辛坊治郎さんの『日本経済の不都合な真実』を読んでみた
辛坊治郎/辛坊正記さんの『日本経済の不都合な真実
生き残り7つの提言』を読んでみた
(5つが最高)
この本は、テレビでお馴染みの辛坊治郎さんと
そのお兄さんの共著の『日本経済の真実』に続く
第2弾ということで期待どおりの面白さだった。
とても軽やかな語り口は前作のまま、普通の
ビジネス書には見られないような表現も健在だ。
ただ、前作に対する批判を意識して、より分かり
やすく、根拠を示した上で論を展開している。
前作が第1章で「日本経済入門」という形をとり
考え方を整理してくれた後で、第2章で「歴史」
を扱うというように日本経済の全体を扱っていた
のに対し、今回はデフレの状況下で積みあがった
「日本国債」に焦点を当てて日本経済を論じている。
特に分かりやすかったのは、著名人が展開する
3つの暴論に対する辛坊さんの批判の部分。
「日本政府は赤字だが、日本国は黒字だから大丈夫」
これに対しては、民間の「対外債権」は政府に何の
権利もないので増税などが上手くいかないなら
大丈夫とは言えないと明確に否定。
「政府紙幣を発行すれば万事解決」
これに対しては、財政は一定の制度的な歯止めが
必要であり、デフレより怖いインフレを招くので、
まったく話にならないと明確に否定。
しかも、政治家の務めは、どのくらい税金が必要か、
それを説明することであり、国民も自ら価値を作り
出すことなく、国に施しを求めるべきではないと
政府紙幣という発想自体、日本の政治と国民の劣化
の象徴であると、バッサリ切っている。
「国債発行は子や孫への負担の先送りではない」
これに対しては、国債を相続した子や孫からだけ
増税して償還資金を調達するなら数学的思考としては
間違いではないが、相続を受けていない人も全て
増税の対象となるので、国民一人ひとりの生活レベル
では「トンデモ理論」だと、これまた厳しい。
では、どうやって財政を健全化し、社会保障やインフラを
整備するための財源を安定的に確保するかということに
なるが、これには7つの提言が用意されている。
①供給サイドを強くせよ
②法人税を抜本的に引き下げよ
③日本的雇用慣行を根本から変えよ
④内需重視!の掛け声に騙されるな
⑤FTAを推進せよ
⑥規制緩和を強力に進めよ
⑦不透明な日本流規制をやめさせよ
理論としては、7つとも良く分かるが、実現するための
実際の手順となると、かなり厳しいものとなる気がする。
自分で色々なことを調べてみたくなる良書。
できれば第3弾もお願いしたいところである。
第1章 日本国債はなぜ暴落しないのか
1.日本の低金利の根本原因
2.日本政府の財政状態を知る ほか
第2章 君には破綻の足音が聞こえないか
1.破綻は突然にやって来る
2.このまま無事に続くわけがない ほか
第3章 20世紀の二大経済学者に学ぶ不況の原因と対策
1.ケインズ&シュンペーター先生登場
2.需要不足って何だ? ほか
第4章 日本を強くする7つの提言
1.供給サイドを強くせよ
2.法人税を抜本的に引き下げよ ほか
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