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2011年3月27日 (日)

マッテオ・モッテルリーニさんの『世界は感情で動く』を読んでみた

モッテルリーニさんの『世界は感情で動く』を読んでみた

 (5つが最高)

この本は、サブタイトルに「行動経済学からみる脳の

トラップ」とあるように、いかに人間は間違った判断を

繰り返してしまうのかということを学ばせてくれる。

そして、前作の『経済は感情で動く』と同様に

いくつもの問いに答える形で行動経済学について

学ばせてくれるスタイルはそのままに、

コラムによる用語解説や紹介されるエピソードは

前作よりも充実している気がする。

たとえば、「ヒューリスティクス」の解説の一部は

『人が意思決定をしたり、判断を下したりするときに、
厳密な論理で一歩一歩答えに迫るアルゴリズムとは
別に、「直感」ですばやく結論を出す方法をいう。
アルキメデスが「アルキメデスの原理」を発見したとき
に「ヘウレーカ(EYPHKA)」と叫んだことに語源がある
とされる。』

また、「フレーミング効果」の解説の一部は

『絵の額縁を「フレーム」というが、フレームが立派だと
その絵の価値も高いと思ってしまうように、人がある
選択をするとき、その絶対的評価ではなく、自分の
基準に当てはめて別の判断をしてしまう可能性が
あることをいう。』

など、分かりやすく知識を補充してくれる。

今回、最も印象に残ったエピソードは次のもの。

『近世ヨーロッパで、魔女として訴えられた女性の罪を
確定するための「間違いない」方法は、冷水につける
というものだった。女性は手足をまとめてロープで
縛られる。それから川や沼や運河の水に沈められる。
もし助かれば「有罪」の証拠となる。悪魔が愛弟子を
救ったからには、魔女にちがいないからである。
その反対に水底に沈んでしまえば、「無罪」が証明され
たということだ。
 「冷水の審判」をひとことで言えば、「表が出たら私の
勝ち、裏が出たらあなたの負け」(どちらにしろ、裁く側
の勝利)ということになる。こんな賭けを誰がする気に
なれようか。知っていてする人など一人もいない。
しかし日々の暮らしとなると、事情はこれとは違うようで
ある。』

人が合理的な判断が出来なくなる場面というのは

実に多く存在するのであり、経済的に合理的な判断を

全ての人が行うことを前提にしている従来の経済学は

やはりどこか間違った人間観の上に構築されていると

言わざるをえないのではないだろうか。

行動経済学については、すでにいくつか読んできている

ので、ほかの本にも載っていたような類似のものもあるが

「集団のなかでの困った判断」については特に面白い。

今回も、とても参考になる良書であり、行動経済学に

興味のある人には絶対にはずせない1冊である。

【目次】(「BOOK」データベースより)
1 まずは心の準備体操(予言どおりに銀行は倒産した-予言の自己成就/つらい検査が快適になる方法-ピーク・エンドの法則 ほか)/2 あまりに人間的な脳(表が出たら私の勝ち、裏が出たらあなたの負け-基準値の誤り/「ホットハンド」の持ち主を探せ!-大数の法則 ほか)/3 集団のなかでの困った判断(他人には辛く、自分には甘い-帰属のエラー/うぬぼれ屋の言い訳-自己奉仕的バイアス ほか)/4 いざ、決断のとき(ダイエットは明日からはじめよう-プランニングの誤り/リターンを考えすぎる人、リスクを考えすぎる人-欲深と尻すぼみ ほか)

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