにかく忍耐)
11.すぐに行動する(納得がいくなら素早く大きく動く)
12.事前に決めた手仕舞う理由が現実になるまで手放さない
13.神に従うごとく自分のシステムに従う
14.間違いを認めてすぐさま正す
15.間違いから学ぶ(誰でも間違うが必ずそこから学ぶこと)
16.修行を積む(経験を積めば積むほどリターンも高くなる)
17.自分がやっていることを人に言わない
18.任せ方を知っている(時には人に任せる)
19.稼いでもつつましい生活をする(節約は重要)
20.金が問題ではない(刺激と自己充足のため)
21.持っているものではなく、やっていることを好きになる
22.1日24時間、息をするように投資のことを考えて暮らす
23.全財産を賭ける(自分のお金も投資しているから真剣)

投資で勝てる方法を丁寧に検討しているが、

これを生身の人間がやることを考えると

実際に成功した人があまりにも少ない理由が

はっきり分かるようになっている本でもある。

やはり投資は簡単ではないということが

嫌というほど分かる構成になっている。

その証拠に、投資でやってはいけないことが

この本の冒頭には、まず紹介されている。

そして、内容的にはとてもよく出来ていて、

個人的には、バフェットが成長株投資の手法を

学んだのは、フィッシャーからではなく、

マンガーからだと思うが、グレアムの割安株投資

だけではないという指摘は間違いがない。

とにかく投資で勝利を得たい人には、お奨めの1冊。

特にソロスのリスク回避術には学ぶ点が多い。

【目次】(「BOOK」データベースより)
第1部 バフェットとソロスに学ぶ「成功する投資の習慣」(知的習慣が持つ力/投資の七つの大罪/持っているものを守れ/ソロスはリスクをとらない? ほか)/第2部 成功する習慣を身につける(基礎固め/投資目的をはっきりさせる/あなたは何を測るのか/無意識的能力を高める/思っているより簡単)

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2011年1月 8日 (土)

勝間和代さんの『勝間・藤巻に聞け!「仕事学のすすめ」』を読んでみた

勝間和代/藤巻幸夫さんの『勝間・藤巻に聞け!「仕事学のすすめ」
自分ブランドで課題克服』を読んでみた

 (5つが最高)

この本は、2009年10月に発行されているが、

読んでいちばん良かったと思ったことは

「断る力」についての理解が深まったこと。

2009年2月に出た『断る力』で疑問に思っていた

ことが、この本を読むとすっきりとする。

本の実際に作られた前後関係は分からないが、

『断る力』の出版後、勝間さんなりにリサーチし、

どのような誤解が生じているかを把握したようだ。

この本では、その誤解を解くかのように、

仕事の現場で実際に「断る力」をどのように

発揮していくかということが、とても具体的に

書かれている気がする。

私は、『断る力』という本が誤解を与えていることを

勝間さんの基本的姿勢から来るものであり、

生産性重視、効率重視(経済合理性)だけでは

仕事そのものに適用することは問題を生じなくとも

人間関係にあっては通用しないと書いた。

『断る力』の目次から拾うだけでも「断る力」には

圧倒的な効用があり、自分の揺るぎない軸を持って、

「断る力」で、自分と周囲の好循環を作るというように

とにかく「自分」が中心なのが気になった。

しかし、この本では藤巻幸夫さんの人を巻き込んで

仕事をすることの大切さと対になるようにして

「断る力」を発揮することが周囲の人のためにも

なることが強調されている。

また、頑張ることが幸せになるための唯一の条件である

と主張しているかのような勝間さんのイメージに対して

闇雲に頑張る精神論ではなく、「仕組み作り」で

頑張らなくてもできるようにしていく仕事術を伝え

これまでの主張どおり、ぶれない姿勢も好印象だった。

情報整理の基本として、「空・雨・傘」理論の紹介も、

私に欠けている点でもあるので興味深かった。

『あらゆる情報は、この「空が曇ってきた(客観的事実の
認識)」「雨が降りそうだ(事実に対する解釈)」「傘を持
っていこう(解釈に対する行動)」の3段階に整理できる』

