2011年3月15日 (火)

陰山英男さんの『「陰山学級」学力向上物語』を読んでみた

陰山さんの『「陰山学級」学力向上物語
山口小学校で私が教えたこと、学んだこと』を読んでみた

 (5つが最高)

この本は、「百ます計算」でおなじみの陰山さんが

兵庫県朝来郡朝来町立山口小学校の14年間に

取り組んだ様々なことを未公開話とともに綴っている。

まず、山口小学校の取り組みをざっと挙げると、

最初に取り組んだのは体力づくり。

次が読み書き計算重視ということで、「百ます計算」

と「音読」の繰り返し。

スパルタ式だったため当初は順調だったが

3、4年目になると宿題を出しすぎるとか、

子供に対する叱り方がきついといった批判もでてくる。

そこでアンケートを実施し、その結果を説明すると

ともに医学博士などの専門家を招いて父母への

協力を呼びかける学習会を行う。

また、校則を見直し、家庭との責任分担をはっきりし、

学校と家庭がそれぞれの自覚を持つようにする。

さらに、具体的な指導方法としては、親子・兄弟の

計算力競争や算数の文章題の手作りプリント、

音読から暗唱へ、物語の読み聞かせ、日記を書かせる、

漢字練習の反復など、今では陰山メソッドとして知られ

ている数々の方法が紹介されている。

どちらかというと、教師の方が読んで参考にする本で

あるような感じだが、家庭での取り組みにも充分に

参考になるはずである。

なお、内容は、2002年に発売された『子供は無限に

伸びる』に大幅加筆したものである。

【目次】(「BOOK」データベースより)
序章 基礎学力がない子供たち/第1章 「でもしか」教師からスタートした私の教育人生/第2章 山口小学校での取り組み/第3章 私たちの指導法・実践編/第4章 子供たちが変わった/第5章 「詰め込み教育」という批判を超えて/第6章 教育者としての喜び/第7章 山口小学校の実践を支えてくれた人たち/第8章 転機、そして新たな決断/第9章 陰山学級「最後の授業」

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2011年3月 6日 (日)

陰山英男さんの『学力低下を克服する本』を読んでみた

陰山英男/小河勝(オゴウマサル)さんの
『学力低下を克服する本
小学生でできること中学生でできること』を読んでみた

 (5つが最高)

この本は、百ます計算で有名な陰山メソッドの陰山さんと

中学生用の学習参考書「未来を切り開く学力シリーズ」の

小河さんがタッグを組んで、小・中学校の連携により、

学校で何ができるか、家庭で何ができるかを具体的に

教えてくれている。

内容は、「小学校でできること」と「中学校でできること」、

また、小学生と中学生に対し「家庭でできること」と

「社会でできること」を詳しく解説してくれている。

具体的には、小学生や中学生はどういうところで学習に

躓き、どういう理由でやる気をなくしてしまうのかという

ことが、算数や国語の単元レベルまで細かく説明し、

どのようなトレーニングが有効かが書かれている。

たとえば、陰山メソッドはあまりにも有名になので

小河さんの「転写法」という学習法を紹介すると、

これはその日学校で習ったことを、もう一度ノートに

自分自身の力で再現させるというものである。

①ノートや教科書を見ないで再現させる
 (授業に集中しているかを子供につかませる)
②思い出せない部分はノートや教科書を見る
 (間違いを訂正し、授業全体を記憶しなおす)
③繰り返し続け、そっくり再現させる
 (自分の分かりやすい言葉を加えても良い)
④その日習った内容や関連分野を事典などで調べる
⑤ノートに書いたことで分からない部分は、
 赤でマークを付けておき、翌日、先生に聞く

