竹中平蔵さんの『日本経済「余命3年」』を読んでみた
竹中平蔵/池田信夫/鈴木亘/土居丈朗さんの『日本経済「余命3年」
〈徹底討論〉財政危機をどう乗り越えるか』を読んでみた
(5つが最高)
この本は、最近私が読むようになった竹中平蔵さん、
池田信夫さん、鈴木亘さんの3人と財政学に詳しい
土居丈朗さんの意見がまとめて読めるお得な本である。
とにかく、日本経済について、経済学者が考えている
ことのエッセンスは、ほとんど盛り込まれている。
まず、経済成長が1番大事ということ。
それなくしては社会保障なんて言っている場合ではない。
財政の問題も税収が増えない限り、解決できない。
そして、国債が暴落したり、日本が破綻するという
意見に対し、竹中さんは次のように言っている。
「プライマリーバランスは回復する」という期待が
多くの人々に共有される状況になれば、国債発行
残高が多くても、それほど混乱は起こりません。
逆に国債発行残高が少なくても、管理能力がまったく
ないと判断されれば、市場は混乱します。要は、
期待値がどれぐらい大きいかに尽きるのです。
また、タイトルにある「余命3年」という意味は、
あと3年で日本経済が絶命するという意味ではなく
いまのような奇妙に安定した状態はあと3年ぐらいしか
続かず、それ以降はどういう不足に事態が起こるか
分からないという意味だそうである。
2012年か2013年までには様々な改革が必要という
ことであるが、そこには多くの問題が横たわっている。
この本の中では、経済学者の意見は一致していると、
強調されていたが、それほど簡単な問題ではないよう
に思うのは、私に経済学の知識が足りないからか。
ただ、法律に携わる人間として、次のような解決策は
とても納得がいった。
1979年に東京高裁が、東洋酸素事件に関して、
整理解雇の4要件という判例を出して、実質的に
正規雇用は解雇できないことを日本社会に定着
させました。それがいまも生きているのですが、
この判例が不都合だと政策的に判断すれば、
国会が新しい法律をつくって上書きすればいい。
確かに、労働市場改革をしようとするなら、
この大企業にのみ残る硬直的な解雇規制を
撤廃する必要がある。
この本は、全体的にとても参考になる良書であるが、
若干気になったのは、自殺率について、10年に
わたって3万人以上の自殺者が出ているということに
対し、竹中さんが言った次のこと。
自殺率の話も、じつのところ現実を反映したものか
どうか不明です。自殺の定義自体が曖昧ですから、
統計の基準を変えた結果、このような数字になった
可能性もあります。
経済学者としては、自殺率であっても数字で捉えて
議論するというのは正しいかもしれないが、どのような
統計の基準にしろ実際に人が死んでいることは事実なの
であろうから、政治家としてこのようなことを言ったら、
誰もついてきてはくれなくなってしまうだろう。
これは、竹中さんが格差が広がったことの弁解を
どれだけしても多くの国民が納得しない理由の一つ
でもある。
高い自殺率について、「対策が必要だ」と言わずに
定義の曖昧さや統計の基準を問題にするなんて
研究者としては立派なことなのだろうけど。
政治の難しさを知る上でも、有意義な1冊である。
【目次】(「BOOK」データベースより)
第1章 「国家破綻」に至るシナリオ(財政運営戦略で財政赤字は解消しない/歳出の「大枠」しか決められなかった理由 ほか)/第2章 税と世代間の負担をどうするか(消費税は早期に上げるべきか/「早期の増税は失敗する」というアレシナの提言 ほか)/第3章 社会保障をどうすべきか(「社会保障の充実」は可能か/「社会保障関係費」を聖域にしてはいけない ほか)/第4章 経済成長の鍵になる考え方(「スパイキーな世界」に挑む/郵政民営化の見直しが、財政をさらに悪化させる ほか)/第5章 真の「政治主導」の実現を(予算を財務省から取り戻す/官僚の知恵をいかに使うか ほか)
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