ジャネット・ロウさんの『投資参謀マンガー』を読んでみた
ジャネット・ロウさんの『投資参謀マンガー
世界一の投資家バフェットを陰で支えた男』を読んでみた
(5つが最高)
この本は、副題にもあるとおり「世界一の投資家バフェット
を陰で支えた男」として知られるチャールズ・T・マンガーの
半生を克明に紹介した本である。
その描写の手法は、マンガーについて語られたコメントと
マンガー自身のコメントを中心に物語を構成していくもので
作者は、この本を執筆するために、資料収集を含め、
3年もの歳月をついやしたということである。
そして、内容は、私の知る限りマンガーについての唯一と
言ってもいいくらい、貴重な記述の数々であり、最もしっかり
したマンガー伝となっている。
ただ、そのためにこの本だけを読むと、投資の神様のように
言われている世界一の投資家であるウォーレン・バフェット
にベンジャミン・グレアム流の割安株投資だけでは駄目で、
いかに優良株を適切な株価で買うかということの重要性を
教えたのがマンガーであり、バフェットはあまり大したこと
がないかのような錯覚さえ覚えてしまう。
たとえば、マンガーの次の発言などは印象的。
「ベン・グレアムには、本質的な盲点がありました。
高いプレミアムを支払ってでも買う価値のある企業が
あるという事実を、あまりにも軽視していたのです。」
マンガーがバフェットのパートナーであり、ブレーンで
あることはよく分かるし、マンガー自身、世界でも
屈指の持ち株会社であるバークシャー・ハサウエイ社
の副会長であり、第2位の大株主でもある。
また、自身がもともとは弁護士であったためか、法律
専門紙としてカリフォルニア州で最大発行部数を誇る
デイリー・ジャーナル社やバークシャーが80%の株を
保有する子会社のウェスコ・フィナンシャル・コーポ
レーションの代表なども務めるている。
けれど、ハーバードのロースクールを卒業した弁護士
としての活躍はほとんど語られず、マンガーが弁護士の
活動を止めてしまう1965年当時は、あまり弁護士は
儲かる仕事ではなかったようである。
「私には大家族があって、ナンシーと私は八人の子供を
養っていかなければならなかった。あの後すぐ、法律が
こんなに儲かる仕事になろうなんて、当時気づいていな
かったのさ。私が辞めた途端、法律で大金が儲けられる
時代が来たんだ。でも私は自らが判断して、自分の資金
を賭ける方が好きだった。私はいつも、クライアントより
自分の方が詳しいと思っていたから、なにも向こうのやり
方でやる必要はないでしょう。つまり、法律の仕事を辞め
たのは独断的な性格のせいでもあるし、独立願望が強
かったせいでもあるんだ」
この本は、マンガーが育った家庭環境や、離婚を経験した
ことにより8人の子供を持つことになった経緯なども詳しく
書かれている。
そして、バフェットとの関係については、再三バフェット自身
のコメントが引用されていて、二人がとても良い関係である
ことが分かる。
ただ、マンガーはお互いが似た考え方をするマイナス面に
ついても意識しているようで、次のように発言している。
「過ちが片方のフィルターを通過すると、もう片方の
フィルターも通ることになってしまう」
とにかく、マンガーは非凡なる戦術家であり、バフェットと
の幸運なる出会いによって、巨万の富を築いた男である。
そして、弁護士であるよりも投資家を選んだマンガーの
次の発言は、彼の成功の大きさを思うととても意義深い。
「投資の醍醐味は、将来についてだれよりも優れた予測を
することにあります。そのためにはどうしたらよいのか?
一つのやり方は、自分が詳しい分野に限定して予測すること。
ありとあらゆることを予測しようとするのはやりすぎです。
専門知識の欠如によって、必ず失敗することになります」
私が真似できるのは、二人のジョークのセンスくらいかも
しれないけれど、とにかく参考になる生き方ではある。
バフェット好きな方には、読んでみることをお奨めします。
【目次】(「BOOK」データベースより)
人格のたぐいまれなる組み合わせ/湖―それはマンガーを映す鏡/ネブラスカの人々/戦争を乗り越えて/人生の再スタート/マンガーが築いた最初の富/偉大なる二つの頭脳の融合/公平の精神―法律事務所の最高峰/作業部屋のような事務所でホイーラー・マンガー社を経営する/ブルーチップ・スタンプス社/シーズ・キャンデーの教訓/ベラス医師事件/バッファロー・イブニング・ニューズ/チャーリー・マンガーの貯蓄貸付組合業界との戦い/バークシャー・ハサウェイの飛躍/一九九〇年代のバークシャー―パワーの構築/ソロモン・ブラザーズ/ささやかなメディア帝国―デイリー・ジャーナル・コーポレーション/グッド・サマリタン病院を通じた社会奉仕/投資界の良心ある重鎮/収穫のとき
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