2012年2月24日 (金)

望月護さんの『ドラッカーの実践経営哲学』を読んでみた

望月さんの『ドラッカーの実践経営哲学
〔新版〕ビジネスの基本がすべてわかる!』を読んでみた

 (5つが最高)

この本は、ドラッカーの著作の重要性は何となく感じて

いるが難解で意味が分からないという人のための

解説本である。

翻訳書の要点を分かりやすい事例をもとに短時間で

読みたいという人のための要約本でもある。

ドラッカーの主要なメッセージについては当然のことだが

他の解説本と変わるところがない。

この本の独自の魅力としては、著者の望月さんが

ビジネスマンとして感じたことをドラッカーの言葉に

乗せて語っている部分だろう。

そして、望月さんの想いとして、ダメになっていく

日本企業と若い人への期待ということがあるのだろう。

特に日本企業の批判については、興味深い。

ドラッカーは組織の病状を次のように挙げている。

1.管理職の階層が多い。
2.調整のための会議や打合せが多い
3.機能別部門が細分化されている
4.人間が多すぎて人間関係に気をつかい合っている
5.役員の年齢層が偏っている

ドラッカーも日本の企業の経営がまったくダメである

ことを厳しく指摘していたこともある。

『日本でトップクラスの企業の経営陣のやっていることは
経営と呼べるものではない。会長と社長は政府と労働
組合の対応に頭を悩まし、副社長は人事に忙しい。
きちんとした方向付けというものがなされていないのだ』

これを受けて、望月さんは経済合理性とは無縁だった

「日本型経営」の3つの特徴を挙げている。

1.政官業の持たれあいで、競争原理が働かない経営
2.地価と株価の値上がりを前提にした含み益による経営
3.株式の持ち合いによる、チェックが働かない経営

2002年に発行された本の新書版での復刊ということも

あって、少し古い感じもあるが、ドラッカーと望月さんの

考え方が上手くミックスされていて、面白い本になって

いると言える。

最初から翻訳書に直接当たることに抵抗がある人は

ぜひ1度読んでみるといいと思う。

【目次】(「BOOK」データベースより)
第1章 間違いだらけのマネジメント/第2章 お客軽視が不況を招いた/第3章 ビジネスの基本/第4章 販売前のマーケティング/第5章 お客は満足していない/第6章 お客本位へ/第7章 お客軽視の犯人/第8章 棄てる決断・やめる勇気/第9章 選手交代の時代の主役はあなただ

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2012年2月12日 (日)

牛越博文さんの『これだけは知っておきたいドラッカー』を読んでみた

牛越さんの『これだけは知っておきたいドラッカー』を読んでみた

 (5つが最高)

この本は、正直言っていまだにドラッカーの著作が

きちんと読めない私にも、その全体像と見取り図を

教えてくれる、とても参考になる本である。

何度もやって来るドラッカーブームにもかかわらず

まったくその著作の面白さが分からず、何が言いたい

のか疑問に思っているような人には、必ず読んで

欲しい1冊である。

ドラッカーを読む上でのポイントになる箇所を

私なりに抜き出してみると次のとおり。

①「企業の目的は、顧客の創造にある」

②「企業は、自らの社会に与える影響について
 できるだけ広く捉え、その影響について責任を
 持つべきだ」

③組織を動かす際の自由と責任、その方法論を
 徹底して考え抜いたのが、ドラッカーです。

④ドラッカーの主張を極限まで要約し、二段階に
 分けて言うと、以下のようになります。
 1.本当の経営者はイノベーションを起こす。
 2.イノベーションを起こすには、組織を
   マネジメントする必要がある。

⑤ドラッカーがベースにしたシュンペーターの
 イノベーションは次の5つ
 1.新しい製品を生産すること
 2.新しい生産方法を導入すること
 3.新しい販売先を開拓すること
 4.新しい仕入先を獲得すること
 5.新しい組織を実現すること

