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2015年9月26日 (土)

滝岡幸子さんの『ど素人がはじめる起業の本』を読んでみた

 (5つが最高)

この本は、起業したいと考えている人を後押しする

ためのものであるが、考えるヒントを与えてくれると

考えて読むと、とても分かりやすいだろう。

「おもわず会社を辞めたくなるアイデア満載」という

副題からも分かるとおり、成功した起業家の事例を

経営コンサルタント目線で、いくつも紹介してくれて

いるのは有難い。

ただ、すでに会社を辞めたいと考えている人には、

このコンサルタント目線が、現実の厳しさを教えて

くれることにもなって、逆に思いとどまるのではない

かという気もする。

たとえば、企業のデメリットとして、「安定した収入は

得られない」、「企業が持つ社会的信用力はない」

など、当然のことだが、厳しい言葉が並ぶ。

ほかにも収入が安定するまでは、夫であれば

「妻にも働いてもらう」、「アルバイトで学びながら

生活費を稼ぐ」など、生活費を得るために会社勤めを

する以上に大変なことが待っていると感じさせられる。

さらには、ひとり起業ではなくアイデアをチームで

事業化する際には「性格があなたと正反対の人を

選ぶと、補い合って良いチームワークが取れる」と

書かれている。

せっかく会社を辞めて起業したのに、求める人材が

自分と性格が正反対とは、なんて息苦しいんだろう

と思わないではいられない。

たしかに起業して成功するには、ここに書かれて

いることは、大事な要素なんだろう。

特別すごいアイデアでもないかぎり、そんなに簡単

には成功できないことは分かる。

そこで、この本に書かれている成功事例をもう一度

じっくり読んでみる。

自分がその人たちと同じように成功できると思うか、

やはり難しいと考えるか。

この本は、そういったことを考えるために読む本で

あると思う。

【目次】(「BOOK」データベースより)
第1章 あなたも、いますぐ起業できる!/第2章 アイデアを「かたち」にしてください!/第3章 経験と悩みを事業にしたアイデア!/第4章 ありそうでなかった新しすぎるアイデア!/第5章 小さいことが強みになったすごいアイデア!/第6章 ピンチを乗り切った起死回生アイデア!/第7章 今すぐはじめるあなたへのアドバイス

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2015年9月20日 (日)

勝間和代さんの『猪口さん、なぜ少子化が問題なのですか?』を読んでみた

 (5つが最高)

この本は、少子化問題のことが分かるだけでなく、

その現象に映し出されている「近代」の本質と、

ポストモダンとしての21世紀型価値観にまで

話が及んでいて後半は特に面白い。

韓国や日本など出生率が回復しない国を

スーパーモダンに行きつつある国とし、

ヨーロッパのように出生率が回復している国を

ポストモダンに移行した国とする考察は

考えてみるべき視点であると思う。

そして、日本がスーパーモダンに行ってしまう

理由を自信がないから、特にアイデンティティに

対する自信を失ったままだからという意見は

興味深かった。

もちろん前半の少子化に対する直接の考察も

いろいろなことを考えさせられる。

特に次のような記述は心に残った。

『電車などでは、そこに、「周りのお客様にご迷惑に
ならないように、ベビーカーを折りたたんでください」
という放送が、かなり最近まで入っていました。
つまり、赤ん坊を連れているのは、「ご迷惑」な存在
だということなんですね。
その種の放送は、逆だと思うんです。むしろ、赤ちゃん
を連れている保護者に、周りの方はご迷惑にならない
ようにお気をつけくださいと言うぐらいの発想の転換が
必要です』

確かに、経済優先、効率優先の社会は、私たちに

幸福をもたらしはしなかった。

やはり、私たちは何か考え違いをしてきたのでは

ないだろうか。

不況が少子化の原因ではなく、少子化が原因の

長期的不況が近い将来やってくるかもしれないことを

私たちは覚悟しなければならないのかもしれない。

【目次】(「BOOK」データベースより)
第1章 猪口さん、なぜ、少子化対策が必要なのですか?―猪口×勝間/第2章 なぜ、少子化になっているんでしょうか?―猪口×勝間/第3章 勝間さん、ワーキングマザーって、そんなにたいへんなんですか?―勝間/第4章 で、猪口さん、具体的には、どんな政策をとるんですか?―猪口/第5章 二十一世紀のワーク・ライフ・バランスに向けて―猪口×勝間

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2015年9月19日 (土)

山田昌弘さんの『少子社会日本』を読んでみた

 (5つが最高)

