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2011年5月 6日 (金)

ナシーム・ニコラス・タレブさんの『強さと脆さ』を読んでみた

タレブさんの『強さと脆さ
ブラック・スワンにどう備えるか』を読んでみた

 (5つが最高)

この本は、前作の『ブラック・スワン』の改訂版に新たに

追加された長大なあとがき的エッセイを、独立で翻訳し

たもので、前作を読んでない人にはツマラナイだろう。

どちらかといえばタレブさんのファン向きである。

まず、タレブさんの言う「ブラック・スワン」には3つの

特徴があることを理解していないといけない。

①予測できないこと
②非常に強いインパクトをもたらすこと
③いったん起きてしまうと、いかにもそれらしい説明が
 なされ、実際よりも偶然には見えなくなったり、最初
 からわかっていたような気にさせられたりすること

このことを理解したら、後はタレブさんが歴史、哲学、

心理学、経済学、数学の世界を自由自在に駆け巡る

のをただ楽しんでついて行けばよい。

しかし、この本が、とても読みにくい本であることは

事前に覚悟しておくべきだ。

そして、私が今回一番気に入ったところは次のとおり。

『人間の思想の歴史につきまとう頭の痛い問題は、
懐疑主義と、信じてだまされる道という両極端の、
どのあたりに立ち位置を置くか、つまりどう信じて
どう信じないかを決めなければならないことである。
また、そういう信念にもとづいてどう意思決定するか
も問題である。信念を持つだけで意思決定をしな
ければ無意味だからだ。だから、これは認識論の
(つまり何が本当で何が間違いかを考える)問題で
はない。むしろ、決め、行動し、続ける、そういう
問題である。』

金融工学のモデルは明らかに間違っている。

そんなものを信じたら、1回のブラック・スワンで

全てを失ってしまうことは明らかだ。

しかしながら、人間は懐疑主義のみによっては

当然ながら生きられない。

私たちは何を信じればよいのか、そして、どう行動しな

ければならないのか、ということが突きつけられている。

最後に、黒い白鳥に強い社会の原則10か条。

①壊れやすいものなら、早く、まだ小さいうちに
 壊れたほうがいい
 【つぶせなくなるほど大きな金融機関は要らない】
②損失を社会化し、利益を私有化してはいけない
 【救済すべきものは国有化すべき】
③目隠しをしてスクールバスを運転していた
 (そして事故を起こした)連中は、二度とバスを
 運転させてはいけない
 【経済学界の大物たちは正当性を失った】
④「成功」報酬をもらえる人に原子力発電所を
 経営させてはいけない。金融リスクの管理もダメだ
 【安全装置を省略し節約したお金を利益とはしない】
⑤複雑なことは単純なことで中和する
 【生活の複雑性を金融商品の単純化で中和する】
⑥子供にダイナマイトを渡してはいけない。
 注意書きが張ってあってもダメだ
 【複雑な金融商品は禁止しないといけない】
⑦信頼に支えられる仕組みなんてネズミ講だけだ。
 政府に「信頼を取り戻す」なんてことをさせて
 やらないといけないいわれはない
 【政府では噂は止められない】
⑧ヤク中が禁断症状に苦しんでいても、
 麻薬を与えてはいけない
 【過大なレバレッジの問題にレバレッジを使うな】
⑨市井の人たちは金融資産を価値の保蔵手段として
 使うべきでない。また、あてにならない「専門家」の
 アドバイスに老後の生活を託してはいけない
 【経済的生活を脱金融化しないといけない】
⑩オムレツは割れた卵でつくる
 【私たちがシステムをつくり変えるべき】

タレブ節を堪能したい方にはオススメの1冊である。

【目次】(「BOOK」データベースより)
1 母なる自然に学ぶ-もっとも古い教え、もっとも賢い教え/2 なんで散歩するか、あるいはシステムはどうやって脆くなるか/3 マルガリータース・アンテ・ポルコース/4 アスペルガーと存在論的黒い白鳥/5 現代哲学の歴史における(たぶん)一番役に立つ問題/6 第四象限/7 第四象限をどうするか/8 黒い白鳥に強い社会の原則一〇箇条/9 汝の運命を愛せ

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