一方、為替のトレーダーの藤巻健史さんを兄に持つ

藤巻幸夫さんについては、福助を再生した人という

知識しかなかったので、それ以前の伊勢丹時代の話や

イトーヨーカ堂衣料部の再生を心臓病のために

道半ばで諦めざるを得なくなる話などは初めて知った。

また、藤巻さんの言う「自分ブランド」の確立については

私のサラリーマン根性にはない部分で、参考になった。

『・フィロソフィー(哲学)・・・・・信念を持って行動し、
 ・ヒストリー(歴史)・・・・・自分がどのような軌跡をたどって
 なぜここにいるのか、なぜコレにこだわるのかという目的
 や使命を自覚して、
 ・ストーリー(物語)・・・・・自分の言葉で周囲の人々に語り
 かけ、人の心を巻き込みながら、より大きな仕事を実現
 していくこと』

一流のブランドの目利きというものは、応用もきいて

人脈の作り方なども行動的でぶれないものなのだと

あらためて藤巻さんの凄さを知ることが出来た。

NHKの番組を本にしただけという批判もあるのだろうが

物事を考えるときのアプローチの仕方が異なる個性的な

自分ブランドを確立している2人の組み合わせは、

仕事学を考えてみるときにとても有用であると思う。

番組を見た人も含めて、ぜひ仕事に携わる多くの人に

読んでみていただきたい1冊である。

【目次】(「BOOK」データベースより)
第1章 藤巻幸夫の仕事学─自分ブランドで人を巻き込め(自分ブランドを構築せよ/人心を巻き込め/志をつなげ)/第2章 勝間和代の仕事学─課題を克服し、小さな前進を重ねよう(自分を見つめ、問題を解決する/優先順位を見きわめる/行動は、着実に自分と社会を変える)/第3章 幸福度10倍アップ仕事学(勝間和代×藤巻幸夫 トランスレーター対談)

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2011年1月 7日 (金)

池田信夫さんの『過剰と破壊の経済学』を読んでみた

池田さんの『過剰と破壊の経済学
「ムーアの法則」で何が変わるのか?』を読んでみた

 (5つが最高)

この本は、「ムーアの法則」が成り立っている時代の

経済学というものは、ほかの時代と比較してどのような

変化をみせるものなのかということを紹介している。

ここで言う「ムーアの法則」とは、「半導体の集積度は

18カ月で2倍になる」というもので、この半世紀に

起こったイノベーションの数々が、「ムーアの法則」に

支配されたものであったことを明らかにしてくれる。

(2007年の9月時点でチップの線幅が45ナノメートル
と、線と線の間が分子5個分というところまで来たので、
あと10年か15年で限界だとムーア自身は言っている)