この方法では、理科の心臓の学習などでは

部分の名称の記憶ではなく、心臓それ自体を

何も見ずに再現できるようにすることにより

どんな角度から問題を出されても答えることが

できるという強みがある。

そして、この方法はけっして図にとどまらない。

社会の地理はもちろん、公民の憲法の構成図、

歴史の年表など、暗記物には効果的である。

このような細かなノウハウが、この本には満載である。

そして、基礎学力をつけることの大切さが

ノウハウとともに、何度も繰り返し語られている。

これは、基礎学力をつけるのは、その子が自らの

意志によって将来を選択していくためだからである。

だからこそ、まず親が変わらなければならないのだ。

この本は、小学校と中学校の教師による、

親のための指導書なのである。

学校にやってもらうことは当然ある。

しかし、全てを学校任せにしてはいけないのである。

親にもやるべきことがあるはずと気づいた人はぜひ

この本を読んでみることをオススメします。

【目次】(「BOOK」データベースより)
第1章 小学校でできること/第2章 中学校でできること/第3章 未来を切り開く学力/第4章 家庭でできること 小学生篇/第5章 家庭でできること 中学生篇/第6章 社会でできること 小学校篇/第7章 社会でできること 中学校篇/終章 子供の可能性を信じる

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2011年3月 3日 (木)

親野智可等さんの『「楽勉力」で子どもは活きる!』を読んでみた

親野さんの『「楽勉力」で子どもは活きる!
勉強好きになるとてもいい方法』を読んでみた

 (5つが最高)

この本は、親が子どもに学力をつけたいと思ったら、

まずすべきことは子どもを勉強好きにしてやること

というコンセプトのもと生活の中にいかに勉強を

楽しく取り入れていくかということが書かれている。

また、親子の触れ合いの中でちょっとした知的刺激を

子供に与えてやる「楽勉」の提案でもある。

実践的で具体的で、すぐできる方法が満載である。

アマゾンの「内容紹介」から一部抜粋すると以下のとおり。

【算数のある生活】
カステラを食べながら「分数」を体験的に理解
「百玉そろばん」で「十進法」も「補数」も身につく!
【理科のある生活】
「温度計・湿度計」で天気がわかる
「星座カルタ」で天文博士に!?
【国語のある生活】
「親子日記」でコミュニケーションと書く力はばっちり
「国語辞典」は楽しいおもちゃになる
【社会のある生活】
博物館、遺跡、史跡などで本物体験をすると、
歴史が好きになる。
「親子散歩」で「地域社会の学習」に興味が持てる

私の子供は女の子だけれど、国立科学博物館や

江戸東京博物館に連れて行ったら、とても喜んでくれた。

それで何かがすぐに変わるというのではもちろん

ないけれど、それでも何か感じてくれることがあれば

それでいいのである。

国語辞典なども早くから買い与えたので、最初は

なかなか引けなくて子ども自身もイライラしていた

ようだが、今ではヒマを見つけては引いている。

そして、これから我が家で挑戦していこうと思っている

ことは、数に対する地頭を鍛える3つの方法だ。

①毎日の生活の中で、たくさんのものを実際に
 数える経験をたくさんさせること
②数を唱える経験をたくさんさせること
③数を書いたり並べたりする経験をたくさんさせること

この本には、親野さんの本らしく、ちょっとした知的

刺激で生活の中に「知識の杭」を立てる方法が

満載で、実に読みごたえがあり、試してみるものが

たくさん詰まっていて、お得感たっぷりである。

何か子供のために始めてみようと考えている方は

ぜひこの1冊から刺激を受けてみてください。

【目次】(「BOOK」データベースより)
第1章 「楽勉」とは何か?/第2章 算数のある生活/第3章 理科のある生活/第4章 国語のある生活/第5章 社会のある生活/第6章 「学習漫画」は楽勉の最高傑作/第7章 ちょっとした知的刺激で生活の中に「知識の杭」を立てる/第8章 「楽勉カルタ」で楽々暗記ができる/第9章 「ヒャッキン(百円均一ショップ)」の楽勉グッズ/第10章 1日1記事!「小学生新聞」で学力は必ずアップする

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2011年3月 2日 (水)

陰山英男さんの『百ます計算の真実』を読んでみた

陰山さんの『百ます計算の真実』を読んでみた

 (5つが最高)