⑥ドラッカーのイノベーションの目的はあくまでも
 「顧客の満足度を上げる」ことにある

⑦コスト削減のためにリストラをすることは間違っている
 赤字であっても社員の給与を下げなければ乗り切れ
 ないような経営者は、まず自分が去るべきである。

⑧イノベーションのチャンスは次の7つ
 1.予想しなかったことが起こったとき
 2.なんらかの差がわかったとき
 3.プロセスのニーズが現れたとき
 4.産業と市場の構造が変化したとき
 5.人口の構成が変化したとき
 6.ものの考え方・見方や気持ちが変化したとき
 7.新しい知識が生まれたとき

⑨「本当の経営者は、よく考えずに行動する」
 自分の見たままに、感じたままに行動する。

⑩未来は誰にもわからないが、自己実現に
 成功した人はある〈方法〉をとっている、
 その方法こそマネジメントです。
 マネジメントは、絶対真理ではなく一つの
 方法論に過ぎません。

⑪経営者が何の価値観も持たずにあるがままを
 見るだけでは、やがて道に迷ってしまいます。
 かといって、未来を予測しようとすると、それは
 誰にもわからないので、やっぱり道に迷って
 しまいます。だから、組織の目指す目的地が
 必要です。その目的地が「顧客の創造」であり、
 これは「便宜上」打ち立てられたものなのである。
 なぜなら「絶対真理」はないからです。

⑫知識社会とはどのようなものか。
 1.自由放任の時代から福祉国家の時代へと変わり、
  価値観は個人的なものから社会的なものに変わった。
 2.資本主義社会から知識社会へと変わり、資源が
  資本・労働・土地から知識に変わった。

⑬経営者への5つの質問
 組織のマネジメントについて経営者が自らを
 評価するための問い
 1.我々のミッション(使命)は何か
 2.我々の顧客は誰か
 3.顧客は何に価値を感じているのか
 4.我々にとっての成果は何か
 5.我々のプランは何か

⑭経営者は、専門知識を使って成果を上げる人を
 評価します。
 知識労働者が働く理由は自己実現なので、
 仕事で成果を上げたかどうかは、自己実現
 したかどうか、とイコールになります。
 自己実現はミッションへの貢献によってなされ
 るので、どのくらいミッションに貢献したかが、
 成果の評価になります。
 ミッションは売上や利益ではありません。

⑮経営者が成果を評価するのは、賃金を決める
 ためではなく、社員と組織がどれだけ自分の
 強みを発揮しているかを知るためである。

⑯経営者が初めから持っていなければならない
 資質が一つだけある。それがintegrityです。
 integrityは「真摯さ」「誠実さ」「邪心がない」
 「汚れがない」という意味です。

この本を読んでようやく、ドラッカーが本当は

何を言いたかったのかが分かった気がした。

ドラッカーの読みにくさは、「これだけは知って

おきたい」ことをまとめて提示してくれない点にある。

それが、何度読んでも新しい発見がある

ドラッカー本の人気の秘密でもあるのだろうが、

私のようなものには、こういう本こそ有難い。

ドラッカーブームに何度も乗り損ねた人にこそ

ぜひおススメの1冊である。

【目次】(「BOOK」データベースより)
はじめに いま、なぜドラッカーなのか/第1章 イノベーションとは何か(イノベーションとは-/まやかしのイノベーション ほか)/第2章 どのようにイノベーションを起こすのか(経営者は全体を「直観」する/方法にはうまいコツがある(「組織のマネジメント」) ほか)/第3章 マネジメント(我々のミッション(使命)は何か/我々の顧客は誰か ほか)/第4章 知識労働者

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2012年2月 3日 (金)

上田惇生さんの『ドラッカー入門』を読んでみた

上田さんの『ドラッカー入門
万人のための帝王学を求めて』を読んでみた

 (5つが最高)

この本は、ドラッカーのその主要作品のすべてを

長年にわたり翻訳してきた著者による解説である。

ドラッカーの分かりにくさを丁寧に解体して見せる

さまはさすがだが、予備知識なしに飛び込むと

ドラッカーの著書の難しさそのままに、面白さが

分からずに終わってしまうので、牛越博文さんの

『これだけは知っておきたいドラッカー』とあわせて

読むと理解が深まる1冊であると思う。

ドラッカーを読む上でのポイントになる箇所を

私なりに抜き出してみると次のとおり。

①社会的存在としての人は、社会として機能する
 社会を必要とする。それでは、社会が機能する
 ための条件は何か。第一に、そこにいる人たち
 全員に位置づけがあることである。第二に、
 全員に役割があることである。第三に、そこに
 ある権力に正統性があることである。

