山田昌弘さんの『少子社会日本』を読んでみた
(5つが最高)
この本は、2007年に出版されたものであるが
社会問題としての少子化に対して詳細な分析を
行い、その対策を提言している。
まず、少子化の要因として、次の点を上げている。
1.経済的要因
①結婚や子育てに期待する生活水準が
上昇して高止まりしていること
②若者が稼ぎ出せると予想する収入水準が
低下していること
2.男女交際に関する社会的要因
①結婚しなくても男女交際を深めることが
可能になったという意識変化
②魅力格差の拡大
そして、日本の少子化は、①経済・社会、そして男女
交際パターンのグローバルな構造変化の中で、
②日本固有の文化的要因(パラサイト・シングル
現象)が重なって生じたものであるとしている。
それに対して、少子化対策には2種類あるとして、
次の2つを上げている。
1.少子化を防ぎ、緩和する対策
2.少子化によって生じるデメリットを緩和する対策
マクロ対策 ①労働力、②社会保障、③経済成長
ミクロ対策 ①地域格差(人口減少地域の維持)
②家族格差(孤立する人々の「経済
生活」や「アイデンティティ」の維持)
それでは、この対策をどのように実現していくかであるが
少子化を反転させるための4つの施策として、次のものが
挙げられている
①全ての若者に、希望がもてる職につけ、将来に
わたって安定した収入が得られる見通しを与えること。
②どんな経済状況の親の元に生まれても、子供が
一定水準の教育が受けられ、大人になることを保証
すること。
③格差社会に対応した男女共同参画を進めること。
④若者にコミュニケーション力をつける機会を提供
すること。
これらのことは、確かにそのとおりだと思うが
では実際にどのように進めていくかというのは
かなり難しい問題であると思う。
少子化問題というと、経済的な問題で結婚ができない
若者を想像しがちであるが、この本によれば、
『男女交際が活発化し、恋愛に関する意識が変化した
ため、「好きでも結婚する必要がない」状況が出現し、
結果的に結婚が経済問題となり、今の日本では結婚
が少なくなるというパラドックスが生じた。』
ということのようであり、経済問題は結果的に
重要視されているに過ぎないということのようである。
だとすれば、少子化問題は経済的に国を豊にする
だけでは足りないということになる。
逆に日本人の多くが貧乏になれば、一人では生きて
いけず、子供だけは増えていくということもある。
何年もかかる子供を増やすという対策ももちろん必要
だが、できることとしては、少子化によって生じる
デメリットを緩和する対策を早急に進めることが
現実的な気がするのは、私だけだろうか。
【目次】(「BOOK」データベースより)
序章 少子社会日本の幕開け/第1章 日本の少子化は、いま/第2章 家族の理想と現実/第3章 少子化の原因を探るにあたって/第4章 生活期待と収入の見通し/第5章 少子化はなぜ始まったのかー一九七五~九五年/第6章 少子化はなぜ深刻化したのかー一九九五年~/第7章 恋愛結婚の消長/第8章 少子化対策は可能か
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