この本は、陰山メソッドとして有名になった百ます計算

についてだけではない、充実した教育論となっている

「経済格差=教育格差」、「子どもたちは史上最悪に

荒れている」、「日本の教育は改革が必要」など、

教育の常識とされていることの8割は間違っているとし、

学力低下問題の真実と本当に効果的な対策について

陰山さんがデータに基づき丁寧に解説してくれている。

そして、陰山さんは百ます計算だけでは限界がある

ことも、とてもよく分かっているので、それ以外にも

色々と陰山メソッドとして子供たちのためになることを

やり続けているところがスゴイのである。

百ます計算に批判的な人は、それだけを取上げ

何か問題があるように言うことが多いが

ではその人たちが子供に何かしてあげたか、

成果の上がる教育をしたのかと問えば

それらの批判がくだらないものであることが分かる。

そして、そのくだらない批判が日本の教育を悪く

していた原因でもあるのだ。

詰め込みが悪い、競争が悪いという大人たちは

みんな詰め込みや競争によって今の発言できる

地位を得ている人ばかりである。

私が考えるところでは、悪かったのは競争ではなく

競争に負けた人への敗者復活の道がなかったこと

であるにすぎない。

極論すれば、詰め込みは悪くなく、何を詰め込む

のかさえ問題ではない。

必要なのは、詰め込みによって脳を鍛えること。

若いうちに脳を鍛えられるなら、それこそ方法は

何でもいいのである。

そして、出来なかったことが出来るようになり、

自信が得られるなら、百ます計算は最も単純で

効果的な指導方法である。

ただ、注意しなければならないのは、読み書き

計算は、正しい生活習慣の上に成り立つものであり

多様な学習の基礎になるものであるということだ。

ここのところさえ間違わなければ、百ます計算は

とても有効な指導法である。

そして、「基礎基本+知的好奇心=本当の学力」である。

自宅での百ます計算導入を考えている方は

ぜひこの本を読んで、正しく取り組んでもらいたい。

【目次】(「BOOK」データベースより)
1章 百ます計算の真実/2章 これでいいのだ、日本の教育/3章 教育の常識を疑え!/4章 今、家庭とは/5章 受験学力は生きる力/6章 基礎基本だけじゃ学力は伸びない!/7章 日本の教育はどこへいく?

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2011年2月16日 (水)

陰山英男さんの『陰山メソッド家族の学習奮闘記』を読んでみた

陰山さんの『陰山メソッド家族の学習奮闘記
30家族の成功例』を読んでみた

 (5つが最高)

この本は、陰山さんが開設している『陰山学級物語』と

いうホームページの掲示板に投稿してきた30家族の

例と、陰山さんのアドバイスから構成されている

2003年の本ということで少し古いが、各家族の

取り組みが紹介されていて参考になる。

陰山さんの考えをもとにした様々な家庭が、さらに工夫を

凝らした家庭学習を実践している様子は、読んでいて

とても刺激を受けるものである。

学習法や教材については、陰山さんのもの以外も含めて

たくさん紹介されていて、とても参考になる。

「陰山メソッド」と言われているものは、それぞれの家庭の

工夫によってさらに進化し続けているのだと思う。

参考資料として、各学年の「基礎学力作りの手引き」と

「漢字、計算チェックリスト」や、「漢字の音読」と「熟語の

音読」の例、「漢字の書き順」と「漢字の書き取り問題」の

例、「百ます計算」と「エレベータ計算」の例など、

もっと詳しく知りたいと思わせる教材例も紹介されている。

ここに紹介されている成功例に触発されて、私も子供に

いくつか教材を買い与えたが、親子で取り組むには

この本がとても良い入門書の役割を果たしてくれる。

「陰山メソッド」を取り入れたいという人は、ぜひ読んで

みて、刺激を受けてもらいたい。

【目次】(「BOOK」データベースより)
第1章 「学年別」家族の学習奮闘記(小学校低学年/小学校中学年 ほか)/第2章 「課題別」家族の学習奮闘記(読み/書き ほか)/第3章 「学びの土台」家族の学習奮闘記(学習習慣/家庭生活 ほか)/第4章 家族の学習奮闘記ショートレポート集(ハンドルネーム長島真弓さんの場合―「午後5時半の夕食」で勉強と生活のリズムをつくった/ハンドルネームさくらさんの場合―きょうだいが互いに学習意欲を高め合った ほか)

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2011年2月15日 (火)

親野智可等さんの『親力革命』を読んでみた

親野さんの『親力革命 「親」であることに
ふと迷ったときに読む本
』を読んでみた

 (5つが最高)

