佐野眞一さんの『あんぽん 孫正義伝』を読んでみた
佐野さんの『あんぽん 孫正義伝』を読んでみた
(5つが最高)
この本は、ソフトバンクの孫正義さんの評伝であるが
いわゆるソフトバンクの社史みたいなモノではない。
佐野さん自身、あとがきで書いているとおり、
この本の狙いは、孫正義という特異な経営者は
なぜ生まれたのかということを朝鮮半島につながる
血のルーツまで遡って探ることであり、言葉をかえ
れば、佐野さんなりの在日朝鮮人論であるという
ことである。
そのため孫正義さんのこれまでの歩みや当然あって
しかるべきソフトバンクの歩みは、ほとんど書かれて
いない。
しかも、佐野さんの本を読むのが初めてではない
私にとっては、意外に思えるほど、今回の対象と
された孫正義さんに対して否定的なスタンスが
目に付いた。
佐野さんは孫さんをはっきりと「いかがわしく」て
「うさんくさい」と書き記している。
『孫正義は成り上がり者だから、いかがわしさを
感じるのか。ノーである。
孫正義は元在日朝鮮人だから、いかがわしさを
感じるのか。ノーである。
では、孫に対して感じるいかがわしさやうさんくさ
さは、どこから来るのだろうか。
孫は「経済白書」が「もはや戦後ではない」と高らか
に謳った翌年、鳥栖駅前の朝鮮部落に生まれ、豚の
糞尿と密造酒の強烈な臭いの中で育った。
日本人が高度経済成長に向かって駆け上がって
いったとき、在日の孫は日本の敗戦直後以下の
極貧生活からスタートしたのである。
その絶対に埋められないタイムラグこそ、おそらく
私たち日本人に孫をいかがわしいやつ、うさんくさい
やつと思わせる集合的無意識となっている。
高齢化の一途をたどる私たち日本人は、年寄りが
未来のある若者をうらやむように、底辺から何として
も這い上がろうとして実際にそれを実現してきた孫の
逞しいエネルギーに、要は嫉妬している。』
この記述が本当に正直な佐野さんの感想なのか
どうかは分からない。
けれども、私が感じていることとは明らかに逆である。
「私たち日本人が孫さんをいかがわしいやつ、うさん
くさいやつと思ってしまうのは、残念ながら孫さんが
成り上がり者だからであり、元在日朝鮮人だから
なのである」
このことを覆い隠したまま、孫さんをいくら批判しても
私たちには成長がないように思える。
孫さん自身はきっとこの問題を彼なりの努力で
越えていくと思えるだけに、なおさらはっきりと
認識した上で、私たち自身もこの問題を越えて
いかなければならないのではないだろうか。
逆説的ではあるが、この本を読んだことで孫さんが
実際にやってきた、ソフトバンクの歩みのようなもの
を読んでみたくなった。
【目次】
孫家の家系図・孫正義略年表
プロローグ
第1章 孫家三代海峡物語
第2章 久留米から米西海岸への「青春疾走」
第3章 在日アンダーグラウンド
第4章 ソフトバンクの書かれざる一章
第5章 「脱原発」のルーツを追って
第6章 地の底が育てた李家の「血と骨」
第7章 この男から目が離せない
あとがき
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