この本は、2007年に出版されたものであるが

社会問題としての少子化に対して詳細な分析を

行い、その対策を提言している。

まず、少子化の要因として、次の点を上げている。
1.経済的要因
 ①結婚や子育てに期待する生活水準が
  上昇して高止まりしていること
 ②若者が稼ぎ出せると予想する収入水準が
  低下していること
2.男女交際に関する社会的要因
 ①結婚しなくても男女交際を深めることが
  可能になったという意識変化
 ②魅力格差の拡大

そして、日本の少子化は、①経済・社会、そして男女
交際パターンのグローバルな構造変化の中で、
②日本固有の文化的要因(パラサイト・シングル
現象)が重なって生じたものであるとしている。

それに対して、少子化対策には2種類あるとして、
次の2つを上げている。
1.少子化を防ぎ、緩和する対策
2.少子化によって生じるデメリットを緩和する対策
   マクロ対策 ①労働力、②社会保障、③経済成長
   ミクロ対策 ①地域格差(人口減少地域の維持)
           ②家族格差(孤立する人々の「経済
           生活」や「アイデンティティ」の維持)

それでは、この対策をどのように実現していくかであるが
少子化を反転させるための4つの施策として、次のものが
挙げられている
①全ての若者に、希望がもてる職につけ、将来に
 わたって安定した収入が得られる見通しを与えること。
②どんな経済状況の親の元に生まれても、子供が
 一定水準の教育が受けられ、大人になることを保証
 すること。
③格差社会に対応した男女共同参画を進めること。
④若者にコミュニケーション力をつける機会を提供
 すること。

これらのことは、確かにそのとおりだと思うが

では実際にどのように進めていくかというのは

かなり難しい問題であると思う。

少子化問題というと、経済的な問題で結婚ができない

若者を想像しがちであるが、この本によれば、

『男女交際が活発化し、恋愛に関する意識が変化した
ため、「好きでも結婚する必要がない」状況が出現し、
結果的に結婚が経済問題となり、今の日本では結婚
が少なくなるというパラドックスが生じた。』

ということのようであり、経済問題は結果的に

重要視されているに過ぎないということのようである。

だとすれば、少子化問題は経済的に国を豊にする

だけでは足りないということになる。

逆に日本人の多くが貧乏になれば、一人では生きて

いけず、子供だけは増えていくということもある。

何年もかかる子供を増やすという対策ももちろん必要

だが、できることとしては、少子化によって生じる

デメリットを緩和する対策を早急に進めることが

現実的な気がするのは、私だけだろうか。

【目次】(「BOOK」データベースより)
序章 少子社会日本の幕開け/第1章 日本の少子化は、いま/第2章 家族の理想と現実/第3章 少子化の原因を探るにあたって/第4章 生活期待と収入の見通し/第5章 少子化はなぜ始まったのかー一九七五~九五年/第6章 少子化はなぜ深刻化したのかー一九九五年~/第7章 恋愛結婚の消長/第8章 少子化対策は可能か

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2015年9月17日 (木)

高野誠鮮さんの『ローマ法王に米を食べさせた男』を読んでみた

 (5つが最高)

