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2011年2月 1日 (火)

ナシーム・ニコラス・タレブさんの『まぐれ』を読んでみた

タレブさんの『まぐれ 投資家はなぜ、
運を実力と勘違いするのか』を読んでみた

 (5つが最高)

この本は、投資の成績や人生における様々なことが

実際にはどれほど「運(まぐれ)」と「実力」の区別が

難しいのかということが数学(統計学)、経済学、

歴史、哲学、心理学、生物学(進化論)などを参考に

具体例を交えて詳細に語られている。

そして、それは「まぐれ」と気付かずにいるとどれほど

ひどい目に遭うことになるかについて語るための

用意周到な前段に過ぎない。

著者のタレブさんは大学で数学(不確実論)を教える

オプションのスペシャリストでもあるが、この本を

出版したことにより、『ブラック・スワン』などを書く作家

となり、洞察の鋭さは哲学者のようでもある。

人はどうして、投資で儲かると自分の実力だと思い込み、

損をすると運が悪かったと思うのかということを20年以上

にわたるトレーダーとしての経験をもとに語るさまは

多少皮肉交じりではあるもののスッキリする。

けれど、実際に儲け続けているバフェットのような人も

いるわけで、それはどう説明するのかというとこんな感じ。

『ウォーレン・バフェットなんか能力があるわけじゃない
とは言わない。ただ、投資家をでたらめにたくさん集め
れば、ほとんど必ず誰かは、運だけでバフェット並の
成績を上げると言っているだけだ』

そして、たまたまなのにその気になる連中の特徴として

次のようなことが語られている。

『経済学的な方法にせよ統計的な方法にせよ、何かの
方法で得た信念の正確さを過大に評価している』

『自分のポジションと結婚する。下手なトレーダーは
ポジションよりも先に奥さんと離婚するということわざが
ある。いったん抱いた考えに忠節を尽くすのは、
トレーダーにとっても科学者にとっても、誰にとっても
よくないことだ』

『シナリオを変える。損をしているときは「長期的には」
などと言いつつ投資家になる。直近の運の向き方で
トレーダーになったり投資家になったりする。
トレーダーと投資家の違いは、賭けの結果が出るまで
の時間の長さと掛け金の大きさだ』

『損をしたらどうするかというゲーム・プランを
事前にちゃんと決めていない』

『自分の考えを批判的に検討することがない。
「ストップロス」を置いてスタンスを変更するなんて
ことがないのに、それが表れている』

『現実逃避。損が出ても、実際に起きたことを
はっきりと受け入れることができない』

華やかなトレーダーではないけれど私にも身に覚えのある

特徴の数々で、まったく嫌になる。

それにしても、『となりの億万長者』という本に対する

批判は、あまりにも痛烈で、いい本だと思っていただけに

結構ショックだった。

投資するために出費を抑える「蓄財優等生」という

億万長者に対して、その投資先の資産が運よく

増えた人たちでしかなく、リターンが永久に続くのでない

限り、良くないものを溜め込んでしまった人たちになって

いたかもしれないというのである。

けれど、ここまでくると運も実力のうちということでは

ないのだろうか。

それとも、全ての投資家がタレブの運用している

ヘッジファンドに投資しなければならないのだろうか。

この本は、オプションの利用の仕方については

とても上手いやり方を教えてくれていると思うが、

それ以外の投資において、どのような戦略が良いのか

その部分が欠けているような気がする。

もちろん、投資の戦略本ではないので、それで本の

価値が下がるわけではないけれど。

自分があまりにもものを知らないということを知ること、

そして、あまりにもだまされやすいということを知ること、

それだけでも充分読む価値がある貴重な1冊。

【目次】(「BOOK」データベースより)
雲に浮かんだモスク/第1部 ソロンの戒め―歪み、非対称性、帰納法(そんなに金持ちなら頭が悪いのはどうしてだ?/奇妙な会計方法/歴史を数学的に考える ほか)/第2部 タイプの前に座ったサル―生存バイアスとその他のバイアス(あるいはとなりの億万長者でいっぱいの世界/卵を焼くより売り買いするほうが簡単/敗者総取りの法則―日常の非線形性 ほか)/第3部 耳には蝋を―偶然という病とともに生きる(ギャンブラーのゲンかつぎと箱の中のハト/カルネアデス、ローマへきたる―確率論と懐疑主義/バッカスがアントニウスを見捨てる)/ソロンの言うとおり

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