この本の作者は、公立小学校の教師ということで、

日々、教育現場の最前線に立つ中で、親が子どもに

与える影響力の大きさを痛感し、その経験や知識を

少しでも子育てに役立ててもらいたいという思いから、

2003年よりメールマガジンの発行をしている。

そして、そこから発展する形で色々な場面で

親の大切さということを中心に様々な人に

実に分かりやすいアドバイスをし続けている。

この本のもとになっているものも、ベネッセの

教育情報サイトにある親野さんのコーナーであり

そこに掲載されたものに加筆・改筆したものを

編集しなおして1冊の本になっている。

私も子育てをする中で、どうしても分からない問題に

出くわすことがあり、その時々に色々な教育者の

本を読んだが、親野さんのアドバイスが一番気軽に

取り組めて効果があるように思う。

この気軽に取り組めることが実は大切で、

そうでなければ毎日のしつけなどは正直続かない。

この本は、そんな迷える親に対して、親野さんが

「親力」実践アドバイスとして、35の質問に

丁寧に回答してくれている。

たとえば、学校の悩みや勉強嫌いなどは教師らしい

きちんとしたアドバイスであることはもちろんのこと、

家庭での悩みや子供の性格なども誰かに相談したい

と思う人はきっと多くいるはずで、そんな学校以外の

ことに対しても実に暖かいまなざしで子供を見ている

親野さんらしい的確なアドバイスはさすがである。

自由放任主義という言葉があるが、私などは

どちらかというと自由に育てられてきたほうなので

自分の人生を振り返ったときに本当にそのような

教育で良かったのかと疑問に思うこともある。

ただ、そのようにしか育てられていないので

それ以外の方法や自分の子供とのかかわり方と

言っても、なかなか自信を持って取り組めない。

そんな時、親野さんのアドバイスは実に的確。

「その気になるまで放っておいたほうがいいの

でしょうか?」という疑問に対し、はっきりと

「いいえ、放っておいてはいけません」と回答している。

子供は放っておいたら、いつまでたっても勉強を

やる気になどならないので、親の側からの適切な

働きかけが絶対に必要だと断言している。

そう言われてみれば、私も自由にさせてもらっていた

ように思うが、実際は小さかった頃のことをそんなに

はっきりと覚えているわけではないし、本当は

親からの働きかけによって勉強に取り組み始めた

ことを忘れてしまっただけなのかもしれない。

自分が昔は子供であったという理由だけで、

親になれば自然と子育てができるようになる

わけではない。

地域や祖父母といった色々な人に育てられるわけ

ではない最近の子供には、やはり適切なアドバイス

をくれる、このような本はなくてはならないものだ。

悩みながらの子育てほど大変なものもない。

もし周りに相談する人がいないなどで、悩みを抱えた

まま子供と向き合っている人がいるなら、ぜひこの本を

手にとってみることをオススメしたい。

【目次】(「BOOK」データベースより)
第1章 小学校入学前後は不安がいっぱい/第2章 私の子育て、これでいいの?/第3章 友達関係はトラブルだらけ/第4章 学校の悩みは、貴重な体験をしているからこそ/第5章 勉強嫌いは「楽勉」で/第6章 新たな悩みは「成長」のあかし

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2011年1月 5日 (水)

東浩紀さんの『父として考える』を読んでみた

東浩紀/宮台真司さんの『父として考える』を読んでみた

 (5つが最高)

この本は、作者の言うとおり一般の「育児本」のような

育児体験について語られた本ではない。

東さんの「まえがき」によれば、次のようになる。

『数年前に相次いで子を授かった新人類世代の社会学者と
団塊ジュニア世代の批評家が、文字どおり「父として考え」て
作った対談本、つまり、少子化やら非婚やらが話題になって
いるいま、たがいの思考や関心のちがいについて、あらため
て「父」としての立場から意見を交換した書物である。』

ここでの社会学者とは宮台真司さんのことであり、

批評家とは東浩紀さんのことであるが、この二人の

これまでの活動を知っている人には、ぬるい対談の

ように映るのかもしれないが、私には少し違った。

私はもともと吉本隆明さんの本を読むようになったことが

きっかけで、その後も現代思想や柄谷行人さんを

読み続けてきた人間であった。(今でも好きである)