この本は、TBSテレビの「ナポレオンの村」というドラマの

原案となった本です。

もちろん市長との対立などはなく、一公務員が

限界集落となってしまった地方の再生のために

どのようなことを、どのように行ったかの記録です。

作者の高野さんは、羽咋(はくい)市役所の職員です。

その一方で、代々続く日蓮宗の僧侶でもあるらしく、

羽咋に戻るまでは、テレビ関係の仕事もしていて

UFOの番組を担当していたという、公務員とは思えない

経歴の持ち主でもあります。

基本的には農業を中心とした村おこしですが、

とにかく情報発信能力に優れ、次々に行動を起こし

それを戦略的に発信し続けます。

また、いろいろなことを自分で調べて、コスト削減なども

同時に実現してしまいます。

会議を行わないことや、なんでも事後報告で済ませる

ことは、すぐには真似ができない組織人にも

この行動力は参考になるのではないかと思います。

役人の多くが、この人のような考えを持って仕事を

してくれていれば、もっと日本は良くなったのにと

思う反面、このような人を活躍させないようにする

現在の体制の問題の大きさも考えさせられる本です。

会議や報告が大切なことは分かるけど、そればかり

では、いずれ死を迎えることも組織の常でしょう。

やる気がある人が、要領よく立ち回るというのは

なかなか難しいことではあるけれど、組織って

そういう人を上手く使うためにあるようにも思うけれど

実際には要領のいい人をねたみ、やる気をそぐのが

組織の役割のようになってしまっている。

高野さんのような人と、それを支えて協力する人、

もっともっと増えてくれることを願うばかりです。

【目次】(「BOOK」データベースより)
第1章 否定する。-そして限界集落の惨状の本質を見抜く(「限界集落:の悲しい現状/「山猿呼ばわりされた」人々 ほか)/第2章 人を動かす。-たった60万円で限界集落から脱却させる(よろ者をどう受け入れるか/“抜魂”で仏壇の不安を解消 ほか)/第3章 伝え、広める。-空前絶後。神子原米のブランド化PR戦略(売りたい商品の長所を徹底調査/ブランドを生む「ロンギング」作戦 ほか)/第4章 人を巻き込む。-「UFOで町おこし」を本当に実現!(560年続く寺の家に生まれて/「町おこし退会」だけでは意味ナシ ほか)/第5章 くつがえす。-“腐らない米”を武器にTPPに勝つ!(JAと組んで、TPPに挑戦!“奇跡の人”木村秋則さんを口説く ほか)/第6章 最後も、やらかす。-定年前に、世界を相手に真剣勝負!(定年前に与えられた無理難題/ど素人だから、わかることがある ほか)

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2015年9月15日 (火)

橘玲さんの『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方 2015』を読んでみた

 (5つが最高)

2002年12月に発売された旧版の2015年版。

旧版は、①「資産運用論」で金融資産や不動産・

生命保険について語り、②「マイクロ法人論」で

個人と法人の2つの人格を使い分ける技術を

提唱し、③「PT論」として永遠の旅行者(Perpetual

Traveler)と呼ばれる行き方を紹介していました。

新版は、初めに「黄金の羽根」ができるまでを

追加し、旧版を出版した当時の著者自身について

書かれています。

旧版以外にも、著者の作品を読んできた身として

そこらへんの事情と、その当時の出版業界の事情

などは、とても面白く読めます。

また、旧版の①と②に対応する部分には、「追記」

として現在でも通用する「ルール」や「常識」である

のかどうかについて、検証がされています。

③については、今回は日本がグローバル化された

こともあって、削除されています。

前回、旧版を読んだときはロバート・キヨサキさんの

『金持ち父さん』シリーズとの比較から、日本の法律

や税制などに合わせてはあるが、それほど内容に

違いがあるとは感じなかったが、今回新版を読んで

①②に書かれていたことが『金持ち父さん』よりも

さらに具体的で、資産運用などの指針としては明確な

ものとなるような印象を受けた。

「チャートで未来は予測できない」とか「短期投資は

最高のギャンブルである」なんて、今の自分を諌める

には、これほど厳しい言葉はないように思える。

この本を読むと、もう資産運用の方法には、ほとんど

答えが出ていることを教えられる、良い本である。

【目次】(「BOOK」データベースより)
「黄金の羽根」ができるまで/1 人生を最適設計する資産運用の知識(世界にひとつしかないお金持ちの方程式/誰も知らない資産運用の常識/不動産の呪縛を解き放つ法則/生命保険は損をすることに意味がある/見えない「貧困化」が拡がっている)/2 人生を最適設計するマイクロ法人の知識(国家に惜しみなく奪われるひとびと/「個人」と「法人」、ふたつの人格を使いこなす/マイクロ法人で人生が変わる/不可能を可能にする奇跡のファイナンス/税金について知りたいほんとうのこと/税務調査の裏と表)/3 人生を最適設計する働き方(クリエイティブクラスとマックジョブ)

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2015年9月13日 (日)

高橋源一郎さんの『ぼくらの民主主義なんだぜ』を読んでみた

 (5つが最高)

この本は、高橋さんが朝日新聞の「論壇時評」に

2011年4月28日から2015年3月26日まで連載して

いたものを収録したものだ。

そこには論壇を論じるという制約はあるものの、

高橋さんの関心にしたがって、時事に関することが

取り上げられていて、とても刺激的である。

私は正直言って、高橋さんのデビュー作から

いくつかの小説を読んで、その頭の良さは感じたが

特に内容的には面白さを感じられずに、長いこと

その本を手に取ることがなくなっていた。

けれど、今回この本を手にしてみて、やはり

すごい人だということを実感したし、いくつか最近の

作品などを読んでみたいと思わせられた。

また、評論でありながら、論壇における優劣を判定する

ようなことを押し付けてこないスタイルも好ましい。

それでいて、さらりと自分の主張を織り込むところも

高橋さんらしさが感じられる。

たとえば、グラフィティ(落書き)アートを毛嫌いする人の

理由として、高橋さんは次のように指摘する。

『自分がおとなしく従っている秩序に反抗する人間が
疎ましいのだ。自分みたいにおとなしくいうことを聞け、
と思うからだ。それは、デモを嫌う人たちの気持ちと
似ている。』

