« 本田直之さんの『レバレッジ・シンキング』を読んでみた | トップページ | デイヴィッド・サルツブルグさんの『統計学を拓いた異才たち』を読んでみた »

2011年3月 8日 (火)

城繁幸さんの『内側から見た富士通 「成果主義」の崩壊』を読んでみた

城さんの『内側から見た富士通
「成果主義」の崩壊』を読んでみた

 (5つが最高)

この本は、『若者はなぜ3年で辞めるのか?』などで

有名な城さんの最初の著作であり、原点でもある。

東大法学部を卒業後、富士通に入社した城さんが

人事部門で何を見たのか、何を感じたのかが

とても良く伝わってくると同時に、現在では多くの

会社で導入されている成果主義の問題点を

鋭く指摘していて、とても興味深い。

特に私が今いる会社での導入事例と比較して読むと

何となく感じていた成果報酬制度の負の部分が

はっきりと捉えることが出来てとても良かった。

まず、成果主義と言っても「評価」の割り当ては

最初から決まっているという問題点は、報酬の原資が

限られていることからすると仕方がないようにも感じるが

事前に人事部によって分布比率が決められていては

社員が「やる気」を失うのも当然だろう。

そして、成果主義の最大の欠陥として挙げられている

「降格制度」がなかったという問題は、大企業においては

深刻な問題なのかもしれないが、中小企業では

「降格制度」がなくても簡単にリストラされてしまうので

その点は少し分かりづらかった。

また、この本の中で何度も出てくる公平さの確保だが

これはどのような評価制度を採用していても

とても難しい問題であると思う。

ただ、管理職の目標を公表することには賛成である。

私の会社でも公表されていないため、一般社員が

厳しい評価にさらされていることと比較して、

けっして悪い評価はされていないことが漏れ伝わって

くるたびに不信感が増大し、出来ることだけを目標に

掲げているのではないかという思いが強くなる。

もっと言えば私が努力して達成した目標に対し、

上司の目標は達成したと評価されても、私の評価は

低いままということも十分にありえるのである。

また、私はこの本を読むまであまり矛盾に気づいて

いなかった点は、「成果主義」と「社内等級制度」に

ついてである。

言われてみれば確かに年齢に応じて決められている

枠が存在しているならどれだけ成果を挙げても

まったく意味がないということになってしまう。

中小企業では年齢の枠はすでに緩んでいるが

大企業ではまだかなり残っているのかもしれない。

この本に描かれている富士通の姿は、とても

日本を代表するリーディングカンパニーの姿には

見えないが、最も驚いた点は組合が第二人事部と

化している点だろうか。

私は組合があるほど大きな会社に勤めたことがない

ので分からないが、こんな組合が存在している意味が

あるとは思えなかった。

最後に城さんの改善案についても書いておく。

第1は、目標管理制度を廃止する。

これは従業員の評価基準を「成果」に求めるものである。

第2は、評価者を減らし、公正評価委員会を作る。

第3は、管理職を降格し、評価担当管理職を設置する。

しかし、公正な評価者を選ぶのは相当に難しい。

第4は、管理職昇進以外のキャリアパスを設置する。

第5は、裁量労働制以外の勤務制度を廃止する。

第6は、360度評価を導入し、評価を公開する。

総じて現在の管理職に厳しい内容のように思える。

しかし、これをやらないと企業が成り立たない

ところまで、もう来ているのかもしれないと、

この本を読むと考えさせられる。

何となく成果主義に疑問を抱いている人は

ぜひこの本を読んでみていただきたい。

たとえ人事担当でなくても、得るところは必ずある。

【目次】(「BOOK」データベースより)
1 急降下した業績/2 社員はこうして「やる気」を失った/3 社内総無責任体制/4 「成果主義」と企業文化/5 人事部の暗部/6 日本型「成果主義」の確立へ

|

« 本田直之さんの『レバレッジ・シンキング』を読んでみた | トップページ | デイヴィッド・サルツブルグさんの『統計学を拓いた異才たち』を読んでみた »

自己啓発」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 城繁幸さんの『内側から見た富士通 「成果主義」の崩壊』を読んでみた:

« 本田直之さんの『レバレッジ・シンキング』を読んでみた | トップページ | デイヴィッド・サルツブルグさんの『統計学を拓いた異才たち』を読んでみた »