②未来について言えることは二つしかない。
 第一に、未来はわからない。第二に、未来は
 現在とは違う。
 従って未来を知る方法も、二つしかない。
 一つは、すでに起こったことの帰結を見ること
 である。彼独自の予測にしても、すでに起こった
 ことの帰結、つまりすでに起こった未来を知らせる
 に過ぎない。
 未来を知るもう一つの方法は、自ら未来をつくる
 ことである。

③ポストモダンのための方法論をまとめるならば、
 次の7つの作法になる。
 1.見ること
 2.わかったもの使うこと
 3.基本あるいは原則となるものを知って使うこと
 4.かけたものを探すことです
 5.自らが陳腐化の主導権を握ることである
 6.仕掛けを作っておくこと
 7.限界をわきまえつつ、モダンの方法を使うこと

④マネジメントについての3つの役割
 1.それぞれの組織に特有の社会的機能を
 まっとうすること
 2.組織に関わりをもつ人たちが生き生きと生産的に
 働き、仕事を通じて自己実現できるようにすること
 3.社会的責任を果たすこと

⑤マネジメントが目標を設定するべきは、
 1.マーケティング
 2.イノベーション
 3.生産性
 4.人材
 5.物的資源
 6.資金
 7.社会的責任
 そして、「条件」としての利益である。

⑥チェンジ・リーダーたるための4つの条件。
 1.既存のものの廃棄
 2.日々のカイゼン
 3.成功の新展開
 4.価値を創造するためのイノベーション

⑦イノベーションの7つの種
 1.予期しなかったことが起こったとき
 2.ギャップがわかったとき
 3.ニーズが現れたとき
 4.産業構造が変化したとき
 5.人口構造が変化したとき
 6.意識が変化したとき
 7.発明発見が生まれたとき

⑧人事の手順としての5つのステップ。
 1.仕事の中身をつめること
 2.候補者を複数用意すること
 3.候補者の強みを見ること
 4.上司や同僚など複数の意見を聞くこと
 5.発令の数ヵ月後、仕事の中身を理解
 しているかを確認すること

⑨仕事をする能力として習慣化すべきこと。
 1.時間の使い方
 2.貢献に焦点を合わせる
 3.強みの上に築く
 4.集中する
 5.成果をあげるように意思決定を行う

この本も、ドラッカーの著作同様に、何度も

読み込んで楽しむためのものである。

そして、私には、こういう本こそ本当に有難い。

遅れてきたドラッカリアンにはおススメの

1冊である。

【目次】(「BOOK」データベースより)
はじめにードラッカーとは何者か/第1章 人が幸せであるためには何が必要かードラッカーの問題意識/第2章 転換期のクライマックスはこれからだードラッカーの時代認識/第3章 論理ですべてがわかるとしてはならないー社会生態学者ドラッカー/第4章 万人のための帝王学を求めてーマネジメントの父ドラッカー/第5章 何をもって憶えられたいかーセルフマネジメントの方法論/第6章 世界のモデルとなりうるかードラッカーが恋した日本/おわりにードラッカーとの出会い

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2011年7月 1日 (金)

ピーター・F・ドラッカーさんの『ネクスト・ソサエティ』を読んでみた

ドラッカーさんの『ネクスト・ソサエティ』を読んでみた

 (5つが最高)

