« ハロルド・ジェニーンさんの『プロフェッショナルマネジャー』を読んでみた | トップページ | 渋井真帆さんの『何をやってもダメだった私が、教わったこと。気づいたこと。実行したこと。』を読んでみた »

2011年7月 1日 (金)

ピーター・F・ドラッカーさんの『ネクスト・ソサエティ』を読んでみた

ドラッカーさんの『ネクスト・ソサエティ』を読んでみた

 (5つが最高)

この本は、世界の流れの中で読むと「歴史が見たこと

のない未来」を描き出しているのかもしれないが、

日本に関する記述に限って言えば、これまでの歴史を

再度繰り返すだけの未来を描いているように思える。

まず、「ネクスト・ソサエティ」では、知識が資源となり、

知識労働者が中核の働き手となる。

そして、『知識労働者にとっても、報酬は大事である。

報酬の不満は意欲をそぐ。しかし意欲の源泉は、

金以外のところにある。知識労働者のマネジメントは、

彼らが組織を必要とする以上に、組織が彼らを必要

とするとの前提のもとに行わなければならない』と

いうことらしい。

また、『今日マネジメントは、IT革命によってかえって

必要な情報をもてなくなった。手にするデータは増え

たが、ほとんどが組織の内部についてのものである』

ということは考えておかなければならない。

しかし、『IT革命におけるeコマースの位置は、産業

革命における鉄道と同じである』と言い、『鉄道が

生んだ心理的な地理によって人は距離を征服し、

eコマースが生んだ心理的な地理によって人は

距離をなくす。もはや世界には一つの経済、一つの

市場しかない』と言えるようになった。

さらに、「ネクスト・ソサエティ」の特質は、①知識は

資金よりも容易に移動するがゆえに、いかなる境界も

ない社会、②万人に教育の機会が与えられるがゆえに、

上方への移動が自由な社会、③万人が生産手段として

知識を手に入れ、しかも万人が勝てるわけではない

がゆえに、成功と失敗の並存する社会である。

では、そのような社会にあって、トップマネジメントの

あり方についてのポイントとは、次の5つがある。

①コーポレート・ガバナンスが変容する
②外の世界で起こることを理解する必要がある
③いつ命令し、いつパートナーとなるかを
 知らなければならない
④知識労働の生産性の向上に真剣に取り組ま
 なければならない
⑤みながともに生産的に働けるようにすることを
 考えなければならない

ここまでは、とても分かりやすくグローバル化と

変化の激しい時代が描かれているが、話が日本に

及ぶと突然、劇的な改革を望む機運に関しては

注意を要すると、おとなしくなってしまう。

これは日本が変化に追いつけないという意味なのか

日本は変われないだろうという皮肉なのか分からない。

もっとも印象的なのは、日本についての5つの謬説を

指摘した後で、正しい仮説として挙げられている5つに

ついてである。

①官僚の優位性はほとんどあらゆる先進国で見られる
②日本の官僚は長年の不祥事と無能の暴露にも
 耐久力を示して、権力を維持してきた
③社会の維持にはエリートの指導力が必要であり、
 日本には、官僚の後を継ぐものは現れそうにない
④日本では経験的には、先送り戦略には一概に
 不合理とはいえないものがある
⑤日本の政策形成者にとっては、大事なのは経済よりも
 社会であって、先送りこそ合理的な戦略である

ドラッカーは丁寧にも、この日本に関する章を次のような

言葉で締めくくっている。

『もちろん、官僚の擁護などは異説である。しかし異説と
いうものは、通説よりも真実に近いことが少なくないので
ある』

今現在、政治主導を掲げる政党によって、日本は

メチャクチャなことになっているが、このことを親日家でも

あったドラッカーは、あの世でどのように感じているの

だろうか。

もう、新しいドラッカーの意見を読めないのが、残念に

思える1冊である。

【目次】(「BOOK」データベースより)
第1部 迫り来るネクスト・ソサエティ(ネクスト・ソサエティの姿/社会を変える少子高齢化 ほか)/第2部 IT社会のゆくえ(IT革命の先に何があるか?/爆発するインターネットの世界 ほか)/第3部 ビジネス・チャンス(起業家とイノベーション/人こそビジネスの源泉 ほか)/第4部 社会か、経済か(社会の一体性をいかにして回復するか?/対峙するグローバル経済と国家 ほか)

【送料無料】ネクスト...

【送料無料】ネクスト...
価格:2,310円(税込、送料別)

|

« ハロルド・ジェニーンさんの『プロフェッショナルマネジャー』を読んでみた | トップページ | 渋井真帆さんの『何をやってもダメだった私が、教わったこと。気づいたこと。実行したこと。』を読んでみた »

ドラッカー」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: ピーター・F・ドラッカーさんの『ネクスト・ソサエティ』を読んでみた:

« ハロルド・ジェニーンさんの『プロフェッショナルマネジャー』を読んでみた | トップページ | 渋井真帆さんの『何をやってもダメだった私が、教わったこと。気づいたこと。実行したこと。』を読んでみた »