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2011年8月23日 (火)

クリス・アンダーソンさんの『ロングテールアップデート版』を読んでみた

クリス・アンダーソンさんの『ロングテールアップデート版
「売れない商品」を宝の山に変える新戦略』を読んでみた

 (5つが最高)

この本は、同じ作者の書いた『フリー〈無料〉からお金を

生みだす新戦略』とは違い、現状の様々なビジネス

モデルに感心がある人にとって、とても面白い材料を

提供してくれている。

たとえば、今までリアルな店舗では陳列することが

できなかったニッチ商品の集積が、ITの進歩により

管理や宣伝コストが限りなくゼロに近づいたために、

ヒット商品の収益を超えるほど収益が上がるように

なるという分析はとても興味深い。

また、その中でも次のロングテール時代の6つの

テーマは新しく現れた世界を上手く切り取っている。

①現実にすべての市場において、ニッチ商品は
 ヒット商品よりもはるかに多い。
②ニッチ商品を入手するコストが劇的に下がった。
 おかげで、多くの市場で、提供できる商品の種類は
 大きく広がった。
③多様な選択肢を提供しても、それだけで需要は
 増えない。
 レコメンデーションや人気ランキングなどの
 「フィルタ」が需要をテールに導くことができる。
④選択肢が非常に多様で、なおかつそれを整理する
 フィルタがあれば、需要曲線はなだらかになる。
⑤ニッチ商品をすべて合わせればヒット商品市場と
 張り合える。
⑥以上の要素が揃えば、流通のボトルネック、
 情報不足、商品スペースの限界に影響を受けない
 自然な需要の姿が現れる。

さらに、ロングテールの集積者として成功するための

9つの法則は、次のとおり。

①在庫をできるだけ集めるか、消してしまう
②顧客に仕事をしてもらう
③流通手段を増やす
④消費形態を増やす
⑤価格を変動させる
⑥情報を公開させる
⑦どんな商品も切り捨てない
⑧市場に整理をゆだねる
⑨無料提供をおこなう

これ以外にも、いろいろ興味深い分析が多く、

今まで読まなかったことが残念に思うほど、

示唆に富んだ良書であった。

今回紹介するこの本は、ロングテール理論の提唱者

クリス・アンダーソンの話題の書を全面的に改訂し、

新しいマーケティング手法に関する1章と、旧版刊行後

の反響を受けた補遺を追加したアップデート版である。

【目次】(「BOOK」データベースより)
ロングテール-大衆市場から無数のニッチ市場へ/ヒットの興亡-融通がきかない文化に縛られて/ロングテール小史-通販カタログからショッピングカートまで/ロングテールの三つの追い風-つくる。世に送り出す。見つける手助けをする。/新たなる生産者たち-生産手段を手にしたアマチュア・パワーをあなどるな/新しい市場-ヘッドからテールまで呑みこむ集積者/新たな流行発信者-蟻がメガホンを手に入れた/ロングテール経済-潤沢と希少/短いヘッドの世界-商品スペースですべてが決まる/何でも手に入る時代-選択肢がわんさとあるのはいいことだ/ニッチ文化とは-ロング手テールに生きるということ/無数のスクリーン-ポテト・テレビ時代の映像はどうなる/エンタテインメント以外のロングテール市場-ニッチ革命はどこまで広がるのか/マーケティングのロングテール-「売りこみ」はもう通用しない/テールの未来

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2011年8月20日 (土)

ハロルド・ジェニーンさんの『プロフェッショナルマネジャー・ノート 超訳・速習・図解』を読んでみた

ハロルド・ジェニーンさんの
『プロフェッショナルマネジャー・ノート
超訳・速習・図解』を読んでみた

 (5つが最高)