この本は、世界の流れの中で読むと「歴史が見たこと

のない未来」を描き出しているのかもしれないが、

日本に関する記述に限って言えば、これまでの歴史を

再度繰り返すだけの未来を描いているように思える。

まず、「ネクスト・ソサエティ」では、知識が資源となり、

知識労働者が中核の働き手となる。

そして、『知識労働者にとっても、報酬は大事である。

報酬の不満は意欲をそぐ。しかし意欲の源泉は、

金以外のところにある。知識労働者のマネジメントは、

彼らが組織を必要とする以上に、組織が彼らを必要

とするとの前提のもとに行わなければならない』と

いうことらしい。

また、『今日マネジメントは、IT革命によってかえって

必要な情報をもてなくなった。手にするデータは増え

たが、ほとんどが組織の内部についてのものである』

ということは考えておかなければならない。

しかし、『IT革命におけるeコマースの位置は、産業

革命における鉄道と同じである』と言い、『鉄道が

生んだ心理的な地理によって人は距離を征服し、

eコマースが生んだ心理的な地理によって人は

距離をなくす。もはや世界には一つの経済、一つの

市場しかない』と言えるようになった。

さらに、「ネクスト・ソサエティ」の特質は、①知識は

資金よりも容易に移動するがゆえに、いかなる境界も

ない社会、②万人に教育の機会が与えられるがゆえに、

上方への移動が自由な社会、③万人が生産手段として

知識を手に入れ、しかも万人が勝てるわけではない

がゆえに、成功と失敗の並存する社会である。

では、そのような社会にあって、トップマネジメントの

あり方についてのポイントとは、次の5つがある。

①コーポレート・ガバナンスが変容する
②外の世界で起こることを理解する必要がある
③いつ命令し、いつパートナーとなるかを
 知らなければならない
④知識労働の生産性の向上に真剣に取り組ま
 なければならない
⑤みながともに生産的に働けるようにすることを
 考えなければならない

ここまでは、とても分かりやすくグローバル化と

変化の激しい時代が描かれているが、話が日本に

及ぶと突然、劇的な改革を望む機運に関しては

注意を要すると、おとなしくなってしまう。

これは日本が変化に追いつけないという意味なのか

日本は変われないだろうという皮肉なのか分からない。

もっとも印象的なのは、日本についての5つの謬説を

指摘した後で、正しい仮説として挙げられている5つに

ついてである。

①官僚の優位性はほとんどあらゆる先進国で見られる
②日本の官僚は長年の不祥事と無能の暴露にも
 耐久力を示して、権力を維持してきた
③社会の維持にはエリートの指導力が必要であり、
 日本には、官僚の後を継ぐものは現れそうにない
④日本では経験的には、先送り戦略には一概に
 不合理とはいえないものがある
⑤日本の政策形成者にとっては、大事なのは経済よりも
 社会であって、先送りこそ合理的な戦略である

ドラッカーは丁寧にも、この日本に関する章を次のような

言葉で締めくくっている。

『もちろん、官僚の擁護などは異説である。しかし異説と
いうものは、通説よりも真実に近いことが少なくないので
ある』

今現在、政治主導を掲げる政党によって、日本は

メチャクチャなことになっているが、このことを親日家でも

あったドラッカーは、あの世でどのように感じているの

だろうか。

もう、新しいドラッカーの意見を読めないのが、残念に

思える1冊である。

【目次】(「BOOK」データベースより)
第1部 迫り来るネクスト・ソサエティ(ネクスト・ソサエティの姿/社会を変える少子高齢化 ほか)/第2部 IT社会のゆくえ(IT革命の先に何があるか?/爆発するインターネットの世界 ほか)/第3部 ビジネス・チャンス(起業家とイノベーション/人こそビジネスの源泉 ほか)/第4部 社会か、経済か(社会の一体性をいかにして回復するか?/対峙するグローバル経済と国家 ほか)

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2011年6月 5日 (日)

ピーター・F・ドラッカーさんの『マネジメント 基本と原則』を読んでみた

ドラッカーさんの『マネジメント 基本と原則』を読んでみた

 (5つが最高)

若い頃に何度も挑戦したが、少しも面白いと思わなかった

ドラッカーをようやく攻略できた気がしている。

いまさらながらという感じだが、話題の『もしドラ』を読んで

以後、必ず読むと決めたこの本は、やっぱり良書だった。

まず、マネジメントには4つの役割があり、次のとおり。

①自らの組織に特有の使命を果たすこと
②仕事を通じて働く人たちを生かすこと
③自らが社会に与える影響を処理するとともに、
 社会の問題に貢献すること
④すでに存在し、知られているものを陳腐化し、
 明日を創造すること