それが思想や文学から離れていくきっかけになった

ひとつの出来事が、浅田彰さん以降の宮台さんや

東さんの本を読んだことであった。

はっきり言えば、浅田さんの言うことは、現代思想に

ついては感心したが、それ以外には興味が持てなかった。

宮台さんの言うことは、社会学としても賛同できなかった。

東さんの言うことは、現代思想については感心したが、

オタク談義には、まったく付いていけなかった。

ここら辺の事情は、当時から思想や社会学に興味が

あった人なら理解してくれるのではないかと思う。

そして、そのような私がこの本を興味深く読んだ理由を

東さん自身が「まえがき」の中で自覚的に記述している。

『宮台真司氏は1990年代に援交少女を擁護した社会
学者として、東浩紀はゼロ年代にオタクを擁護した批評
家として、それぞれ「父になる」こととは対極にある、
リベラルで破壊的でいわば反家庭的な価値観を
体現する言論人として記憶されているはずである。
むろん、宮台氏もぼくもそのような単純な主張を行った
つもりはない。しかし、ぼくたちふたりの活動がそのような
ものとして記憶されているのは事実であり、そしてその
事態そのものが、90年代からゼロ年代にかけての日本の
内向きの思潮を克明に反映している。
だから、ゼロ年代が終わり、10年代が始まるいま、
そのようなふたりがともに「父として」どこか失語症に
陥ってしまった、そんな対話の記録を残しておくことにも
多少の公的な意味はあるのかもしれない。』

宮台さんが援交少女を擁護したように見えたことは

私の記憶の中にもあり、宮台さんが意味するところを

私は今もって理解することができない。

しかし、この本の宮台さんの「あとがき」が、失礼な言い方

ではあるが、宮台さんが父になって成長したことを

物語っているのではないだろうか。

お二人とも東大卒だけあって、勉強はできるのであろうが、

リベラルなことを言っていれば、それなりにやっていけた

時代はもうとっくの昔に終わっているのではないだろうか。

現実は、もっと厳しく深刻な問題を数多く内包している。

コミュニケーション能力やソーシャルスキルが大切であると

いう話の展開の後の宮台さんの次の発言は象徴的である。

『最近、面白いことに気がつきました。ソーシャルスキルの
ある人間ほど単純労働を嫌がらないことなんです。(略)
時給800円から1000円の範囲内で「なんでもやります」
と言えば、仕事はいくらでもある。(略)
問題なのは、仕事がないことじゃないんです。(略)
中小企業と単純労働にまで枠を広げれば、「30社受けて
全部落ちた」なんてありえないんだということになります。』

こんなことに最近気づいた宮台さんは幸せな人である。

けれど、問題はもっと深刻なのである。

『ところが「単純労働にまで範囲に含めれば仕事はある」
という物言いに、社会学者の堀内進之介君は異論を
述べます。彼が言うには、単なるマインドセットの問題じゃ
なく、文字どおり単純労働ができない大学院生が大勢
いるんだと。決まった時間にシフトに入り、言われたことを
やり、監督者の要望を汲んで改善するということが、
できないと。』

