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2011年2月 4日 (金)

ベノワ・B・マンデルブロさんの『禁断の市場』を読んでみた

ベノワ・B・マンデルブロ/リチャード・L・ハドソンさんの
『禁断の市場 フラクタルでみるリスクとリターン』を読んでみた

 (5つが最高)

この本は、市場価格の変化がランダムウォークなどで

はなく、変動の分布も正規分布にはなっていないし、

効率的市場仮説はまったく間違っているということを

はっきりと分からせてくれる良書である。

このことは私のこれまでの投資経験からも明らかで

そもそも私のような素人までもが参加できる市場が

効率的であるはずがないのである。

情報や取引手法だって投資銀行やヘッジファンドと

比べものにならないことくらい誰にだって分かる。

ただ、正規分布より裾野がずっと長いべき分布に

市場の価格変化が近い動きをすることまでは

何となく理解できるが、その先の「マルチフラクタル・

モデル」が現実を模倣したものになるというところは

正直言ってよく分からないとしか言えない。

著者のマンデルブロさんはイェール大学数学科名誉

教授(スターリング・プロフェッサー)で、IBMトーマス・

J・ワトソン研究所名誉フェローでもあり、何と言っても

フラクタル幾何学の創設者である。

そのため「マルチフラクタル・モデル」の有用性を

主張するのは分かるが、まだこのモデルでは

上昇する可能性のある株式を選び出したり、デリバティブ

取引やオプションの評価には利用できていないという。

なので、ブラック=ショールズの公式が正規分布を

前提にしているため、明らかに間違っていると分かって

いても使われ続けているような状況である。

ただ、「マルチフラクタル・モデル」が市場の動きと近い

ことから、市場がどのように動くかということについて

予言する力は持っているということで、その5つの

ルールはとても興味深い。

1.安全な市場はない
2.トラブルは続いて起こる
3.市場には個性がある
4.チャートは人を欺く
5.市場の時間は相対的である

ここら辺のマンデルブロさんの主張にナシーム・ニコラス・

タレブさんも共感しているのではないかと思う。

ほかにも興味深い点はいくつもあるが、中でも大会社の

CFOが好んで用いているというCAPMについて、

まったく理論どおりにいかないか、悪くすると正反対の

結果が出てしまうアノマリーとして次の3つがある。

1.株価収益率(PER)効果
   正統派金融理論によれば無意味とされるが
   実際には割高で買えば利益は得にくい
2.1月の小企業効果
   毎年1月に株価が上がる傾向があり
   小企業は大企業よりもさらに顕著
3.時価簿価比率効果
   1株当たりの資産価値で株価を割った値が
   小さい割安株は時期が来れば収益が得られる

どれも面白いが、最後に禁断の金融10ヵ条。

1.市場価格とは乱高下するものである
2.市場とは、きわめてリスクが高いものである
  既存の金融理論ではけっして起こるはずのない
  リスクが現実には起こる
3.市場のタイミングはきわめて重要である
  巨額の利益と損失は短期間に集中して起こる
4.価格はしばしば不連続にジャンプする
  そして、それがリスクを高くする
5.市場での時間は、人によって進み方が違う
6.いつでもどこでも市場は同じように振るまう
7.市場は本来不確実であり、バブルは避けることが
  できない
8.市場は人をだます
9.価格の予想は無理と思え
  しかし、ボラティリティなら予測可能だ
10.市場における価値は、限定された価値である

感覚で分かることを数式を用いて証明しなければ

ならない経済学の世界、そして証明されても簡便だから

と間違った理論を使い続ける金融業界。

とても恐ろしいところでマンデルブロさんが奮闘している

様子が勇気を与えてくれる、良い本である。

【目次】(「BOOK」データベースより)
第1部 たどってきた道(リスクとリターン―金融工学は、リスクを過小評価するような都合の良い仮定に基づいて構築されている!/運を決めるのは、サイコロか、弓矢か?―金融市場における例外的な事象を確率的に正しく扱う方法/バシェリエの功績―100年前、運を逃した天才フランス人数学者によって金融市場の研究は始まった ほか)/第2部 新たな道(市場の乱流 はじめに―フラクタルの視点で見る市場 金融市場は水や空気の乱流と似ている/凸凹の研究 フラクタル入門―フラクタル幾何学の視点 市場価格変動のチャートと羊歯の葉の類似性/綿花価格のミステリー―フラクタルの概念はマンデルブロによる綿花価格の解析から生まれた ほか)/第3部 これからの道(禁断の金融10ヵ条―市場の本当の姿 フラクタルの視点からの教訓/実験室にて―フラクタルは、金融の世界をこれからどのように変えていくのか?)

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価格:2,520円(税込、送料別)

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