特に面白いのは、多くの企業がこの法則を利用して

急成長していく様と、この法則の威力を見誤って

消えていく運命をたどった企業のコントラストである。

中でも、日本の電卓メーカーであったビジコン社の話は

とても興味深かった。

ビジコン社は電卓用のチップの開発に取り組む際に、

その年当時はまだ新興企業であったインテルと

マイクロプロセッサ「4004」の開発に関する契約を結ぶ。

当初は開発費用をビジコン社がインテルに支払うことと

なっていたようだが、開発に予想以上の時間がかかった

ために、ビジコン社は経営危機に直面し、インテルから

開発費の一部を返却してもらう代わりに著作権を

わずか6万ドルで売却してしまう。

そして、ビジコン社は結局いきづまり倒産してしまう。

その後のインテルの発展は、誰でも知っていると思うが、

このことがなかったら今のインテルは、どうなっていたの

だろうかと思うと、日本にとって、とても残念な話である。

また、NHKの元職員である池田さんらしい、デジタル

放送についての分析も知らないことばかりで面白かった。

純粋に経済学の本として手に取ると、違和感を覚える

かもしれないが、私にとってはとても興味深い話が

たくさん詰まっていて、読みごたえがあった。

特に小型化と高性能化の進み方がスパイラルに

垂直統合→モジュール化→水平分業→コモディティ化

→世代交代→垂直統合→・・・・・・となっていくことは

様々な問題と示唆を含んでいると思う。

パソコンは使えるけど、どんな仕組みなのかは

まったく分からないというような人でも、

何とかついていけるのではないかと思う。

出版が2007年なので、少し古くなってしまったが

いま読んでも十分に楽しめる良書である。

【目次】(「BOOK」データベースより)
序章 ビッグ・ブラザーの死(オーウェルの予言/1984年のコマーシャル/中央集権システムの終焉)/第1章 ムーアの法則とは何か(トランジスタからICへ/ゴードン・ムーアの予言/コンピュータという万能機械)/第2章 ムーアの法則で何が変わるか(情報インフラはコモディティ化する/問題はボトルネックだ/人間がボトルネックになる/情報は個人化する/垂直統合から水平分業へ/業界の境界はなくなる/中央集権かた自律分散へ/系列関係から資本の論理へ/国際化からグローバル化へ)/第3章 ムーアの法則にどう対応すべきか(情報コスト1/100の世界を想定する/水平分業で生き残るには/ものづくりからサービスへ/産業政策から資本市場へ)/終章 孤独な世界の中で(ITは格差を拡大する/放たれた魔物)

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2011年1月 6日 (木)

ジャネット・ロウさんの『投資参謀マンガー』を読んでみた

ジャネット・ロウさんの『投資参謀マンガー
世界一の投資家バフェットを陰で支えた男』を読んでみた

 (5つが最高)

この本は、副題にもあるとおり「世界一の投資家バフェット

を陰で支えた男」として知られるチャールズ・T・マンガーの

半生を克明に紹介した本である。

その描写の手法は、マンガーについて語られたコメントと

マンガー自身のコメントを中心に物語を構成していくもので

作者は、この本を執筆するために、資料収集を含め、

3年もの歳月をついやしたということである。

そして、内容は、私の知る限りマンガーについての唯一と

言ってもいいくらい、貴重な記述の数々であり、最もしっかり

したマンガー伝となっている。

ただ、そのためにこの本だけを読むと、投資の神様のように

言われている世界一の投資家であるウォーレン・バフェット

にベンジャミン・グレアム流の割安株投資だけでは駄目で、

いかに優良株を適切な株価で買うかということの重要性を

教えたのがマンガーであり、バフェットはあまり大したこと

がないかのような錯覚さえ覚えてしまう。

たとえば、マンガーの次の発言などは印象的。

「ベン・グレアムには、本質的な盲点がありました。
高いプレミアムを支払ってでも買う価値のある企業が
あるという事実を、あまりにも軽視していたのです。」

マンガーがバフェットのパートナーであり、ブレーンで

あることはよく分かるし、マンガー自身、世界でも

屈指の持ち株会社であるバークシャー・ハサウエイ社

の副会長であり、第2位の大株主でもある。

また、自身がもともとは弁護士であったためか、法律

専門紙としてカリフォルニア州で最大発行部数を誇る

デイリー・ジャーナル社やバークシャーが80%の株を

保有する子会社のウェスコ・フィナンシャル・コーポ

レーションの代表なども務めるている。

けれど、ハーバードのロースクールを卒業した弁護士

としての活躍はほとんど語られず、マンガーが弁護士の

活動を止めてしまう1965年当時は、あまり弁護士は

儲かる仕事ではなかったようである。

「私には大家族があって、ナンシーと私は八人の子供を
養っていかなければならなかった。あの後すぐ、法律が
こんなに儲かる仕事になろうなんて、当時気づいていな
かったのさ。私が辞めた途端、法律で大金が儲けられる
時代が来たんだ。でも私は自らが判断して、自分の資金
を賭ける方が好きだった。私はいつも、クライアントより
自分の方が詳しいと思っていたから、なにも向こうのやり
方でやる必要はないでしょう。つまり、法律の仕事を辞め
たのは独断的な性格のせいでもあるし、独立願望が強
かったせいでもあるんだ」