そして、企業の目的は、顧客の創造であり、企業の基本的

な機能は、マーケティングとイノベーションである。

けっして、企業とは営利組織ではない。

利益は、個々の企業にとっても、社会にとっても必要で

あるが、それは目的ではなく条件である。

では、利益の持つ機能とは何かというと、次のとおり。

①利益は成果の判定基準である
②利益は不確定性というリスクに対する保険である
③利益はよりよい労働環境を生むための原資である
④利益は、医療、国防、教育、オペラなど社会的な
 サービスと満足をもたらす原資である

また、マーケティングの目標は、次のとおり。

①既存の製品についての目標
②既存の製品の廃棄についての目標
③既存の市場における新製品についての目標
④新市場についての目標
⑤流通チャンネルについての目標
⑥アフターサービスについての目標
⑦信用供与についての目標である。

さらに、イノベーションの目標は、次のとおり。

①製品とサービスにおけるイノベーション
②市場におけるイノベーションと消費者の行動や
 価値観におけるイノベーション
③製品を市場にもっていくまでの間における
 イノベーション

では、肝心のマネジャーの仕事であるが、

まず2つの役割は、次のとおり。

①部分の和よりも大きな全体、すなわち投入した
 資源の総和よりも大きなものを生み出す生産体を
 創造すること
②そのあらゆる決定と行動において、ただちに必要
 とされているものと遠い将来に必要とされるものを
 調和させていくこと

そして、あらゆるマネジャーに共通の仕事は、

次の5つである。

①目標を設定する
②組織する
③動機づけとコミュニケーションを図る
④評価測定する
⑤人材を開発する

では、この生まれつきではない育つべきマネジャーを

開発するのは、どのようにするかであるが、

そのためにはまず、マネジメント開発ではないものを

明らかにすることから始めるのが簡単である。

①セミナーに参加することではない
②人事計画やエリート探しではない
③人の性格を変え、人を改造するためのものでない

こう書いてみて、②の内容を読むと私のいる会社で

行われていることの本質が見えてくる。

そこにはこのように書いてある。

『組織がなしうる最悪のことは、エリートを育成すべく
他の者を放っておくことである』

やっている人間は、良かれと思ってやっているの

だろうが、若い人限定のエリート探しは、今実際に

会社を支えているオジサンたちを放っておくどころか

社外に捨てることになっている。

そしてその結果、人件費は削減されたが、売上げは

さらに大幅に削減され、過去最大の赤字を垂れ流す

結果となってしまった。

ユニクロの柳井さんほどでなくてもいいので、私の会社の

経営陣にもドラッカーを読んでもらいたいものだ。

この本はエッセンシャル版のため、たくさんの情報を

詰め込みすぎているような気もするが、

逆に言えば、とても多くの情報が詰まっていて

お得な1冊ということができる。

【目次】
日本の読者へ
まえがき―――なぜ組織が必要なのか
序―――新たな挑戦
Part1 マネジメントの使命
第1章 企業の成果
第2章 公的機関の成果
第3章 仕事と人間
第4章 社会的責任
Part2 マネジメントの方法
第5章 マネジャー
第6章 マネジメントの技能
第7章 マネジメントの組織
Part3 マネジメントの戦略
第8章 トップマネジメント
第9章 マネジメントの戦略
結論 
付章 マネジメントのパラダイムが変わった

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2011年4月 4日 (月)

中野明さんの『17歳からのドラッカー』を読んでみた

中野さんの『17歳からのドラッカー』を読んでみた

 (5つが最高)

