ダニエル・ピンクさんの『ハイ・コンセプト』を読んでみた
ダニエル・ピンクさんの『ハイ・コンセプト
「新しいこと」を考え出す人の時代』を読んでみた
(5つが最高)
この本は、21世紀にまともな給料をもらって、良い生活を
しようと思った時に何が必要か、何をしなければならない
かということについて書こうとしている。
そして、「情報化の時代」から、創意や共感や総括的
展望を持つことによって社会や経済が築かれていく
時代、すなわち「コンセプトの時代」になるということ
を前提に右脳思考の重要性を解説している。
また、作者は新しい時代を動かしていく力は、
これまでとは違った新しい思考やアプローチであり、
そこでは「ハイ・コンセプト」や「ハイ・タッチ」が
重要になるとしている。
では、「ハイ・コンセプト」とは何かと言えば、パターンや
チャンスを見出す能力、芸術的で感情面に訴える美を
生み出す能力、人を納得させる話のできる能力、
一見ばらばらな概念を組み合わせて何か新しい構想や
概念を生み出す能力、などのことである。
また、「ハイ・タッチ」とは何かと言えば、他人と共感する
能力、人間関係の機微を感じ取る能力、自らに喜びを
見出し、他の人々が喜びを見つける手助けをする能力、
そしてごく日常的な出来事についてもその目的や
意義を追求する能力などである。
これらは右脳的な特質であり、今後は「新しい全体思考」
が必要とされるとしている。
しかし、このことは本当のことだろうか。
これからは「機能」よりも「デザイン」が重要と言って
しまうと、なんだか一見正しい認識のようにも思えるが、
現実を上手く説明しているようには思えない。
なぜなら、現実には格差社会の進行が早すぎ、
下流に流された人が多く、「デザイン」にまでお金を
払える人は小数になってしまったように思えるからだ。
21世紀にまともな給料をもらって、良い生活をする
ためには、「途上国に出来ることを避け」、
「コンピュータやロボットに出来ることを避け」、
「反復性のあることも避ける」必要があるというが、
ほとんどの人がその努力にもかかわらず避けきれずに
低賃金に甘んじる結果となっているのが現実である。
しかし、良く考えてみて欲しい、私たちが上記の3つ
の事を避けることなど、もともと不可能だったの
ではないだろうか。
豊かさに対してハングリーな途上国の努力は
私たち日本人が欧米に追いつけ追い越せで
やってきたことと何ら変わることがないし、
コンピュータやロボットより正確に仕事をこなすことも
出来るわけがない。
ましてや人間は本来が反復性を生きる生き物であって
毎日新しいことを創造していると考えること自体が
明らかな誤りである。
このことは、逆に高い賃金をもらえるようになった
金融機関の人間などを見るとよりいっそうはっきりする。
彼らは途上国からアメリカに流入してきた移民に
サブプライムローンを売り、コンピュータによる間違った
計算を続け、バブル崩壊による金融危機という歴史を
反復したにすぎない。
ではこの本は間違っているのかというと、そうではない。
多くの人がこの本を左脳より右脳が重要と言っていると
認識しているのかもしれないが、そこは注意深く
読まなければならない。
特徴的なのは、「六つの感性」が道をひらくという記述。
「機能」だけでなく「デザイン」/「議論」よりは「物語」/
「個別」よりも「全体の調和」/「論理」ではなく「共感」/
「まじめ」だけでなく「遊び心」/「モノ」よりも「生きがい」
「機能」よりも「デザイン」ではなく、「機能」だけでなく
「デザイン」と言っているのである。
ここを読み誤ると単なる右脳優位論になってしまう。
作者ははっきりと「ハイ・コンセプト」は右脳的な特質で
あるが、今後大切なのは「新しい全体思考」であると
書いている。
最後に、これから成功する可能性大の3タイプ。
①「境界」を自分で超えていく人
マルチな才能を発揮する人
②何か「発明」できる人
既存のアイデアを新しいやり方で組み立て直す人
③巧みな「比喩」が作れる人
他者と共感できる比喩的想像力のある人
どれもかなり難しいが、格差社会を生き抜くためには
簡単な道などないということを知るべきである。
【目次】(「BOOK」データベースより)
第1部 「ハイ・コンセプト(新しいことを考え出す人)」の時代(なぜ、「右脳タイプ」が成功を約束されるのか/これからのビジネスマンを脅かす「3つの危機」/右脳が主役の「ハイ・コンセプト/ハイ・タッチ」時代へ)/第2部 この「六つの感性」があなたの道をひらく(「機能」だけでなく「デザイン」/「議論」よりは「物語」/「個別」よりも「全体の調和」/「論理」ではなく「共感」/「まじめ」だけでなく「遊び心」/「モノ」よりも「生きがい」)
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