私の働いている会社では、いまだに面接の際に履歴書に

大学院卒と書いてあると、優秀だと勘違いする人事の人が

いるので、「中小企業」に枠を広げることは有効かもしれ

ないが、教育業界にいた人間にすれば、大学院卒の

コミュニケーション能力には注意を要するのが常識である。

また、「おひとりさま志向」という問題もある。

『無頼化する女たち』の水無田気流さんや『おひとりさまの

老後』の上野千鶴子さんに対し、二人の指摘は適切である。

『東 彼らが人生の理想に掲げているのは、あらゆる共同体
からの退出可能性であり、配偶者にも家族にも友人にも
決定的に頼らずにリスクを分散する生き方なのですね。
「無頼化」とはそういう生き方の謂いなのですけど、僕は微妙
に違和感を持つんです。
というのも、たとえだれひとり助けてくれなくとも、それでも
自分ひとりで生きることができる能力を磨く。それを人生の
目的にするのは、大きく間違っていると思うからなんです。
宮台 それはまったくの勘違い。最も重要なリスクヘッジは
ひとり寂しく死ななくてすむための関係性を、二重にも
三重にも構築しておくことです。そんなことは自明すぎます。
東 けれども、若い世代の間ではそういう議論が強い。
宮台 結論ははっきりしていて、「ひとりきりになっても
経済的に困らないように独り立ちしさえすれば・・・・・・」
なんてのは、社会が経済的に順風満帆だった時代の、
単なる甘えです。甘え以前に、単なる馬鹿だと断言しても
いいでしょう。経済的に自立は大切だけど、経済的困窮に
陥ったときに支えになる人間関係があっての話でしか
ありません。』

人間関係が希薄になったということは常に言われているが

だからといって、「ひとりきり」では生きていけないのである。

東さんはこの対談の締めとして、娘ができていちばん

変わったのは、「受動的存在」に対する考え方だと言う。

『娘が育つにつれて少しずつ世界を「受け入れていく」
さまを見ると、なんというか、そういえば生きるとは
そもそも受動的なことだったはずではないか、と感慨を
新たにするのです。この感慨はおそらく、娘が大きくなり、
文字通り「主体」になり人生のリスクヘッジを考え始める
頃には消えてしまうでしょうから、僕自身が父として
忘れないために、ここで最後に話して刻んでおきたい
と思います。』

お二人の今後の活動に期待したいと思う。

【目次】(「BOOK」データベースより)
第1章 親子コミュニケーションのゆくえ─家族を考える(時間感覚の変化/宮崎アニメへの反応 ほか)/第2章 子育てを支える環境─社会を考える(ロスジェネ系議論の問題点/専業主婦願望の背景 ほか)/第3章 均質化する学校空間─教育を考える(グループワークができない子どもたち/なぜ班活動は衰退したのか ほか)/第4章 コネ階級社会の登場─民主主義を考える(運命の出会いと必然性信仰/バックドア問題 ほか)

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2010年12月17日 (金)

親野智可等さんの『「叱らない」しつけ 子どもがグングン成長する親になる本』を読んでみた

親野さんの『「叱らない」しつけ
子どもがグングン成長する親になる本』を読んでみた

 (5つが最高)

子供を褒めて育てるというのは実は簡単なようで

いてとても難しいということを私は日々実感していた。

自分の子供なのだから愛情を持って接すれば

自然といいところが目に入ってくると漠然と考えていたが、

そんな生易しいものではないことを知った。

なぜなら、自分の子には過剰な期待をしてしまうので

2番になったときもどうして、1番になれなかったのかと

責める言葉が先に出てしまいがちだ。

これは自分の学生時代を振り返れば、簡単に分かる

ことだが、当の自分は2番にさえなったこともないのである。

それを自分の子供をまず褒めずに叱ってしまったら

親子といえども良い関係が継続できるわけがない。

この本を読むと、子供に対して親が身をもって示すことの

大切さということを本当に考えさせられる。

まず親が変わらなければ、子供は良くならない。

当たり前のことだが、そのことを気づかせてくれる

とても良い実践的な教育書である。

私たち親にも色々厳しい現実が突きつけられている

今の時代だからこそ、叱ってばかりの躾から卒業する

ために、ぜひ読んでもらいたい1冊である。

【目次】(「BOOK」データベースより)
第1章 「叱る親」をやめよう(しつけより愛情/しつけに厳しすぎるとどうなるか/親子の触れ合いが、子どもを落ち着かせる ほか)/第2章 しつけで大事な五つのこと(厳しさとは、「継続性」「一貫性」「身をもって示す」の三つ/まず冷静になり、原因を調べて、具体的な手立てを実行する/趣旨や理由を正しく教える ほか)/第3章 いい話が、子どもの心を成長させる(人間関係についての話/生活習慣についての話/その他のいろいろな話)

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2010年12月13日 (月)

陰山英男さんの『学力は家庭で伸びる 今すぐ親ができること41』を読んでみた

陰山さんの『学力は家庭で伸びる 今すぐ親ができること41』を読んでみた

 (5つが最高)