この本は、マンガーが育った家庭環境や、離婚を経験した

ことにより8人の子供を持つことになった経緯なども詳しく

書かれている。

そして、バフェットとの関係については、再三バフェット自身

のコメントが引用されていて、二人がとても良い関係である

ことが分かる。

ただ、マンガーはお互いが似た考え方をするマイナス面に

ついても意識しているようで、次のように発言している。

「過ちが片方のフィルターを通過すると、もう片方の
フィルターも通ることになってしまう」

とにかく、マンガーは非凡なる戦術家であり、バフェットと

の幸運なる出会いによって、巨万の富を築いた男である。

そして、弁護士であるよりも投資家を選んだマンガーの

次の発言は、彼の成功の大きさを思うととても意義深い。

「投資の醍醐味は、将来についてだれよりも優れた予測を
することにあります。そのためにはどうしたらよいのか?
一つのやり方は、自分が詳しい分野に限定して予測すること。
ありとあらゆることを予測しようとするのはやりすぎです。
専門知識の欠如によって、必ず失敗することになります」

私が真似できるのは、二人のジョークのセンスくらいかも

しれないけれど、とにかく参考になる生き方ではある。

バフェット好きな方には、読んでみることをお奨めします。

【目次】(「BOOK」データベースより)
人格のたぐいまれなる組み合わせ/湖―それはマンガーを映す鏡/ネブラスカの人々/戦争を乗り越えて/人生の再スタート/マンガーが築いた最初の富/偉大なる二つの頭脳の融合/公平の精神―法律事務所の最高峰/作業部屋のような事務所でホイーラー・マンガー社を経営する/ブルーチップ・スタンプス社/シーズ・キャンデーの教訓/ベラス医師事件/バッファロー・イブニング・ニューズ/チャーリー・マンガーの貯蓄貸付組合業界との戦い/バークシャー・ハサウェイの飛躍/一九九〇年代のバークシャー―パワーの構築/ソロモン・ブラザーズ/ささやかなメディア帝国―デイリー・ジャーナル・コーポレーション/グッド・サマリタン病院を通じた社会奉仕/投資界の良心ある重鎮/収穫のとき

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2011年1月 5日 (水)

東浩紀さんの『父として考える』を読んでみた

東浩紀/宮台真司さんの『父として考える』を読んでみた

 (5つが最高)

この本は、作者の言うとおり一般の「育児本」のような

育児体験について語られた本ではない。

東さんの「まえがき」によれば、次のようになる。

『数年前に相次いで子を授かった新人類世代の社会学者と
団塊ジュニア世代の批評家が、文字どおり「父として考え」て
作った対談本、つまり、少子化やら非婚やらが話題になって
いるいま、たがいの思考や関心のちがいについて、あらため
て「父」としての立場から意見を交換した書物である。』

ここでの社会学者とは宮台真司さんのことであり、

批評家とは東浩紀さんのことであるが、この二人の

これまでの活動を知っている人には、ぬるい対談の

ように映るのかもしれないが、私には少し違った。

私はもともと吉本隆明さんの本を読むようになったことが

きっかけで、その後も現代思想や柄谷行人さんを

読み続けてきた人間であった。(今でも好きである)

それが思想や文学から離れていくきっかけになった

ひとつの出来事が、浅田彰さん以降の宮台さんや

東さんの本を読んだことであった。

はっきり言えば、浅田さんの言うことは、現代思想に

ついては感心したが、それ以外には興味が持てなかった。

宮台さんの言うことは、社会学としても賛同できなかった。

東さんの言うことは、現代思想については感心したが、

オタク談義には、まったく付いていけなかった。

ここら辺の事情は、当時から思想や社会学に興味が

あった人なら理解してくれるのではないかと思う。

そして、そのような私がこの本を興味深く読んだ理由を

東さん自身が「まえがき」の中で自覚的に記述している。

『宮台真司氏は1990年代に援交少女を擁護した社会
学者として、東浩紀はゼロ年代にオタクを擁護した批評
家として、それぞれ「父になる」こととは対極にある、
リベラルで破壊的でいわば反家庭的な価値観を
体現する言論人として記憶されているはずである。
むろん、宮台氏もぼくもそのような単純な主張を行った
つもりはない。しかし、ぼくたちふたりの活動がそのような
ものとして記憶されているのは事実であり、そしてその
事態そのものが、90年代からゼロ年代にかけての日本の
内向きの思潮を克明に反映している。
だから、ゼロ年代が終わり、10年代が始まるいま、
そのようなふたりがともに「父として」どこか失語症に
陥ってしまった、そんな対話の記録を残しておくことにも
多少の公的な意味はあるのかもしれない。』

