« 辛坊治郎さんの『日本の恐ろしい真実』を読んでみた | トップページ | 野口智雄さんの『一冊でわかる!マーケティング』を読んでみた »

2011年5月21日 (土)

ダニエル・ピンクさんの『モチベーション3.0』を読んでみた

ダニエル・ピンクさんの『モチベーション3.0
持続する「やる気!」をいかに引き出すか』を読んでみた

 (5つが最高)

この本は、人間の「やる気!」について、現在広く一般に

語られていることには重大な間違いがあるのではないか

ということを丁寧に解説してくれている。

そして、それをコンピューター同様に社会にも人を動かす

ための基本ソフト(OS)があるとして、モチベーションの

バージョンの違いで分かりやすく表してくれている。

〈モチベーション1・0〉…生存(サバイバル)を目的と
 していた人類最初のOS 。
〈モチベーション2・0〉…アメとムチ=信賞必罰に基づく
 与えられた動機づけによるOS。ルーチンワーク中心の
 時代には有効だったが、21世紀には機能不全に陥る。
〈モチベーション3・0〉…自分の内面から湧き出る
 「やる気!=ドライブ!」に基づくOS。活気ある社会や
 組織をつくるための新しい「やる気!」の基本形。

私たちは、人間の可能性や個人の成果について、実は

時代遅れで検証されていない、まったく科学的ではない

俗信に根ざした仮定に基づき運営してきたということを

この本を読むと、とても納得させられる。

確かに目先の報酬に釣られて動く人間はいる。

しかし、それではどうしてこれほどまでに成果主義に

基づく給与体系は機能せず、悪影響を撒き散らして

いるのだろうか。

ダニエル・ピンクはこのアメとムチの成果報酬性の

欠点を次の7つにまとめている。

アメとムチの致命的な7つの欠陥
1.内発的動機づけを失わせる
2.かえって成果が上がらなくなる
3.創造性を蝕む
4.好ましい言動への意欲を失わせる
5.ごまかしや近道、倫理に反する行動を助長する
6.依存性がある
7.短絡的思考を助長する

これに対し、内発的動機づけの3つの構成要素として

次の3つを挙げている。

1.自律性(オートノミー)
 次の4つのTについて自律性を得たときに満足する。
 課題(Task)、時間(Time)、手法(Technique)、
 チーム(Team)
2.熟達(マスタリー)
 何か価値あることを上達させたいという欲求。
 これこそが、問題に対する積極的関与を求め、
 熟達を可能にする。
3.目的
 人生の意義こそが問われる時代。
 利益を否定しないが「目的の最大化」を同じくらい
 重要視する。
 目標・言葉・指針という組織における3つの領域で
 目的という新しい動機の兆候を見て取ることができる。

そして、マスタリーに近づくためには次に挙げる5つの

ステップを10年にわたって何度も何度も繰り返し実践

するしかないという。

1.意図的な訓練には、実力を挙げるという1つの
 目的しかない
2.とにかく反復する
3.批判的なフィードバックを絶えず求める
4.改善すべき点に厳しく焦点を合わせる
5.訓練の過程の精神的、肉体的疲労を覚悟する

特徴的なのは、上達しようと意識して毎回全力を

注ぐだけではなく、弱点の克服に取り組むことである。

これは成功本の中でも、長所を伸ばせというものと

意見が分かれるところである。

どちらが正しいということは、正直分からないが、

どちらかに成功した人が、成功者とされている。

しかし、私がこれからの10年を考えるとき、

自分自身だけでなく、子供にも何か好きなことを

見つけて、その道のマスタリーに近づいて

もらいたいと思う。

そのためのアイデアもこの本には用意されている。

1.お小遣いと家事の手伝いを結び付けない
2.正しい方法で褒める
 ・頭がよいと褒めるのではなく、努力や
  取り組み方を褒める
 ・具体的に褒める
 ・人前で褒めない
 ・きちんとした理由があるときだけ褒める
3.大局的な見地を与える
 ・どうしてこの勉強をしているのか?
  自分が生きている現代世界に、
  これはどのように関連しているのだろうか?
  という問に、子供が必ず答えられるようにする
4.生徒を先生に変える
 ・内容をしっかり把握したか確認するために
  他人にそれを教えさせてみる

この本のいいところは、とにかく自発的に

何かに取り組んでみたくなる「やる気」を

引き出してくれること。

たいした報酬も与えられず、成果ばかり求められる

仕事に疲れている人にこそ、読んでもらいたい。

会社を変えることは難しくても、自分を変えることは

自分だけでできるのだから。

【必読の15冊】(そのうち邦訳のあるもののみ)
『究極の鍛錬 天才はこうしてつくられる』 ジョセフ・コルヴァン サンマーク出版
『フロー体験』 ミハイ・チクセントミハイ 世界思想社
『人を伸ばす力』 エドワード・L・デシ、リチャード・フラスト 新曜社
『「やればできる!」の研究』 キャロル・S・ドゥエック 草思社
『天才!』 マルコム・グラッドウェル 講談社
『栄光と狂気』 ディヴィッド・ハルバースタム TBSブリタニカ
『報酬主義をこえて』 アルフィ・コーン 法政大学出版局
『やりとげる力』 スティーブン・プレスフィールド 筑摩書房
『セムラーイズム』 リカルド・セムラー ソフトバンククリエイティブ
『最強組織の法則』 ピーター・M・センゲ 徳間書店

【参考図書】
『楽しみの社会学』 ミハイ・チクセントミハイ 新思索社
『軌跡の経営』 リカルド・セムラー 総合法令出版
『企業の人間的側面』 ダグラス・マグレガー 産能大学出版部
『ドラッカー365の金言』 ピーター・F・ドラッカー ダイヤモンド社
『経営の未来』 ゲイリー・ハメル、ビル・ブリーン 日本経済新聞出版社
『コア・コンピタンス経営』 ゲイリー・ハメル 日経ビジネス人文庫
『幸福の政治経済学』 ブルーノ・S・フライ、アロイス・スタッツァー ダイヤモンド社
『世界でひとつだけの幸せ』 マーティン・セリグマン アスペクト 

【目次】(「BOOK」データベースより)
第1部 新しいオペレーティング・システム(“モチベーション2・0”の盛衰/アメとムチが(たいてい)うまくいかない7つの理由/アメとムチがうまくいく特殊な状況 ほか)/第2部 “モチベーション3・0”3つの要素(自律性/マスタリー(熟達)/目的)/第3部 タイプ1のツールキット(個人用ツールキット-モチベーションを目覚めさせる9つの戦略/組織用ツールキット-会社、職場、グループ能力を向上させる9つの方法/報酬の禅的技法-タイプ1式の報酬 ほか)

【送料無料】モチベー...

【送料無料】モチベー...
価格:1,890円(税込、送料別)

|

« 辛坊治郎さんの『日本の恐ろしい真実』を読んでみた | トップページ | 野口智雄さんの『一冊でわかる!マーケティング』を読んでみた »

自己啓発」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: ダニエル・ピンクさんの『モチベーション3.0』を読んでみた:

« 辛坊治郎さんの『日本の恐ろしい真実』を読んでみた | トップページ | 野口智雄さんの『一冊でわかる!マーケティング』を読んでみた »