この指摘はまさにそのとおりだと思う。

以前、秩序を利用しておきながら、形だけは反抗して

いるようなパフォーマンスをするIT長者がいたが、

彼がデモを嫌う理由も、これに尽きる。

彼は、秩序の破壊者などではない。

だから、証券市場の秩序を利用して儲けることができた

のだし、会計の秩序を無視して捕まったのだ。

そして、戦争になったら、外国に逃げると言っている。

他人が作った秩序に、どこまでも従順な人だと思う。

このグローバリズムに侵された21世紀に、どこか遠くの

国での戦争などありはしないのに。

また、高橋さんは、デモに関して次のような指摘を

することも忘れない。

『もちろん、「『デモによってもたらされる社会』は、必ず
しも幸福な社会とは限らない」という佐藤卓己の懐疑
には、十分な理由がある。「ドイツのナチ党はデモや
集会で台頭したし、それを日常化したのが第三帝国で
ある」ことは事実だからだ。
 だが、ナチ党が主導したデモや集会は「独裁と暴力」
を支えるものだった。いま、ぼくたちが目にする「新しい
デモ」は、その「独裁と暴力」から限りなく離れることを
目指しているように見える。』

安保法制に賛成する人たちのデモだってあるし、

原発推進派のデモだってあるだろう。

私たちが目にしているものが「新しいデモ」である

保証だってないかもしれない。

けれど、それでもデモがない社会より、ある社会のほうが

健全であると私は思う。

いろいろなことを考える上で、読んでおきたい1冊である。

【目次】(「BOOK」データベースより)
ことばもまた「復興」されなければならない/非正規の思考/みんなで上を向こう/スローな民主主義にしてくれ/柔らかくっても大丈夫/「そのままでいいと思ってんの?」/一つの場所に根を張ること/「憤れ!!」/「憐れみの海」を目指して/民主主義は単なるシステムじゃない〔ほか〕

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2015年9月10日 (木)

柄谷行人さんの『脱原発とデモ そして、民主主義』を読んでみた

 (5つが最高)

この本は、様々な人が脱原発に関して意見を述べている

ものであるが、その中でも、特に柄谷さんの「デモで社会は

変わる」に注目してみた。

『私はデモに行くようになってから、デモに関していろいろ
質問を受けるようになりました。それらはほとんど否定的
な疑問です。たとえば、「デモをして社会を変えられるのか」
というような質問です。それに対して、私はこのように答え
ます。デモをすることによって社会を変えることは、確実に
できる。なぜなら、デモをすることによって日本の社会は、
人がデモをする社会に変わるからです。』

もちろん、禅問答でもなければ、ふざけているのでもない。

誰かがデモをしなければ、いつまでたってもデモは起き

ないし、そもそも社会を変えるということは、その誰かを

自分が買って出るしかないのである。

そして、デモをすることによって、デモに参加した人々が

変わり、確実に社会は変わるのである。

『デモは主権者である国民にとっての権利です。デモが
できないなら、国民は主権者ではない、といってもいい。』

『私が受けるもう一つの質問は、デモ以外にも手段がある
のではないか、というものです。確かに、デモ以外にも手段
があります。そもそも選挙がある。その他、さまざまな手段
がある。しかし、デモが根本的です。デモがあるかぎり、
その他の方法も有効である。デモがなければ、それらは
機能しません。今までと同じことになる。』

『だから、私はこう信じています。第一に、反原発運動は
長く続くということ、です。第二に、それは原発にとどまらず、
日本の社会を根本的に変える力となるだろう、ということです。
皆さん、ねばり強く戦いを続けましょう。』