宮台さんが援交少女を擁護したように見えたことは

私の記憶の中にもあり、宮台さんが意味するところを

私は今もって理解することができない。

しかし、この本の宮台さんの「あとがき」が、失礼な言い方

ではあるが、宮台さんが父になって成長したことを

物語っているのではないだろうか。

お二人とも東大卒だけあって、勉強はできるのであろうが、

リベラルなことを言っていれば、それなりにやっていけた

時代はもうとっくの昔に終わっているのではないだろうか。

現実は、もっと厳しく深刻な問題を数多く内包している。

コミュニケーション能力やソーシャルスキルが大切であると

いう話の展開の後の宮台さんの次の発言は象徴的である。

『最近、面白いことに気がつきました。ソーシャルスキルの
ある人間ほど単純労働を嫌がらないことなんです。(略)
時給800円から1000円の範囲内で「なんでもやります」
と言えば、仕事はいくらでもある。(略)
問題なのは、仕事がないことじゃないんです。(略)
中小企業と単純労働にまで枠を広げれば、「30社受けて
全部落ちた」なんてありえないんだということになります。』

こんなことに最近気づいた宮台さんは幸せな人である。

けれど、問題はもっと深刻なのである。

『ところが「単純労働にまで範囲に含めれば仕事はある」
という物言いに、社会学者の堀内進之介君は異論を
述べます。彼が言うには、単なるマインドセットの問題じゃ
なく、文字どおり単純労働ができない大学院生が大勢
いるんだと。決まった時間にシフトに入り、言われたことを
やり、監督者の要望を汲んで改善するということが、
できないと。』

私の働いている会社では、いまだに面接の際に履歴書に

大学院卒と書いてあると、優秀だと勘違いする人事の人が

いるので、「中小企業」に枠を広げることは有効かもしれ

ないが、教育業界にいた人間にすれば、大学院卒の

コミュニケーション能力には注意を要するのが常識である。

また、「おひとりさま志向」という問題もある。

『無頼化する女たち』の水無田気流さんや『おひとりさまの

老後』の上野千鶴子さんに対し、二人の指摘は適切である。

『東 彼らが人生の理想に掲げているのは、あらゆる共同体
からの退出可能性であり、配偶者にも家族にも友人にも
決定的に頼らずにリスクを分散する生き方なのですね。
「無頼化」とはそういう生き方の謂いなのですけど、僕は微妙
に違和感を持つんです。
というのも、たとえだれひとり助けてくれなくとも、それでも
自分ひとりで生きることができる能力を磨く。それを人生の
目的にするのは、大きく間違っていると思うからなんです。
宮台 それはまったくの勘違い。最も重要なリスクヘッジは
ひとり寂しく死ななくてすむための関係性を、二重にも
三重にも構築しておくことです。そんなことは自明すぎます。
東 けれども、若い世代の間ではそういう議論が強い。
宮台 結論ははっきりしていて、「ひとりきりになっても
経済的に困らないように独り立ちしさえすれば・・・・・・」
なんてのは、社会が経済的に順風満帆だった時代の、
単なる甘えです。甘え以前に、単なる馬鹿だと断言しても
いいでしょう。経済的に自立は大切だけど、経済的困窮に
陥ったときに支えになる人間関係があっての話でしか
ありません。』

人間関係が希薄になったということは常に言われているが

だからといって、「ひとりきり」では生きていけないのである。

東さんはこの対談の締めとして、娘ができていちばん

変わったのは、「受動的存在」に対する考え方だと言う。

『娘が育つにつれて少しずつ世界を「受け入れていく」
さまを見ると、なんというか、そういえば生きるとは
そもそも受動的なことだったはずではないか、と感慨を
新たにするのです。この感慨はおそらく、娘が大きくなり、
文字通り「主体」になり人生のリスクヘッジを考え始める
頃には消えてしまうでしょうから、僕自身が父として
忘れないために、ここで最後に話して刻んでおきたい
と思います。』

