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2012年1月21日 (土)

池上彰さんの『高校生からわかる「資本論」』を読んでみた

池上さんの『高校生からわかる「資本論」
池上彰の講義の時間』を読んでみた

 (5つが最高)

その昔、吉本隆明や柄谷行人に夢中だったころは

岩波文庫で出ていたマルクスの著作は全て読んだ。

そしてその頃の記憶を頼りに、かつてこのブログでも

『資本論』が一番面白いが、その次はなんと言っても

『ユダヤ人問題によせて ヘーゲル法哲学批判序説』で

三番目が『経済学批判』という順番になるであろうか

などと書いたりしている。

しかし、時は流れて、いつしか生活に追われるだけの

40代になってみると、あの頃の感覚が懐かしい。

私の学生時代には、周囲にマルクスなど読む者はなく

「左翼」も「サヨク」として、活字の中にしかなかった。

大江健三郎を読み解くために、いろいろと本は読んだが

その主張するところに、全面的に共感するまでには至ら

なかった。

吉本隆明や柄谷行人の著作に関しても、なぜマルクス

から語り始めなければならないのかを本当には理解

していなかったと思う。

何か重要なことを言っているのだろうということは

感じるが、マルクスの主張する資本主義の問題点の

多くが現実には克服されつつあるように見えた。

その克服の過程には当然マルクスの指摘を受けての

共産主義の影響があったことだろう。

しかし、もっとも成功した共産主義的資本主義国の

日本にあっては、マルクスの問題提起はすでに

解決されたものとみなされてきた。

けれどもここに来て、再び資本主義に多くの問題が

あることが分かってくると、マルクスを見直す機運が

出てきた。

そこで分かりやすい解説で定評のある池上彰さんの

『資本論』の解説本の登場ということなのだろう。

高校生から分かるというシリーズの趣旨もあり、

語り口も具体例もとにかく分かりやすい。

たとえば、『資本論』の要約は次のとおり。

『人間の労働があらゆる富の源泉であり、資本家は、
労働力を買い入れて労働者を働かせ、新たな価値が
付加された商品を販売することによって利益を上げ、
資本を拡大する。資本家の激しい競争により無秩序な
生産は恐慌を引き起こし、労働者は生活が困窮する。
労働者は大工場で働くことにより、他人との団結の
仕方を学び、組織的な行動ができるようになり、やがて
革命を起こして資本主義を転覆させる。』

では、マルクスが考えていた革命とはどういうものかと

いうと、マルクスが書いた『共産党宣言』を読むと、

共産党が革命を起こしてまず一番最初に獲得すべき

ことは、それは民主主義だ、と書いてあるという。

当時の社会主義革命とは、自分たちが選挙で代表を

選ぶ民主主義を獲得することだったのである。

今なら、この解説は受け入れられやすいと思う。

そして、『資本論』は、資本主義のマイナス面の指摘

だけではなく、資本主義そのものの分析としても優れて

いたことを池上さんは解説している。

商品に価値を付加するのは労働であり、労働には

必要労働と剰余労働がある。

その剰余労働が資本家に搾取されているわけだが、

この剰余労働こそが社会を豊かにしてきたことを

考えると、この富は誰のものかと考えることが必要だ。

また、剰余労働が剰余価値を生み出すのだが、

剰余価値には絶対的剰余価値と相対的剰余価値が

ある。

絶対的剰余価値は労働時間を延ばすことによって増え、

相対的剰余価値は生産力を高めることによって増える。

だから資本家はより多くの剰余価値を得るために

労働者のことなんか考えずに、とにかく労働時間を延ばし

生産力を高めようとする。

このことが資本主義の問題なのだということを池上さんは

上手く説明している。

そして、残念ながらマルクスは上手く説明し切れていない。

とにかくマルクスの書く文章が分かりにくい。

昔はこれがありがたかったのかもしれないが、今では

何のためにこのような分かりにくい文章なのか理解でき

ない。

いろいろな必要があってマルクスを読み返さなければ

ならなくなった私にとっては1冊目としては、とても参考

になった。

また分からなくなったらこの本に返ってこようと思うほど

の良書である。

その昔マルクスに挫折してしまった人も、これから

新たにマルクスを読もうとしている人にも、ぜひ

オススメの1冊です。

【目次】(「BOOK」データベースより)
『資本論』が見直された/マルクスとその時代/世の中は商品だらけ/商品の価値はどうやって測る?/商品から貨幣が生まれた/貨幣が資本に転化した/労働力も商品だ/労働力と労働の差で搾取する/労働者はこき使われる/大規模工場が形成された/大規模な機械が導入された/労働賃金とは何か/資本が蓄積される/失業者を作り出す/資本の独占が労働者の革命をもたらす/社会主義の失敗と資本主義

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