柄谷さんが言うように、日本はデモをする社会になった。

実際に、安保法制に関するデモもあちこちで起きている。

デモで社会は変わりつつある。

ねばり強く戦うために、ぜひ読んでおきたい1冊である。

【目次】(「BOOK」データベースより) 全部の原発を止めるまで(2011年5月7日)(松本哉)/原発をなくす有効な方法ー落選運動と不買運動(5月7日)(宮台真司)/多大な犠牲を必要とする原発(6月11日)(雨宮処凛)/デモジャンキーが見たこの1年半(雨宮処凛)/俺たちが新しいエネルギーだ(6月11日)(山下陽光)/抵抗の発明者の発見(山下陽光)/経済のために生きてるわけじゃない(8月6日)(鶴見済)/デモに行けば無力感がやわらぐ(鶴見済)/原爆が投下された日に…(8月6日)(毛利嘉孝)/民主主義を救い出すこと(毛利嘉孝)〔ほか〕

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2015年9月 5日 (土)

勝間和代さんの『会社に人生を預けるな』を再び読んでみた

 (5つが最高)

この本を以前に読んだときは、リスクリテラシーを
高めるために国レベルで行う勝間さんの3つの
提言のうち、以下の③について次のように取り上げた。

『 ①源泉徴収・年末調整制度の見直し
 ②道州制の導入
 ③終身雇用制の緩和

中でも、さまざまなリスクの根底にあるのが、

「終身雇用制度」であると主張している。

これまで以上にリスクにさられている日本の現状、

特に政治の停滞・経済の停滞・労働問題の

解決策を探れば探るほど、その最大の原因は

「終身雇用制度」に問題の核心があるとする。

どうしてかという部分は、この本の中心をなしているので

各自で読んでいただきたいと思うが、

この主張には明らかなタイミングの悪さと

勝間さんの経歴への嫉妬から来る反発が

強烈な批判を形成してしまっているように思う。

世間では非正規社員の雇用問題をどうするか、

どうしたら正規社員になり下流から抜け出せるか、

リストラされないためにはどうしたらいいのか、

ということが話題になっているのである。

勝間さんの『無理なく続けられる 年収10倍アップ

勉強法』が売れたのも、年収を10倍にするため

というよりは、いかにすればリストラされない優秀な

社員になれるのかという涙ぐましい努力の1つの

指針であったはずなのだ。

確かに『金持ち父さん』シリーズでもサラリーマンの

ままでは金持ちにはなれないので、起業することが

薦められている。

勝間さん自身も起業して雇われない生き方を選択

できているので「終身雇用制度」に諸問題の原因が

あると考えているのだろうが、事実そうだとしても、

サラリーマンにとっての最大のリスクは

やはり目先のリストラなのだ。

社会が良くなる前に自身の生活が改善しなければ

やっていけないというサラリーマンは多いはずだ。

ましてや能力の高くない人間にとって

終身雇用制の緩和は明らかに劇薬だ。

勝間さんが本当に社会を良く変えていこうと考えて

いるのなら、平均からそれ以下の人(要するに社会の

半分の人)に、いかに自説を納得してもらえるかが

課題になってくるように思う。』

私は今、勝間さんに納得のいくような説明を求めない。

理由は簡単で、私自身がリストラされてしまったからだ。

この本を読んだ5年前から、私は自分がリストラされる

危機感と、それでもどこかで自分の能力を過信する

ところがあったのだろう。

しかし、現実は単純であった。

リストラは、能力の高低とは関係なく、誰にでも

訪れる可能性のあるものである。

そのことも5年前から分かっていた気がする。

ただ、自分にだけは訪れないと漠然と考えていた。

勝間さんはエピローグで次のように書いている。

『「リスクは一生の友」、そして「リスクはチャンス」』だと。

「リスクは一生の友」だということは、身にしみている。

「リスクはチャンス」だと言える日が自分にも来るもの

なのか、それはまだ分からない。

この本を読んで、他人事だと思える人は幸せである。

けれど、何かを始めようと思える人は、もっと幸せな

人なのかもしれないと、再読して思う。

【目次】(「BOOK」データベースより)
プロローグ リスク・リテラシーと終身雇用制
第1章 会社に人生を預けるな(終身雇用制は現代の小作農、または奴隷制/終身雇用制とワーク・ライフ・バランス/さまざまな歪みの原因/女性は働きにくく、若者は報われない)
第2章 リスク・リテラシーを磨く(なぜ、貯蓄から投資が進まないのか/日常生活に潜むリスク/リスクは常に偏在する)
第3章 「お上」に人生を預けるな(「お上」中心主義/日本の巧みな支配構造/現代資本主義が抱えるリスク/リスクを予見する能力)
第4章 21世紀のパラダイムシフト(人生はコントロールするもの/日本が導入すべき三つのもの/よりよく生きるために/問題解決の鍵)
エピローグ リスクを取る自由 ※参考文献、及び推薦図書

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