お二人の今後の活動に期待したいと思う。

【目次】(「BOOK」データベースより)
第1章 親子コミュニケーションのゆくえ─家族を考える(時間感覚の変化/宮崎アニメへの反応 ほか)/第2章 子育てを支える環境─社会を考える(ロスジェネ系議論の問題点/専業主婦願望の背景 ほか)/第3章 均質化する学校空間─教育を考える(グループワークができない子どもたち/なぜ班活動は衰退したのか ほか)/第4章 コネ階級社会の登場─民主主義を考える(運命の出会いと必然性信仰/バックドア問題 ほか)

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2011年1月 4日 (火)

東野圭吾さんの『新参者』を読んでみた

東野さんの『新参者』を読んでみた

 (5つが最高)

2009年に東野さんの『容疑者Xの献身』を読んで以来

大の東野ファンになってしまった私は、その後古本屋で

初期の頃の3作品ほどを除き全ての作品を買い集めた。

そのため、東野さんのほとんどの本が文庫本である。

しかし今回、この本を手にするきっかけは少し違っている。

普段あまりテレビを見る時間がない私ではあるが

大好きな東野さんの、それも「加賀恭一郎シリーズ」の

最新作のドラマ化ということで、録画したものを

毎回楽しみに見ていたのだが、最後の何回か分を

間違って消してしまい、結局犯人が分からずじまいに

なってしまったので、単行本を購入することになった。

話の内容については、推理小説なのでネタばれする

ような紹介の仕方をするつもりはない。

また、私は推理小説については、人様に何かを

語れるほど、多くを読んでいないので、この作品が

面白かったですよということ以外に特にない。

ただ、興味深かったことを書けば、刑事の加賀恭一郎が

日本橋に着任したばかりという設定であるために

そこに住む人々の人情と風物を上手く織り交ぜながら

少しずつ犯人に迫っていく手法はとても良かった。

江戸の匂いの残る町の片隅で発見された離婚女性の

絞殺死体を巡る家族の物語も東野さんらしくて良かった。

世間的には、探偵ガリレオシリーズの方が人気なのかも

しれないし、私もそこから東野ワールドに足を踏み入れた

のだが、どちらかと言えば加賀恭一郎シリーズの方が

推理小説の色々な楽しみ方を教えてくれるようで

私としては気に入っている。

また東野作品が読みたくなった。

【加賀恭一郎シリーズ】
『卒業』(1986年、講談社/1989年、講談社文庫)
『眠りの森』(1989年、講談社/1992年、講談社文庫)
『どちらかが彼女を殺した』(1996年、講談社ノベルス/1999年、講談社文庫)
『悪意』(1996年、双葉社/2000年、講談社ノベルス/2001年、講談社文庫)
『私が彼を殺した』(1999年、講談社ノベルス/2002年、講談社文庫)
『嘘をもうひとつだけ』(2000年、講談社/2003年、講談社文庫)
『赤い指』(2006年、講談社/2009年、講談社文庫)
『新参者』(2009年、講談社)

【目次】
第一章 煎餅屋の娘
第二章 料亭の小僧
第三章 瀬戸物屋の嫁
第四章 時計屋の犬
第五章 洋菓子屋の店員
第六章 翻訳家の友
第七章 清掃屋の社長
第八章 民芸品屋の客
第九章 日本橋の刑事

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2011年1月 3日 (月)

三木谷浩史さんの『成功の法則92ヶ条』を読んでみた

三木谷さんの『成功の法則92ヶ条』を読んでみた

 (5つが最高)

この本は、三木谷さんの成功哲学の総論であった

前作の『成功のコンセプト』の各論にあたるものである。

三木谷さん自身、ここに書かれている92ヶ条のすべて

ではなく、あなた自身の何かに響く数ヶ条だけでも

参考にしてくだされば、きっと成功への扉が開くはずと

言っているので、響いた箇所を少し引用させていただく。

『常識などという不確かなものを信じてはいけない。』

なんて三木谷さんという人は常識的な経営者なのだろうか。

常識は破るためにあるのではなく、ただ不確かなだけだ。

あっという間に買収したプロ野球の球団を優勝させたり、

いきなりTBSを合併して株式時価総額を肥大化させたり、

そういった常識破りな経営手法は必要ないのだ。

『他人が成功した理由を運のよさに帰結させる人間は、
永遠に成功を手にすることはできない。なぜなら、
どんなに大きなチャンスがあったとしても、準備の
できていない人間にはそれに手を触れることすら
できないからだ。チャンスがそこにあることさえ、
おそらくは見えないだろう。』