この本は、ドラッカーを題材にした17歳の若者への

人生の指南書という体裁をとっているが、40代の

私が読んでもいろいろと考えさせられることが多く

とても参考になる本である。

まず、結論としては、ドラッカーからのメッセージは

次の2点に集約できるという。

「できないことではなく、できることに注目せよ」
「目標管理(目標によるマネジメント)を実践せよ」

このことを前提に「何のために勉強するのか」という

問には「知識が資本や労働をさしおいて、最大の

生産要素となった知識社会では、勉強すること

こそが社会で生きていくための武器である」と

分かりやすい回答がなされている。

書かれていること自体に奇抜さはもちろんないが、

分かっているようで実行できていないことは

実は意外に多かったりする。

本当に分かっているとは、実行できているということ

だとすると、まだまだ分かっていないことは多い。

もちろん、ドラッカーの言ったことに対して

全てを肯定的に受け止めるだけということでは

この歳になってしまえば、あまりに情けない。

たとえば、異を唱えるとすれば次のようなところか。

ドラッカーは、知識社会は高度な専門知識をもつ人が

増え、組織社会となるとしているが、この組織を

従来の会社という意味でとらえる必要はないだろう。

情報通信技術の発展によって、個人がそれぞれの

専門知識を持ち寄って、従来の組織に依存しない

仕事の形態が進んできていることは事実である。

ただ、これにしても私自身がサラリーマンでしかない

のだから、自分では実行できていないのだけれど。

もし私がこの本に何かを付け足すとすれば、

若い人は知識を身に付けて独立して生きていくことも

組織に属して仕事をすることも目指せるということだ。

そして、もう若くはない人がこの本を手にするなら

気をつけてもらいたいことが1つだけある。

それは、17歳の若者を中心に語りかけるスタイルが

とられているので、もう若くない人には厳しいことが

書かれているように受け取れる点があることだ。

たとえば、18歳のドラッカーは何の経験も実績も

なかったと過去を振り返った後で次のような言葉を

綴っている。

「私が何を得意とし、何をすべきであるかを知ったのは、
その15年も後の30代初めになってからのことです。」

この本の冒頭のこの箇所は、17歳の若者に対し

焦る必要などないと励ましているものだが、

では40代になってもまだ何をすべきであるか迷っている

私はどうしたらいいのだろうか。

答えを見つけるためにも、やはりドラッカーの言う

「継続学習」が必要なのだろう。

結局、分かったようなフリをして会社勤めをし、

定年後に本当に自分がやりたかったことを

探し始めている男性は意外に多いのかもしれない。

それが私への慰めになったりはしないのだけれど。

充実した40代を送るために、ドラッカーを読んでみるか

と思わせてくれる、そんな一冊であった。

【目次】
Chapter1 勉強は君の未来にどうつながるか
Chapter2 仕事の目的は「お金」か、「やりがい」か
Chapter3 「目標をもって生きること」は、なぜ大切か
Chapter4 成果を上げるにはどうしたらよいか
Chapter5 日本と世界の未来は、これからどう変わるのか

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2011年1月25日 (火)

中野明さんの『ドラッカー流 最強の勉強法』を読んでみた

中野さんの『ドラッカー流 最強の勉強法』を読んでみた

 (5つが最高)

この本は、「ドラッカーが本領を発揮したのは、実は

マネジメント系ではなく非マネジメント系の著作に

おいてである」という考えのもとに、ドラッカーが実際に

行っていた勉強法を主に非マネジメント系の著作から

紹介してくれていて、とても参考になる。

中野さんはドラッカーやポーターの解説書を書いている

だけあって、幅広く著作に当たっているだけでなく

解説の仕方も丁寧で分かりやすい。

「マネジメントの父」と称されるドラッカーだが、私自身は

その著作を何度も読もうとして挫折している。

分かりにくい哲学書でも、一応最後まで読む私が

途中で読むのをやめるというのは、あまり経験がない。

けれど、その挫折の理由もこの本を読むと何となく思い

当たることが書かれているので、次は非マネジメント系の

著作に挑戦してみようと思う。

さて、主題の勉強法についてだが、いつものとおり、

私にとって必要なところのみまとめると次のようになる。

①現在の知識社会では、知識こそが最も重要な生産手段
②知識は陳腐化するので、継続学習が不可欠
③継続学習には、3ヵ月テーマと3ヵ年テーマを設ける
④自己啓発の責任は本人にある
⑤勉強テーマ→勉強計画→インプット→アウトプット
⑥勉強テーマは、「価値観」「強み」「機会」を考慮
⑦「価値観」を最優先
⑧「行動経済学」などの大きな話題ほど3ヵ月テーマ
⑨目標には、期限と具体的成果を明確にする
⑩成果を挙げるためには、時にインセンティブを必要
⑪自分自身がスケジュールを決める主体
⑫優先順位と劣後順位を明確に意識
⑬選択と集中とは、計画と実行に他ならない
⑭「フィードバック分析」を実行し、質を継続的に改善
⑮勉強内容の文章化は、全体像を考える
⑯平易な文章で書く
⑰発見の手帳を身近に置く
⑱一生涯の勉強テーマを持つ

