白田秀彰さんの『インターネットの法と慣習』を読んでみた
白田さんの『インターネットの法と慣習
かなり奇妙な法学入門』を読んでみた
(5つが最高)
この本は、インターネット時代の法律についての入門書
であるが、特に個別の法律について論じたものではない。
サブタイトルに「かなり奇妙な法学入門」とある割には
第1章では、まず法そのもに対する考察や、大陸法と
英米法の考え方の違いといったオーソドックスな始まり
である。
第2章では、ネット社会においては、一般社会では認め
られていない自力救済が一部で行われていることや、
「複製=善」の「慣習」がもともとあり、これを事物の
本性と人間の合理性から発する行動であるとして、
教育だけで「著作権違反(複製)=悪」という概念を
慣習化していくことは難しいとしている。
第3章では、思考実験として著作権を法律で保護など
しなくてもいいのではないかということを考えることに
よって、逆に著作権の守るべき本質を考えさせてくれる。
ただ、インターネット社会で問題となる法律について
これから勉強しようという人には、期待はずれに
終わるかもしれない。
この本は、変化の激しいインターネット社会において、
後追いになってしまっている法をどのように捉えれば
いいのかを解説するとともに、インターネットの世界に
現行の法律を適用することの限界も示している。
そこで最後に奇妙な結論として、政治家はネットの
世界を理解しないので、ネット世界に適した法整備を
行わない、あるいはその必要性さえ感じていない。
であれば、このような状況を打破するためには、
法整備よりもまずネット上で好ましい慣習を作り出し、
最終的にはネットの世界の意見を代表する議員を
議会に送り込んだらどうだろうかというものである。
このことは、慣習から法にいたる道筋と、法が常に
政治的であることを知っているものには馴染み
やすいかもしれないが、今ある法を学びたかった人
には、なんとも唐突な感じなのではないだろうか。
1冊目にしてはハードルが高いかもしれないが、
法学そのものの入門書としては面白い。
【目次】(「BOOK」データベースより)
第1章 法の根っこを考える(そろそろ真面目に「法」について考えよう/法と法則/大陸法と英米法の考え方/イングランド法についてちょっと補足)/第2章 権利をしっかり知っておく(自力救済と紛争解決/名誉と自力救済、そして法/知的財産権制度と封建制について/権威と典礼)/第3章 これからの法と社会を模索する(政治的であることについて/メンドウな事態とポリシー・ロンダリング)
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