ITバブルの波に乗ったのは運のよさや偶然ではない。

三木谷さんと同じようなことをやるチャンスは、

ほかの企業にもあったが、きちんとした準備がなかった。

『成長こそが、人生の喜びなのだ。
生涯勉強して、自分を成長させ続けよう。
人は何かを学ぶために、この世に生まれてくるのだ。』

『直感は大切にすべきだけれど、ただ直感に頼るだけ
では継続的にビジネスを発展させていくことはできない。
直感は数値化してこそ、その真価を発揮するのだ。』

『相手の立場になって考えることは、あらゆるビジネスの
基本なのだ。』

『問題の本質を見極めずに、問題を解決することはできない。
遠回りのようだけれど、結局は物事の本質を見極める作業を
繰り返すことが、問題の本当の解決法へと辿り着く、
最善にして唯一の方法なのだ。』

『どんな意見にも耳を貸すというリーダーの態度が、組織の
風通しを良くし、メンバーひとりひとりが、自分の頭で物事を
しっかり考えるという環境を作り出してくれる。それこそが、
組織にとっては重要なことなのだ。
自分と価値観の違う人間の意見こそ、大切にしよう。』

『リーダーとは指揮官であり、教育者であり、戦略家である。』

役員の指示を伝えるだけの部長や社員の教育を私に

押し付ける部長は、個人の出世戦略には、たけている。

きれいごとを言えば、それを私に与えられたチャンスとして

自分の成長のために活かしていきたい。

『成長の努力を続けた人間と、それをしなかった人間の差は、
残酷なくらいはっきりしている。』

私と三木谷さんは、たぶん価値観が違うし、私に経営者の

視点というものはないし、今はリーダーでもないが、

三木谷さんの意見に従い、成長の努力だけは続けたい。

【目次】(「BOOK」データベースより)
第1章 10の極意/第2章 自己を鍛える/第3章 敵を知る(対人論)/第4章 組織を動かす/第5章 百戦して勝つ/第6章 世界観を育てる

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2011年1月 2日 (日)

邱永漢(キュウエイカン)さんの『起業の着眼点』を読んでみた

邱さんの『起業の着眼点』を読んでみた

 (5つが最高)

この本は、邱永漢お金儲けシリーズ全6巻の3冊目らしい。

1冊目が『お金持ちになれる人』、2冊目が『損をして覚える

株式投資』というように、脱サラを試みる人たちのためへの

アドバイスという形になっている。

私は今でこそ起業ということに興味があるが、若い頃は

まったくそんなものには興味がなく、出来ればずっと

サラリーマンでいたいタイプであった。

その昔、私が株式投資を始めたばかりのとき、邱さんの

本を見つけては、手当たりしだいに買い集め読み込んだ。

その頃は、株式評論家の北浜流一郎さんと経済評論家の

三原淳雄、邱さんの3人くらいしか株式投資に関して

まとまった著作がなく、バフェットやピーター・リンチを

紹介する翻訳本とともに楽しく読ませてもらった。

もう20年くらい昔の話で、株式手数料など今では

考えられないくらい、バカ高いものだった。

その懐かしい邱さんの起業本ということで手が伸びた。

内容は、邱さんらしく単純明快で分かりやすいが

ところどころに現実の厳しさに目を向けさせる辛口の

コメントがある、昔ながらのスタイルで楽しかった。

印象的な箇所を少し引用させてもらうと次のとおり。

『勤勉さが成功の要因の中で占めるパーセンテージは
残念ながら、そんなに大きいものではありません。』

『汗水たらして一生懸命働くよりも、お金の儲かる確率の
高い仕事を見つけることの方がずっとうまくいくことが
多いのです。』

『私に言わせれば、人のフランチャイジーをやることは
サラリーマンから足を洗って起業家になったわけでは
ありません。お金を払って他人の家来になっただけの
ことです。失敗して事業の後片づけをする時にそのことを
はっきりと認識させられる仕組みになっているのです。』

