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2015年9月19日 (土)

山田昌弘さんの『少子社会日本』を読んでみた

 (5つが最高)

この本は、2007年に出版されたものであるが

社会問題としての少子化に対して詳細な分析を

行い、その対策を提言している。

まず、少子化の要因として、次の点を上げている。
1.経済的要因
 ①結婚や子育てに期待する生活水準が
  上昇して高止まりしていること
 ②若者が稼ぎ出せると予想する収入水準が
  低下していること
2.男女交際に関する社会的要因
 ①結婚しなくても男女交際を深めることが
  可能になったという意識変化
 ②魅力格差の拡大

そして、日本の少子化は、①経済・社会、そして男女
交際パターンのグローバルな構造変化の中で、
②日本固有の文化的要因(パラサイト・シングル
現象)が重なって生じたものであるとしている。

それに対して、少子化対策には2種類あるとして、
次の2つを上げている。
1.少子化を防ぎ、緩和する対策
2.少子化によって生じるデメリットを緩和する対策
   マクロ対策 ①労働力、②社会保障、③経済成長
   ミクロ対策 ①地域格差(人口減少地域の維持)
           ②家族格差(孤立する人々の「経済
           生活」や「アイデンティティ」の維持)

それでは、この対策をどのように実現していくかであるが
少子化を反転させるための4つの施策として、次のものが
挙げられている
①全ての若者に、希望がもてる職につけ、将来に
 わたって安定した収入が得られる見通しを与えること。
②どんな経済状況の親の元に生まれても、子供が
 一定水準の教育が受けられ、大人になることを保証
 すること。
③格差社会に対応した男女共同参画を進めること。
④若者にコミュニケーション力をつける機会を提供
 すること。

これらのことは、確かにそのとおりだと思うが

では実際にどのように進めていくかというのは

かなり難しい問題であると思う。

少子化問題というと、経済的な問題で結婚ができない

若者を想像しがちであるが、この本によれば、

『男女交際が活発化し、恋愛に関する意識が変化した
ため、「好きでも結婚する必要がない」状況が出現し、
結果的に結婚が経済問題となり、今の日本では結婚
が少なくなるというパラドックスが生じた。』

ということのようであり、経済問題は結果的に

重要視されているに過ぎないということのようである。

だとすれば、少子化問題は経済的に国を豊にする

だけでは足りないということになる。

逆に日本人の多くが貧乏になれば、一人では生きて

いけず、子供だけは増えていくということもある。

何年もかかる子供を増やすという対策ももちろん必要

だが、できることとしては、少子化によって生じる

デメリットを緩和する対策を早急に進めることが

現実的な気がするのは、私だけだろうか。

【目次】(「BOOK」データベースより)
序章 少子社会日本の幕開け/第1章 日本の少子化は、いま/第2章 家族の理想と現実/第3章 少子化の原因を探るにあたって/第4章 生活期待と収入の見通し/第5章 少子化はなぜ始まったのかー一九七五~九五年/第6章 少子化はなぜ深刻化したのかー一九九五年~/第7章 恋愛結婚の消長/第8章 少子化対策は可能か

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