この本は2003年の本であるが、その後2007年に

文庫化もされている陰山先生の初期の頃の名著。

生活習慣を含めた基礎基本の繰り返しによる指導は

小学生はもちろん、幼稚園でも早すぎないくらい。

子供たちの「力」が、こうすれば引き出せるという

陰山先生らしいアイデアも満載で、誰でもすぐできる、

手軽さもやる気にさせてくれる。

これだけ手をかければ大抵の子供は必ず伸びる。

子供の学力低下が叫ばれ、ゆとり教育から

ようやく方向転換した文科省だが、その流れを作った

1冊ともいえる本書は、では親は何をしたらいいのか

という質問に丁寧に答えてくれている。

「生活改善なくして学力向上なし」という陰山先生の

持論に子供の学力を伸ばしてきた自信がうかがえる。

陰山先生が学校ではできない「今すぐ親ができること」を

まとめた家庭教育論にもなっており、子を持つ親は

なるべくは役目を通しておくことをお薦めしたい。

リビングに図鑑を置こうや机の上を親が片付けないなど、

基本的な細かいことから、宿題は食卓でさせよう、

朝食は必ず食べさせようなど、一ひねりのあるものや

親にとっても頑張らなければならないようなことまで

すぐに実践できて効果抜群のノウハウが満載です。

【目次】(「BOOK」データベースより)
第1章 ジワジワ効いて結局「学力」が上がる16か条(翌日の時間割は自分でそろえさせる/宿題は食卓でさせよう/宿題を親がやらない ほか)/第2章 毎日の生活で「会話力」がつく13か条(食事のときはテレビを消す/ゴミ出しは子供にやらせる/今日あったことをお風呂で聞いてあげる ほか)/第3章 「自分でできる力」を育てる12か条(机の上を親が片づけない/サッカーの応援に毎回行かない/説教は「誉める」「叱る」「誉める」のサンドイッチで ほか)

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2010年12月 9日 (木)

親野智可等さんの『「否定しない」子育て』を読んでみた

親野さんの『「否定しない」子育て 親の「話す技術」「聞く技術」21』を読んでみた

 (5つが最高)

この本は、短期間に2度読んだほど今の私の悩みに

ジャストミートしていたので、子育てに悩んでいる人には

ぜひとも読んでもらいたい1冊です。

特に褒めて育てることの難しさを実感しているような

親にはお奨めです。

作者が現役教師ということで、多くの子供と接してきて

得られた情報を惜しみなく披露してくれている感じが

とても好感が持てる本に仕上がっています。

「人に迷惑をかけてはいけない」など、

普段何気なく言ってしまう一言が、親のマイナスからの

発想なのだと反省させられたりもします。

子供と一緒に悩みながら成長していくことが

本来の子育てなのだと考えられれば、

意外と悩みの解決の糸口が見えたりもします。

Q&A方式でまとめられているので、いろいろな場面で

どのように子供と接すれば良いのか、不安になった

ようなときには、すぐに取り入れることが出来ます。

本当に参考になる意見が多く、私がもう一人

良く参考にさせていただいている陰山先生の

厳しさに対し、褒めること重視という姿勢の方です。

【目次】(「BOOK」データベースより)
「しつけ」のつもりが「過干渉」に!?/子どもに命令口調で接していいの?/人前ではっきりものを言える子にするには?/優しさや思いやり、気配りの心を育てたい/言葉がきつく他人に厳しい性格を改善させたい/家でダラダラするのをやめさせるには?/マイペースすぎてイライラする!/ものごとに熱中できる子にしたい/「だらしがない子」を立ち直らせる方法/「ごまかし」「うそ」「ずる」を注意するには?/ひらがなばかりで漢字が使えない!/実力テストで点が取れないのはなぜ?/嫌がる習い事、続けさせるべき?/楽しみながら運動を好きになるには?/両親の帰宅を待つ一人の時間をどうしたら?/甘えん坊の子どもを早く自立させたい/いつまでも親子いっしょに寝てたらおかしい?/お金や物を盗ってきてしまう、どうすれば?/皆が大切に育てている金魚を殺してしまった!/いじめ?どう声をかけたら……/わが子を「かわいい」と思えない!

「否定しない...

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