マーカス・バッキンガムさんの『まず、ルールを破れ』を読んでみた
マーカス・バッキンガム/カート・コフマンさんの
『まず、ルールを破れ すぐれたマネジャーはここが違う』
を読んでみた
(5つが最高)
この本は、アメリカの8万人のマネジャーと100万人の
従業員のインタビュー調査から導き出された世界中の
傑出したマネジャーに共通する常識破りの考え方に
ついて書かれている。
しかし、正直言って私はこのように私の考えから大きく
かけ離れた主張をする本を素直に読み進めることに
激しい抵抗感を感じた。
このブログを再開するに当たって、なるべく幅広く
ビジネス本を読んで、いろいろな考え方があることを
知ろうという目標を掲げたのだが、この本に対しては
とにかく批判的な読み方しかできなかった。
まず、並外れて優秀なマネジャーには共通点があり
それは伝統的常識であるはずのルールをことごとく
打ち破っていることだと書かれている。
では、どんなルールを打ち破っているのかというと、
人は自ら決心したことなら間違いなく実行できる
などという常識を信じることはない。
また、弱点を克服しようとしている人に力を貸そう
という気持ちもない。
一貫して黄金律(「己の欲するところ人にもこれを
施せ」)を無視し続けている。
しかも、周りの人間に対するひいきさえいとわない。
これが優れたマネジャー像だというのである。
これは本当のことだろうか。
少なくとも私はこんな人の下では働きたくない。
ではなぜ、こんな間違った調査結果が出てくるかと
言えば、理由は簡単である。
自分の部下の才能を仕事の成果として開花させるのに
秀でたマネジャーを分析の対象としたからである。
これだと因果関係が分からないままになり、たとえば
本当は才能のある従業員のいるところに、たまたま
弱点の克服をさせることを試みないマネジャーが
やって来て、ひいきをして周囲の顰蹙を買っていても
まるで分からないままになってしまう。
また、人はそんなに変わりようがないということを
大前提に話を進めているが、人はなかなか変われない
ものであるが、それを変えようと努力しないマネジャーを
日本の従業員は受け入れないのは確実である。
実際には弱点はなかなか克服できないものだが
それを放置するようではマネジャーは務まらない。
さらに、優れたマネジャ-だけが知っていることとして
次のようなカギ(基準)をあげているが、いかがなものか。
経験や知識、意志の強さではなく「才能で人を選ぶ」
適切な手順を定義するのではなく「成果を定義する」
弱点を克服するように手助けをせず「強みを活かす」
昇進を後押しせず「強みが活きる場所を探す」
1つずつ反論するのもバカバカしいが、人の才能なんて
簡単には見抜けないし、そもそも中小企業に才能のある
人がそんなにたくさん入ってくるとも思えない。
もちろん人間誰にでも何かしらの才能があり、優れた
マネジャーであればそれを見抜けるということはある。
また、成果主義の弊害は語られて久しい。
適切な手順と適切な成果の両方の定義が必要である。
さらに、強みを活かすといえば聞こえはいいが、
組織の中で各自が強みのみ主張し、弱点を放置すれば
組織自体が立ち行かなくなるのは目に見えている。
英語の得意な従業員が権利ばかり主張して、周囲と
上手くいっていないような会社は意外に多いのである。
最後の昇進の後押しをしないのは、才能ある従業員を
昇進させて他部署に行かれたり、自分のライバルに
でもなったら困るからというところだろうか。
とにかくこの本を読んだマネジャーが自分の教育の
スキルがないことを棚に上げて、従業員の賃金を
カットしたり、クビにすることがないことを願いたい。
そして、この本の中にもうなずけることは書いてある。
たとえば、「従業員の立場から見ると、企業を衰退
させるのはマネジャーだ、という結論が引き出せる」
などは当然の結論である。
【目次】(「BOOK」データベースより)
第1章 マネジャーにとって最も大切な物差し/第2章 すぐれたマネジャーだけが知っていること/第3章 第一のカギ-才能に恵まれた人材を選び出す/第4章 第二のカギ-目標とする成果をはっきりと示す/第5章 第三のカギ-部下の強みを徹底的に活かす/第6章 第四のカギ-部下の強みが活きる場所を探り当てる/第7章 四つのカギを使いこなすための実践ガイド/フォースを束ねよ/参考資料(ギャラップが描く企業業績向上の道筋-企業価値を持続的に上昇させるには/すぐれたマネジャーの発言集-第2章で紹介した三つの質問に、すぐれたマネジャーはどう答えたか ほか)
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