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2011年7月12日 (火)

小宮一慶さんの『日本経済 このままでは預金封鎖になってしまう』を読んでみた

小宮さんの『日本経済
このままでは預金封鎖になってしまう』を読んでみた

 (5つが最高)

この本は、小宮さんの本にしては珍しく政治的な色彩が

強いつくりになっており、賛成しかねる点が多々あった。

たとえ、それがタイトルにもあるとおり、この国の置か

れた危機的状況から来るものであったとしても、

容認できる範囲にはないというのが感想である。

そもそも「預金封鎖」などになってしまうのかを含め

よくよく慎重に検討しながら読みすすめる必要が

ある本である。

特に印象的なのは次の記述です。

『もちろん、政府と企業では規模が違いますし、
税を強制的に徴収できるなど仕組みも違います。
ですから、企業と国を単純に比較することに
違和感のある方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、破綻するかしないかは、家計も企業も
国も基本的には同じです。稼ぐより使っていれば
借金は増えますし、借りたお金が返せなければ
企業も政府も破綻するのです。
ただ、政府は徴税権がある分、国民がお金を
持っている限りは信用度がある程度は高いと
いうだけです。』

議論を単純化するためとは言え、家計も企業も国も

みんな同じというのはあまりにも乱暴な気がする。

政府には、税を強制的に徴収できる徴税権がある

という大きな違いのため、国民は政府がいかに

無駄遣いしたとしても、後で税金を払うことによって

穴埋めできるチャンスが残されているのである。

もし税金は払いたくないが、バラマキだけはして

欲しいという私のような不心得者ばかりだったと

したら「預金封鎖」という事態に至っても預金が

そもそもないということもありえないことではない。

そして、預金のない私でも次のような「処方箋」が

危険なものであることは分かるのである。

危機を克服するための5つの処方箋
①財政健全化のためのコストカットと消費税の増税
②移民の積極的受け入れと徹底した少子化対策に
 よる人口ピラミッドの健全化
③日本の得意分野を成長させる教育制度の導入
④地域経済活性化と沖縄基地問題を一気に解決する
 防衛力増強
⑤エコ活動強化で貿易黒字の確保

小宮さんなりの処方箋に敬意は表するが、①が

実現の可能性のある唯一のものだろう。

移民は消極的に受け入れたとしても、人口ピラミッドを

変化させるほどにはならないだろう。

教育制度では時間がかかりすぎ、日本の得意分野が

失われてしまうのに間に合わないだろう。

防衛力増強による経済対策などは論外である。

日本が防衛力によって国を守れるなどということは

まったくの幻想である。

もし日本の教育が世界に誇れる点があるとすれば

その最たるものは、戦争になったら国家など捨てろ

ということを若い世代に浸透させたことである。

このことは日本の技術者が韓国の製品を支えて

いることからも分かることである。

私も法律に携わって生活を維持しているので

戦争放棄の憲法解釈については意見を持って

いるが、そんなことは現実の前ではあまりにも

くだらないことである。

戦争になったら人々は国家を捨てて逃げ出すだけだ。

生活のためなら人々は外資で働くことをいとわない。

少子化が問題であっても子供が欲しくない夫婦は

国家のために子供を作ったりしないのである。

エコ活動も震災があったから節電の意識が高まったが

そうでなければ遅々として進まなかっただろう。

最後に、この本を読んで最も疑問に思ったことは、

Chabo!という活動をともにしている勝間和代さんは

インフレターゲット論者のように思うが、小宮さんは

勝間さんにインフレターゲットの危険性を話したり

しないのだろうかということ。

今度、二人がこの問題で共著を出してくれないだろうか。

そしたら絶対に私は読むと思うのだが。

【目次】(「BOOK」データベースより)
第1章 世界一ひどい日本の財政赤字(日本の現実を直視する/日本の急所、銀行が買い支える大量の国債)/第2章 インフレターゲットは危険な議論(国債金利とインフレ、デフレの関係/インフレからはじまる日本破産のシナリオ)/第3章 財政危機を加速する2つの危険因子(少子高齢化が財政危機を加速する/中国経済の減速で日本経済も減速する)/第4章 危機を克服するための5つの処方箋(処方箋1・財政健全化のスタンスを今すぐ示す/処方箋2・健全な人口ピラミッドを/処方箋3・得意分野を伸ばす成長戦略を/処方箋4・防衛費1%枠を撤廃し、自衛隊増強を/処方箋5・エコの推進で輸入を減らし貿易黒字を増やす)

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