邱さんいわく、起業を成功させるには、努力することも

必要だが、それ以上に大切なポイントは、新しい

「お金の通り路」を発見することだということである。

アンテナを張って時代の流れを読む、のんびり屋だった

私にとって、非常に難しい課題である。

けれど、何もしないより、いろいろな本に接するだけでも

意識が変わり、情報が活きたものになっている。

邱さんの本を、また読みたくなった1冊である。

【目次】(「BOOK」データベースより)
第1章 サラリーをもらって金持ちにはなれない(イージーすぎる日本人の職業選び/会社人間は会社に飼い殺される ほか)/第2章 最初の一歩は資本づくり(脱サラとは働く世界を拡げること/最初の一歩は資本づくり ほか)/第3章 小さな魚が大きな魚を食い潰す(次は個性のある小さな商売の時代/デパートの一階と衣料品売場を見よ ほか)/第4章 雨の日は銀行に傘を借りるな(無理するな、手にあまる仕事に手を出すな/思い立ったらすぐやる習慣を身につけよう ほか)/第5章 周囲に反対されることをやれ(創業の土俵は大きく拡がっている/まず成熟社会のスキマの勉強から ほか)

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2011年1月 1日 (土)

高橋尚子さんの『高橋尚子のランニングパーフェクトマスター』を読んでみた

高橋さんの『高橋尚子のランニングパーフェクトマスター
Qちゃんと一緒にハッピーランニング!』を読んでみた

 (5つが最高)

今年の目標は、3つある。

①フルマラソン完走
②法律系資格の取得
③ブログの毎日の更新

2009年の10月に思い立って、マラソンを趣味にした。

この本が2010年の2月に出るまで、私は金哲彦さん

の本と小出義雄さんの『知識ゼロからのジョギング&

マラソン入門』を読んで走っていた。

そして、2010年の1月に初めてハーフマラソンに

参加し、ゴールまで辿り着くことはできたが、

途中で歩いてしまい、最後まで走りきれなかった。

続く2010年4月のフルマラソンは20キロ過ぎで

足が動かなくなり、リタイアせざるを得なかった。

周りのものは、私の太った体型を見て、無茶をすると

口々に言っていたが、私には変な自信があった。

しかし、それは自惚れでしかなかったのである。

そこで、この本とDVDを見ては、高橋さんの凄さを

身にしみて実感すると同時に、やる気をもらっている。

この本の良い所は、あの高橋さんがDVDで実演し、

懇切丁寧に指導・解説してくれるところだ。

DVDからは、高橋さんのランニングに対する情熱が

ヒシヒシと伝わってくるし、本からも楽しさが伝わる。

感覚としては、まるで金メダリストの高橋さんが、

自分の専属コーチになってくれたかのようである。

本のトレーニング写真も、DVD(76分間)も、

ほぼすべて高橋さん自身が実演しながら語りかけて

くれる作りになっていて、なんとも喜ばしい。

だからと言って、毎日、走る時間が取れるわけではない。

会社に行く前に慌てて腹筋をしたり、階段を見つけると

歩いて上ってみたりと、本当に隙間時間の練習である。

けれど、今年の目標はフルマラソンの完走なのである。

もう、書いてしまったので、やる以外にない。

この正月休みの間にもう一度、DVDを見よう。

メタボが心配されるオジサンにとっては、少しきつい

練習メニューも含まれているが、マラソンを完走したい

なら、ぜひ読んでみることをお奨めする。
(自分はまだ完走していないが、必ず完走する)

【目次】(「BOOK」データベースより)
1 ウォーミングアップ─まずは準備運動からスタート!/2 ウォーク&ラン─走るためのフォームをつくる(ウォーキング─正しい歩き方をマスターする/基礎トレーニング─効率よく走ることを覚える/ランニング─自分に合ったフォームを身につける/フォームづくりに役立つトレーニング)/3 ランニング・プログラム─実際に走ってみよう!(主なトレーニング─どんな練習方法があるの?/ビギナーズ・プログラム/ランナーズ・プログラム/マラソン・プログラム)/4 ストレッチ&補強運動─走るための身体をつくる/5 栄養&ボディケア─生活習慣でサポートする(栄養摂取の基礎知識&食事メニュー/身体をケアする/生活の中で簡単エクササイズ!/ランニンググッズ)

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