この本は、ユニクロの柳井正さんが経営の教科書として

推薦している『プロフェッショナルマネジャー』の要約本に

柳井さんの解説を付けたものである。

柳井さんがジェニーンさんをお手本としているのは

失敗を恐れてはいけないという、とにかくやる姿勢が

共通しているだけでなく、失敗に真正面から向き合って

こそプロフェッショナルというところであろう。

この本の特徴は、何と言っても分かりやすいところ。

『プロフェッショナルマネジャー』から特に重要なフレーズ

を1ページに大きく書き出して、次に解説的な文章を

つないでいく構成。

その中でも気になったのは次のようなフレーズ。

『もし、諸君がビジネスで成功したかったら、自分が
属する場所で上位の20%のグループに入ることが
求められる!』

『「見解の相違」というものは、組織にとって本当の
害にはならない!』

他にも刺激的なフレーズが並び、『プロフェッショナル

マネジャー』を読んでいない人でも楽しめる。

また、特にまとまっていておススメなのが、ジェニーンの

遺した核心をついた経営についての個人的意見は

次のとおり。

・物事を行うには会社の機構を通して近道せずに
 やらなければならない。しかし、ルールにしたがって
 考える必要はない。想像力を閉じ込めてはいけない
・本来の自分でないもののフリをするな。
 自己顕示欲のための旅行、社内政治その他、
 真の自分でない役を演じることを避けよ
・紙に書かれた事実は人々から直接伝えられる事実と
 同一でないと銘記せよ。事実そのものと同じくらい
 重要なのは、事実を伝える人の信頼度だ
・本当に重要なことは自分で発見しなくてはならない
・組織の中の良い連中はマネジャーから質問される
 のを待ち受けている。そこから初めて、両者は一緒に
 前進することができる
・物事の核心を突く質問をされるのを嫌がる人間は
 インチキな人間に決まっている。そして、インチキな
 人間を見分けて厄介払いするのはマネジャーの仕事だ
・どんな質問についても、答えや解決法を聞かれも
 しないのに教えてくれる者はいない
・どんなにきわどい決定も、マネジャーのみが行わなく
 てはならない。その決定は状況に関する事実に
 基づいていなければならない。責任者であるからには、
 正しかったり間違ったりする権利があるが、それは
 マネジャー本人でなければならない。そして、他の誰か
 に決定や命令を代行させる権利はない

個人的には『プロフェッショナルマネジャー』以上に

刺激を受けた1冊である。

【目次】(「BOOK」データベースより)
第1章 セオリーだけでは経営なんかできない/第2章 経営の秘訣/第3章 大不況の中で手に入れた金銭以外の報酬/第4章 2つの組織/第5章 経営者の条件/第6章 リーダーシップ/第7章 セグゼクティブの机/第8章 最悪の病-エゴチスム/第9章 数字が意味するもの/第10章 企業家精神

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2011年8月13日 (土)

マイケル・サンデルさんの『サンデル教授の対話術』を読んでみた

マイケル・サンデル/小林正弥さんの
『サンデル教授の対話術』を読んでみた

 (5つが最高)

この本は、NHK教育テレビで「ハーバード白熱教室」と

題して放送され、大きな反響を呼んだサンデル教授の

対話型講義についての本である。

まず、タイトルにある「対話術」についてであるが、

これには「術」という語に「技術(テクネー)」という

英語の単なる「テクニック」という側面だけではなく、

「アート」という側面も含ませているということで、

サンデル教授の対話型講義の本質に迫ろうとする。

また、最近話題のファシリテーションとの対比から

ともすれば宗教的・政治的・商業的なファシリテーション

が度を越すと思考を操作するマインド・コントロールの

ようになってしまうのに対し、サンデル教授の哲学的・

学問的思考は、それとは正反対で、あくまでも自由な

思考を育むという認識は納得がいく。

その上で自身もサンデル教授に導かれるようにして

千葉大学で対話型講義を実践している小林さんは

印象に残ったサンデル教授の講義に現れるアートに

ついて次の8つを挙げている。

①学生の発言を論理的に明確にする
②学生に哲学的立場を自覚させ、
 それぞれの立場の代表者を見出す
③個人的な攻撃を避けさせて、
 学生自身の論理を徹底的に展開させる
④臨機応変に議論を展開させていく
⑤哲学に関する実験をして学生にその内容を考えさせる
⑥チームを作って少数派の意見を積極的に引き出す
⑦正反対の意見を戦わせて議論を深化させる
⑧あえて自分の思想への反対意見を引き出す

私も以前は教育の現場でファシリテーションと称した

指導法を専門にしていたので、その難しさも含めて

サンデル教授の対話型講義という指導法の凄さが

実感できる指摘である。

一般に自由は尊重されるべきであるが、他者の自由な

思考に我々はどこまで寛容であることができるか、

教育の現場ではなかなか難しい問題である。

サンデル教授の対話術をテレビで少し見ただけで

この本を読み始めたが、もっとサンデル教授の

授業や著作に触れてみたいと思わせられる

良い1冊であると思う。

【目次】(「BOOK」データベースより)
第1部 サンデル教授、大いに語るー対話型講義をめぐって(自分自身のこと/対話型講義とはどのようなものか/講義法について/ハーバード大学の講義とその学生たち/東京大学での特別講義/日本とコミュニタリアニズム/アメリカと「市場の道徳的限界」/今日における正義と哲学)/第2部 現代に甦るソクラテス的対話ーサンデル教授から学ぶ講義術(大学に甦る対話篇・ハーバード白熱教室/サンデル教授の講義術/日本における対話型講義の技術/対話型講義による教育改革を/対話型講義の美徳ーその実践に関心を持つ人々へ)/付論 近現代的正義論から古典的正義論へー新しい正義論への道

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2011年8月 6日 (土)

藤井孝一さんの『なぜあの人は会社を辞めても食べていけるのか?』を読んでみた

藤井さんの『なぜあの人は会社を辞めても
食べていけるのか?』を読んでみた

 (5つが最高)

この本は、『週末起業』の著書で有名な藤井さんが

起業家の経営コンサルタントとしての経験から得た

「実戦的ノウハウ」を会社にいても、飛び出しても、

うまくいく人の考え方として解説している。

まず、必要なのは「稼ぎ力」「人間力」「お金力」

「時間力」「継続力」の5つの力を身に付けること。

最近では会社の理不尽なリストラにより、仕事が

できない人だけではなく、様々な人がクビにされて

しまうことがあるので、独立して成功した人の話も

耳にするようになってきたとは言え、やはり会社に

依存しているほとんどのサラリーマンにとっては

「なぜあの人は会社を辞めても食べていけるのか」

というのはとても興味のある話題ではある。

そういう意味では、とてもいいテーマの本である。

しかし、書かれている内容が興味深く的確である

にもかかわらず、物足りなさを感じたのはなぜか。

それは、この本だけでは、もし自分がリストラされて

起業する以外になくなったときに、その将来への

不安を一掃することが出来ないように思うからだ。

では、何が足りないのかと言えば、簡単である。

「会社を辞めて食べていけなかったらどうするのか」

という、最大の不安への答えがないのである。

もちろん、この本は、成功している人による

成功のための本なのだから、失敗した後のことなど

書かれていなくとも当然である。

むしろ、失敗することがないように5つの力を身に

付けることで、何も知らずに起業した人が踏んで

しまいがちな地雷を避けて通れるようにしてくれて

いるのだから、失敗した後などということには

触れられていないほうがいいに決まっている。

そして、今後は会社を辞めたら食べていけない人は

会社にも居場所がなくなっていくと考えるべきなのだ。

そうであれば、この本に書かれていることを

少しでも早く身に付けることが重要だということである。

その際に、起業マインドを求めて転職を繰り返して

いくうちに、給料だけが低くなっていくというのが

現実だというアドバイスは貴重である。

さらに、この本にはもう1つの楽しみ方がある。

それは成功している起業家がどのようにして、

スティーブン・R・コヴィーの『7つの習慣』を

消化しているかということが分かるということである。

勝間和代さんが『7つの習慣』を推薦していて

同じように、その影響の受け方を見て取れるが

勝間さんの場合、他からの影響も強いので

藤井さんのこの本のほうが面白いと思う。

本から学ぶということが成功への近道ということは

成功した人によく当てはまるものだ。

サラリーマンであっても稼げる人を目指したい人は

ぜひ1度読んでみると参考になるはずである。

【目次】(「BOOK」データベースより
第1章 食べていくための考え方ー稼ぎ力(稼ぐ力とは?/稼ぐために必要なこと ほか)/第2章 人間力を育むー人間力(稼ぐ力は人間力/人間力は会社の組織から学ぶ ほか)/第3章 お金力を鍛え直せーお金力(儲けのツボを知らないと失敗する/ビジネスの成功要因(Key Factor of Success)を探せ ほか)/第4章 最強・最重要の経営資源は時間ー時間力(人生の完成図を持つ/完成図に到達するための段取りを考える ほか)/第5章 はじめる力・続ける力ー継続力(ドラマで見かける起業家は大失敗の典型例?/「稼ぎは給料だけでない」この簡単な事実を受け止めよう! ほか)

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