「フィードバック分析」のチェックリストは次のとおり。

①半年間でやった優れた仕事は何か
②一生懸命やった仕事は何か
③お粗末な仕事や失敗した仕事は何か
④集中すべきことは何か
⑤改善すべきことは何か
⑥勉強すべきことは何か

未来を予見するような優れた著作を遺したドラッカーが

どのようにして知識を身につけていったのかが、

非常にコンパクトにまとめられていて分かりやすい。

これから勉強のテーマを見つけて、何かを学んでみよう

とする人には、最適の1冊だと思います。

【次に読むお奨めの3冊】
『経営者の条件』 ダイヤモンド社
『ドラッカー20世紀を生きて』 日本経済新聞社
『プロフェッショナルの条件』 ダイヤモンド社
【さらに勉強するための7冊】
『経営者に贈る5つの質問』 ダイヤモンド社
『イノベーションと起業家精神』 ダイヤモンド社
『現代の経営』 ダイヤモンド社
『明日を支配するもの』 ダイヤモンド社
『ポスト資本主義社会』 ダイヤモンド社
『傍観者の時代』 ダイヤモンド社
『断絶の時代』 ダイヤモンド社

【目次】(「BOOK」データベースより)
第1章 長距離型勉強のすすめ─「3カ月と3カ年勉強法」とは/第2章 勉強テーマはこうして決める─「価値観」「強み」「機会」の3要素/第3章 目標をマネジメントせよ─成果を上げる目標設定と自己管理/第4章 時間をマネジメントせよ─勉強時間を確保するための3つのステップ/第5章 「何をしないか」を決めよ─「選択と集中」と「フィードバック」で実行力を上げる/第6章 徹底的にインプットせよ─入手情報の「量」と「質」を上げる技術/第7章 勉強の成果はアウトプットで決まる─書きながら考える技術

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2010年11月28日 (日)

岩崎夏海さんの『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』を読んでみた

岩崎さんの『もし高校野球の女子マネージャーが
ドラッカーの『マネジメント』を読んだら』を読んでみた

 (5つが最高)

いまさらながら、話題のこの本を読んでみた。

売れてる本でもまったく良いと思わないものがある一方、

いい本はやっぱり売れるのだという好例だった。

確かに企画の勝利という側面が強いことは

作者も否定しないと思うが、小説としても良くできており、

描写が下手だというような感想は持たなかった。

マネジメントに必要な資質は才能ではなく

真摯さであるということを女子高生に体現させるあたり

AKB48をモデルにしたとはいえ何ともポジティブ。

これほど真っ直ぐに生きている高校生がいたら

どんなにか素敵だろうと考えるのはオジサンの証拠か。

ドラッカーに頼りきった構成にもかかわらず

印税の10%しかドラッカーの関連団体に寄付しない

なんて、100万部以上売れたのにどうかと思うが

ドラッカーを読んでも挫折していた私にとっては

新たなるきっかけとしてとても貴重であった。

そして、私が反省させられたことが一つある。

それは人を見るときに欠点ばかりに目が行き

その人の良い点を見なくなってしまうところである。

欠点を非難することは簡単だが、そこからは

何も建設的なものが生まれてこないような気がする。

これからは他人の長所にも目を向けたいと、

別にマネジメントする立場ではないが思った。

また、マーケティングとイノベーションということで言えば

この本はよく言われているようなマーケティングの

成功例というよりは、イノベーションの成功例では

ないかと感じるのは私だけだろうか。

このあと、変わった表紙のビジネス書が次々と

表れるようになった気がするが、それは本当に

マーケティングの結果なのだろうか。

私にとっては、ただ手が出しにくくなっただけの

ような気がするのだが、一般の読者はどうなのだろうか。

【内容情報】(「BOOK」データベースより)
公立高校野球部のマネージャーみなみは、ふとしたことで
ドラッカーの経営書『マネジメント』に出会います。
はじめは難しさにとまどうのですが、野球部を強くするのに
ドラッカーが役立つことに気付きます。みなみと親友の夕紀、
そして野球部の仲間たちが、ドラッカーの教えをもとに
力を合わせて甲子園を目指す青春物語。

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