田中秀臣さんの『AKB48の経済学』を読んでみた
田中さんの『AKB48の経済学』を読んでみた
(5つが最高)
この本は、経済思想史・日本経済論の専門家であり
「リフレ派」経済学の代表的な論客でもある田中さんが
今話題のAKB48を経済学的な側面から分析している。
たとえば、AKB48の人気はデフレ不況が生み出した
ものであるとか、「おニャン子クラブ」や「モーニング娘。」
などのビジネスモデルとは何が違うかとか、芸能界と
日本型雇用システムの関係は逆転していて、アイドルは
今や終身雇用に近くなっているなど、面白い考察が並ぶ。
そして、最も面白かったのは大相撲とAKB48の比較から
日本の雇用制度や人事制度、リスク分散などを論じて
いる部分である。
ただ、全体としてはAKB48を経済学でどうとらえるか
の試みの域を出ていない感じがした。
著者は「AKB48は秋葉原というおたく文化の聖地、
デフレカルチャーの権化のような貧乏な若者たちに
ターゲットを合わせてきたわけですが、その一方で
絶えず秋葉原の外、さらに日本の外、グローバルな
市場も意識している」と書いているが、これは著者の
見方であって、AKB48の理解の仕方の1つだ。
私はAKB48が48人組みではないということも
つい最近知ったくらいで、この見方を否定する
独自の資料を持ち合わせているわけではないが、
それでもこの本の中に書かれていることからしても
疑問なしとしない点が多い。
たとえば、秋葉原を選んだ理由も、この本の中で
最初は別の場所を考えていたと書かれているし
おたくの若者たちが全て貧乏であるわけではなく
さらに言えば可処分所得ということに限れば
私のような所帯持ちよりもずっと自由になる
お金が多い人もいるはずである。
貧乏な人のデフレ下の「心の消費」というとらえ方も
可能だと思うが、メジャーになった現在では価格も
上がり、単なる消費の問題になっている気がする。
また、グローバルな市場を意識しているかどうかは
後付の感がしないでもない。
ピンク・レディーが最初から世界を意識していたという
話とは少し性質が違うような気がする。
けれど、AKB48の人気に便乗して即席で出した本と
いう感じは持たなかったし、分析としては面白い視点を
提供してくれていると思う。
AKB48のファンが読むような本ではないのだろうが、
AKB48が気になりだしてきたオジサンが読むには
ちょうどいい感じの本である。
【目次】(「BOOK」データベースより)
第1章 不況に強いビジネスモデル/第2章 デフレ不況で増殖する「心の消費」/第3章 全国的に認知された「おたく市場」/第4章 大相撲とAKB48と日本型雇用/第5章 アイドルグループの経済分析/第6章 「ローカル」か「グローバル」か/第7章 アイドル高年齢化のその後─
【送料無料】AKB4... |
| 固定リンク
「金融・経済」カテゴリの記事
- 又吉直樹さんの『オイコノミア』を読んでみた(2015.08.25)
- 池田信夫さんの『イノベーションとは何か』を読んでみた(2012.04.20)
- 森永卓郎さんの『ニュースのウラ読み経済学』を読んでみた(2012.04.18)
- 中原圭介さんの『お金の神様』を読んでみた(2012.04.15)
- 白川方明(マサアキ)さんの『現代の金融政策 理論と実際』を読んでみた(2012.06.02)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント