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2012年1月30日 (月)

竹森俊平さんの『日本経済復活まで』を読んでみた

竹森さんの『日本経済復活まで
大震災からの実感と提言』を読んでみた

 (5つが最高)

この本は、経済学者が今回の東日本大震災をどのように

受け止め、何を感じたかということを克明に伝えていて

ともすれば風化しがちな非日常の出来事の記憶を呼び

覚ましてくれる。

まず第1部は、動揺や手探りの様子をそのまま記した日記

スタイルをとっている。

次に第2部は、震災を受けての、より標準的な経済書の

スタイルをとっている。

そして、この異なる2つのスタイルが問題のありかを

浮かび上がらせるのにとても効果的に機能している。

内容としては、東日本大震災による地震及び津波による

被害部分を「天災」、東京電力の福島原子力発電所の

放射能漏れによる被災部分を「人災」として別々にとらえ

それぞれに竹森さんなりの論考を加えている。

首都圏をどう守るかという部分に関しては、地方を軽視

していないという注釈はあるが、それでもなお違和感を

覚えずにはいられなかった。

守るべきは首都圏のみではないだろうというのが

率直な感想である。

当然、竹森さんは経済的な首都圏の重要性を主張して

いるのであって、それ以上の意味を持たせてはいないが

何となく経済学の嫌な部分が見え隠れしている気がした。

そして、今回最も気になったのは以下の文章。

『福島第一原発で最初に水素爆発を起こした一号機は
一九七一年に生産されたもので、導入されてからすでに
四〇年が経過している。とっくに寿命が来ていたのだ。
それなのに日本の「原子力安全・保安院」は、大震災
発生の一ヵ月前、非常用ディーゼル発電設備の亀裂
などいくつもの問題を発見しながら、さらに一〇年間の
寿命延長を認めていたというのである(『ニューヨーク・
タイムズ』三月二十一日の記事)。
 この話からも分かるように、必要な投資までも怠る
という今の日本企業に染みついた習慣は、日本人の
生命を脅かすほどの問題を生み出している。企業の
考えに従えば、投資をするのは危険で、現金を抱え
込むほうが安全ということになるのだろう。しかし、
原子力発電といった、複雑で、しかも問題が起こった
場合の被害が桁違いに大きい設備をたくさん抱える
国で、投資を怠ることほど「危険」な行為は存在しない。
それが今回はっきりしたのである』

私のいる会社でも、リストラと称して人件費を削減した

管理部門の経理屋が評価され、売上が目標を達成

しなかった営業部門はコスト削減を迫られているが、

この経理屋の言いなりに投資を絞ってしまったら

さらに売上が減って再びリストラが必要になることは

目に見えている。

経理屋が経済学を理解しないのは仕方がないとしても

経営者がこれを理解しないのは致命的だ。

投資意欲の萎えている中小企業の経営者にこそ、

ぜひ読んでもらいたい1冊である。

【目次】(「BOOK」データベースより)
第1部 震災発生/第2部 この国の未来

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