牛越博文さんの『これだけは知っておきたいドラッカー』を読んでみた
牛越さんの『これだけは知っておきたいドラッカー』を読んでみた
(5つが最高)
この本は、正直言っていまだにドラッカーの著作が
きちんと読めない私にも、その全体像と見取り図を
教えてくれる、とても参考になる本である。
何度もやって来るドラッカーブームにもかかわらず
まったくその著作の面白さが分からず、何が言いたい
のか疑問に思っているような人には、必ず読んで
欲しい1冊である。
ドラッカーを読む上でのポイントになる箇所を
私なりに抜き出してみると次のとおり。
①「企業の目的は、顧客の創造にある」
②「企業は、自らの社会に与える影響について
できるだけ広く捉え、その影響について責任を
持つべきだ」
③組織を動かす際の自由と責任、その方法論を
徹底して考え抜いたのが、ドラッカーです。
④ドラッカーの主張を極限まで要約し、二段階に
分けて言うと、以下のようになります。
1.本当の経営者はイノベーションを起こす。
2.イノベーションを起こすには、組織を
マネジメントする必要がある。
⑤ドラッカーがベースにしたシュンペーターの
イノベーションは次の5つ
1.新しい製品を生産すること
2.新しい生産方法を導入すること
3.新しい販売先を開拓すること
4.新しい仕入先を獲得すること
5.新しい組織を実現すること
⑥ドラッカーのイノベーションの目的はあくまでも
「顧客の満足度を上げる」ことにある
⑦コスト削減のためにリストラをすることは間違っている
赤字であっても社員の給与を下げなければ乗り切れ
ないような経営者は、まず自分が去るべきである。
⑧イノベーションのチャンスは次の7つ
1.予想しなかったことが起こったとき
2.なんらかの差がわかったとき
3.プロセスのニーズが現れたとき
4.産業と市場の構造が変化したとき
5.人口の構成が変化したとき
6.ものの考え方・見方や気持ちが変化したとき
7.新しい知識が生まれたとき
⑨「本当の経営者は、よく考えずに行動する」
自分の見たままに、感じたままに行動する。
⑩未来は誰にもわからないが、自己実現に
成功した人はある〈方法〉をとっている、
その方法こそマネジメントです。
マネジメントは、絶対真理ではなく一つの
方法論に過ぎません。
⑪経営者が何の価値観も持たずにあるがままを
見るだけでは、やがて道に迷ってしまいます。
かといって、未来を予測しようとすると、それは
誰にもわからないので、やっぱり道に迷って
しまいます。だから、組織の目指す目的地が
必要です。その目的地が「顧客の創造」であり、
これは「便宜上」打ち立てられたものなのである。
なぜなら「絶対真理」はないからです。
⑫知識社会とはどのようなものか。
1.自由放任の時代から福祉国家の時代へと変わり、
価値観は個人的なものから社会的なものに変わった。
2.資本主義社会から知識社会へと変わり、資源が
資本・労働・土地から知識に変わった。
⑬経営者への5つの質問
組織のマネジメントについて経営者が自らを
評価するための問い
1.我々のミッション(使命)は何か
2.我々の顧客は誰か
3.顧客は何に価値を感じているのか
4.我々にとっての成果は何か
5.我々のプランは何か
⑭経営者は、専門知識を使って成果を上げる人を
評価します。
知識労働者が働く理由は自己実現なので、
仕事で成果を上げたかどうかは、自己実現
したかどうか、とイコールになります。
自己実現はミッションへの貢献によってなされ
るので、どのくらいミッションに貢献したかが、
成果の評価になります。
ミッションは売上や利益ではありません。
⑮経営者が成果を評価するのは、賃金を決める
ためではなく、社員と組織がどれだけ自分の
強みを発揮しているかを知るためである。
⑯経営者が初めから持っていなければならない
資質が一つだけある。それがintegrityです。
integrityは「真摯さ」「誠実さ」「邪心がない」
「汚れがない」という意味です。
この本を読んでようやく、ドラッカーが本当は
何を言いたかったのかが分かった気がした。
ドラッカーの読みにくさは、「これだけは知って
おきたい」ことをまとめて提示してくれない点にある。
それが、何度読んでも新しい発見がある
ドラッカー本の人気の秘密でもあるのだろうが、
私のようなものには、こういう本こそ有難い。
ドラッカーブームに何度も乗り損ねた人にこそ
ぜひおススメの1冊である。
【目次】(「BOOK」データベースより)
はじめに いま、なぜドラッカーなのか/第1章 イノベーションとは何か(イノベーションとは-/まやかしのイノベーション ほか)/第2章 どのようにイノベーションを起こすのか(経営者は全体を「直観」する/方法にはうまいコツがある(「組織のマネジメント」) ほか)/第3章 マネジメント(我々のミッション(使命)は何か/我々の顧客は誰か ほか)/第4章 知識労働者
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